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リアクション
【第四章】
「食らってみるか……?
気合の一撃!!」
ガシャンと音を立ててロボットがステージから客席へ落ちる。
入口で起こっている状況を知らずに、天守前の広場では戦いが続いていた。
「ああクソ! また折れた!」
左之助は折れた棒を投げ捨てる。
カラカラと音を立てた棒の近くには喧嘩に負けた悪党ロボット達が持っていた武器が落ちている。
「兄さん!ヒロイックアサルトで技の強化を!
そうすれば少しマシかも」
真が言いながら目の前の悪党ロボットの関節部分に蹴りを入れると、吉刃羅の後ろに
悪代官ロボットが迫っているのが見えた。
「(目の前の敵に背中を見せるのは……)だけど!!」
折った関節部分の隙間を抜けて悪代官ロボットの着物の襟後ろを掴むと、
そのまま引っ張り地面に引っぱった。
よろける悪代官ロボットに吉刃羅は、刃を向ける。
「成敗!!」
こうして悪は滅ぼされたのだった。
町人ロボット達は歓声を上げ、指揮を失った悪党ロボット達は神妙にお縄に付く。
「とは言っても警備ロボットが残ってるがね」
アルツールは火縄銃の銃身で空中をうろうろ飛んで監視用警備ロボットをハエ叩きのように撃ち落とす。
周囲を見ていた吉刃羅は、真に向かって喋り出した。
「お前達は、あのケイビインサンと戦って居るガどのような立場ナノダ?」
「ええっと……なんて言ったらいいかな。
あの警備ロボット達を指揮している親玉が乱心していて、
罪のない人を捕えたり、俺たちの仲間をああして攻撃したりしているんだ。
だからそれを止めようとここまできたんだ」
「ふむ、それは見逃せぬ悪行ダナ。 シカシ」
吉刃羅は指をさす。
「ふはははは!!」
テンションをマックス値まで上げて巨大な光条兵器の剣で警備ロボットをちぎっては投げ、千切っては投げ
というか、ぶっ叩いて木端微塵にしているヴァイスが居た。
「あの笑い方は悪者のではないノカ?」
「そ、それはその……彼も本当はいい人なんだよ」
「ふむ。シカシ」
吉刃羅は指をさす。
「透乃ちゃんこんな所で……人が見てます!」
「ロボットだから大丈夫」
「大丈夫じゃないです。こ、こんな事!」
「何時もより興奮しちゃって陽子ってばとんだ変態サンだね」
「ちが――」
「じゃぁここは何でこんなになってるの?」
「あぁん」
「ああもう我慢できない!!」
「だっだめーーーー!!」
「あれは公共良俗に反する行為では無いノカ?」
「え、えと彼女達は夫婦な訳だし……仲良き事は美しきかなっていう」
「ふむ。シカシ」
「まだあるの!?」
吉刃羅は指をさす。
ドクターハデスがわざわざ高いところに登りながらアルテミスに指示? を送っていた。
「フハハハそうだアルテミスよ! やってしまえ!!あのロボットで最後だぞ!」
「あの者は悪代官の仲間ではなかったノカ?」
「そ…それは」
「あーもういいじゃない!」
「セレン姫」
吉刃羅の肩を後ろから叩いたのはセレンだ。
しかし彼女の服は吉刃羅が見ていた先ほどの艶やかな姫の姿から、
彼女のトレードマークとも言えるメタリックブルーのトライアングルビキニに着物をはおっただけの煽情的な姿に変わっている。
着物の女のキャラクターか、プログラムされていないビキニの女か。
止まってしまった吉刃羅の機械の体から情報を処理する為のカチカチという音が零れている。
「あたしが姫でも、姫で無くても。
町娘でも火消しでも悪党でも
ロボットでも人間でもなんでもいいじゃない!
パラさんが……吉刃羅自信が正しいって信じたものを信じて!!」
「余が信じるノハ――」
言いかけた時、唐突にロボット達が動きを止め、その場で動かなくなった。
動かなくなった吉刃羅に、真は心配そうにカメラ部の目を見つめる。
「吉刃羅? どうしたんだ?」
「……閉館時間ダ。余は城に戻ルゾ」
「え!?」
「閉館時間ダ。余は城に戻ルゾ」
「吉刃羅? 何を言ってるんだ!?」
「真、見て! ロボット達が!」
セレンの声に振り向いて見ると、ロボット達がゾロゾロと広場の門から外へ出て行く。
「どういう事なの?」
「時間が弄られてるんだ!」
ヴァイスの声だ。
セリカが捕まえたロボットの一体の簡易コンピュータ部分を開き、画面に映し出される情報を確認している。
「ホストコンピュータの奴。
こいつら町人ロボは警備ロボットと違ってホスト側から直接書き換えられるデータが無いからこんな手を……
時間を書き換えてやがったんだ」
「閉館時間……皆は収納倉庫に向かっているって事か?」
「多分そうだね……
畜生さっきは見逃した!」
悔しそうに地面を叩くヴァイス。
カガチはある事に気がついた。
「待てよ。時間を動かさずに何度も進んだら戻しを繰り返せば……
一つひとつのイベントに終わりが来ないようにもできるな!」
「ふーん。だから因縁付けて追っかけてくるのも追いつめちゃうまでやるし、
捕まってたコ達も永遠に奉公させられたりしてた訳ね」
透乃はそれまで見て来たロボット達の不可解な行動の理由を理解した。
動けるロボット達の全てが広場から居なくなった。
吉刃羅もそれを追うように門へ向かっている。
「吉刃羅!」「パラさん待って!!」
真とセレンが止めようとするが、吉刃羅は歩みを止めない。
「すまない客人ヨ。余は城へ戻ルゾ。閉館時間ダ。城へ戻ルゾ。」
「吉刃羅!!!」
その時。
ビーッビーッビーッ
警告音のようなものが煙をあげ半壊していた警備ロボットの中から漏れてくる。
「――なんなのこの音」
その音に合わせてマイクから流れてくるような声がする。
『涙流して喜べ…ホスト野郎!呑・ペリニヨーン!!』
「この声……モモだ!」
『やったにゃー! 断罪! 断罪! 大断罪!! モモのシャンパン放電実験成功にゃー!』
『この勢いであっちのサーバーにも……あっ! 何するのよ! それは頭が病気のおとっつぁんにあげる……』
『怪しいもの? 違うにゃー!ミーは
……ハムスター!!』
…………。
『駄目だわ! 正体がバレてる! あんたがどう見てもハムスターじゃないからバレたのよ!』
『モモが全裸だからバレたんだにゃー!!』
『逃げるわよ!』
『にゃー!!』
音はここで途切れた。
警備ロボットが小さな爆発音と共に本当に壊れてしまったのだ。
そこで警告音に足の動きが止まっていた吉刃羅が再び動き出した。
「……余は何ヲ……」
「パラさん!」
「……余の民は……何処へ行ったノダ
これは一体どうしたノダ」
「これが親玉ロボットの手なんだ。君達を操って……」
真はそこまで言って、急に話をとめた。
「いや、この言い方はズルイな。
吉刃羅。俺たちは、ここを取り壊しにする業者の人に頼まれて、暴走するホストコンピュータを止めにきたんだ」
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