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【カナン復興】新年マンボ!!

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【カナン復興】新年マンボ!!

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(1)ドン・マルドゥークの居城(城内)→キシュの神殿(北カナン)−2

 画面越しにザルバと向き合ったのは武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)だ。
 すぐにイナンナに取り次ごうとした武神ザルバが止めた。
「ちょうど良いわ。あなたに聞きたいことがあるの」
「俺に、ですか?」
「そう、あなたに」
 ザルバの問いは「そこの機材全てを一新した場合、今のシステムを移行することは可能なのか?」という事だった。
「一新……ですか?」
「近々、西カナンの国で「ノートパソコン」やら「ケーブル」やらの必要な機材を購入しようと考えています。同じ事をイナンナ様にも勧めてみようと思うのですが、そうした場合、あなたたちが構築したシステムはそのまま使えるのかどうか、それを知りたいのです」
「それはまぁ、スペックの差は出るでしょうが基本的には可能だと思います」
「基本的には?」
「あ、いえ、ちょうど今、俺たちも新しいサーバーを作ろうとしている所でして……」
 武神は言葉を止めて武神 雅(たけがみ・みやび)を呼んだ。
 シャンバラとカナンの両国で今後事業協力を行うのならば「政府専用サーバー」があった方がより情報のやりとりが円滑になる。現在はまだ構想段階であるが、を中心に開発を進めている。
「操作自体は難しくはない」
 話を聞いたが答える。
「むしろ誰でも使えるはずだ。最低限の知識は必要になるが」
「もちろん私たちカナン人も操作や仕組みは学びます、しかしやはりあなたたちでなくては分からないという箇所があっては困るのです。今後あなたたちが不在の場合も当然出てくるでしょうし」
「しかしこのシステムはコーラルネットワークを介するゆえ、完全にというわけには……。少し待ってもらえるか」
 コーラルネットワークを使うことに関してはイナンナに許可を取りたいと考えていた。ちょうど良い機会だ、と武神らはイナンナの部屋へと向かうことにした。
 武神のパートナーである龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)はこれに続いたが、重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)だけは、
「私はここに残ります」
 と、これを断った。諜報室に誰も居なくなってしまうというのもあったが、それ以上に彼の興味は目の前のPCサーバーにあった。
 が唱える「政府専用サーバー」ではなく、自身のPCサーバー。それに『メモリープロジェクター』3機と『シャンバラの地図』『カナン開拓マップ』『ザナドゥ探索マップ』に『パラミタ地図検索』を組み込むことで地図を立体的に見ることを可能とした
 視覚化に関してはこれまでも成功はしていたが、いずれも局地的な範囲内。しかし今後は3国間、しかもカナンに関しては情報が集まる度に地図情報を更新してゆく必要があるとなると、作業量は膨大なものとなる。
 寸暇を惜しんで作業に当たらなければとても終わりの見えない作業だったが、
「いやいや、実にやりがいのある仕事です。これなら各地の復興の状況を反映させる事も可能ですから」
 と本人は実に楽しそうだった。自分の手掛けた地図データがカナンの復興に役立っているという実感が彼に使命感と充実感をも与えているようだった。
マルドゥークの報告によれば、」
 戦と豊穣の女神イナンナ・ワルプルギス(いなんな・わるぷるぎす)の部屋。武神たちが入室した時、イルゼ・フジワラ(いるぜ・ふじわら)シュピンネ・フジワラ(しゅぴんね・ふじわら)イナンナとの面会を行っていた。
クレーメックさんがベリアルと約定を結んだ際、その場にはマルドゥークも居たと聞いています」
 答えているのはイナンナだ。
「つまり「土地を譲渡する」という条件は彼も聞いていたという事です。それでも約定を結ぶことに反対しなかったのですから、最悪の場合には西カナンの地を差し出す覚悟もあったという事でしょう」
「しかし! 当時はバビロン城に向かった者たち全員が全滅する危険もある状況だったと聞いています! ならば是が非でもあのような不当な要求を飲むべきでは無かったはずです!」
 語気荒くシュピンネが詰め寄る。イルゼはこれを抑えながらも問う。
「今のところ何の処分もされていないようですが、保留中という事でしょうか」
「私から彼の罪を問うつもりはありません」
「そんな……」
 二人が「信じられない」といった表情をするなか、室内に武神らが入ってきた。ザルバとの通信が繋がっていること、そして開発中の「政府専用サーバー」にコーラルネットワークを接続することを考えていることを話した。
「それは、コーラルネットワークを使わなければならないのですか?」
 イナンナは、シャンバラとカナンの両政府間での連絡がしやすくなるという利点は十分評価できるとしながらも、現在のネット回線、つまり「キシュマルドゥークの居城」または契約者たちが西カナンで使っている携帯電話やHCの電波を使うことは出来ないものか、とに訊いていた。
コーラルネットワークを使えば、その調整や管理等であなたたちを拘束する事になります。手伝っていただけるのは嬉しいのですが、負担が大きいのも事実。ザルバの意見も最もです」
 以前にハッキングされた経緯もある事から、サーバー内のデータは暗号化が進められている。しかしそれでは彼らが不在の際には情報を読みとれない。
「少なくとも私が仕組みを理解し、使いこなせるようになるまでは機密事項や重要書類等はこれまで通り書面で管理します。そうすれば暗号化は必要なくなるでしょう?」
「しかしそれでは政府間の連絡が―――」
「時間とお金はかかりますが」
 を制して、が言った。【カナン諜報室】のメンバーであり、資金運用と資材調達を担当している観点から、
コーラルネットワークを使わずとも政府間での通信は可能です。国内の電波基地建設や各種インフラ整備には当然お金はかかりますが、どちらも時間をかければ可能です」
 と補足した。二国間専用回線となればシャンバラ政府の了承を得る必要がある。「時間をかければ」とはそういった時間を含めて、の意である。
「構いません、それでお願いします」
 いま現在シャンバラで用いられているもの、また既にカナンに設置されている通常の回線、誰もが自由に使える回線を用いること。契約者たちが集めた情報や【カナン諜報室】が管理する情報等は全て共有できるよう、みなで協力し合うこと。それがカナン再興の助けとなることを信じて。
「あ、申し訳ありません、話が前後してしまいましたね」
 イナンナはここで再びクレーメックの話題に触れた。
「今後、私の許可無くカナンに関する契約・条約・約定に関する一切を結ぶことを禁じます。禁を犯した者はカナンからの永久追放を命じることとします」
 いかなる事情があったとしても、それは今回のように仲間の命が危険に晒されていようとも適用される、とイナンナは付け加えた。
「それからこれまで【カナン諜報室】に集まった情報は全て開示して下さい。シャンバラの皆さんに協力を仰ぐ機会も多くなるかと思います、誰でもそれらの情報を引き出せるようにして頂ければその助けになることでしょう」
 データ化されている機密情報の類は全て破棄。カナンのインフラ整備と共にイナンナたちへの情報教育が、カナン近代化の第一歩であり当面の課題となりそうだ。
「あぁそれから、もちろん、「ろくりんピック」には参加させて頂きますわ」
 シャンバラとカナンの親交をより深めるべく、喜んで選手を派遣すると女神は笑顔で応えた。