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【2022バレンタイン】氷の花

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【2022バレンタイン】氷の花
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エピローグ

 魔女とおサエはようやく落ち着いた空京の様子を上空から見ていた。

「あちこちで騒ぎになったよ。みんな悲しんだり、苦しんだり、大変だったじゃない。
 どうしてあんなことをしたの?」

おサエが咎めるように、魔女に問いかける。夕暮れ近い空は薄い紅色に染まり、金色の夕日が魔女の金髪を炎のように輝かせている。

「シェイクスピアって人間も言っているじゃない『終わりよければ全てよし』ってね」

謎めいた返答に、おサエは考え込んだ。

「あなた、反省していないでしょ」

「その必要はないもの。むしろあたしからの贈り物よ」

「……贈り物?」

「そうよ。いいこと?
 今回の件はね、愛や友情の試練になったのよ。
 人間のそういう気持ちって、何かトラブルが起きないとなかなか表には出ないんだから」

「素直に気持ちを伝えるのじゃダメなの?」

「たいていの人間ににはタテマエって言うのがあるのさ。
 そしてその部分で愛や友情を語っても、ホンモノじゃない。
 何かあったとき、初めて真の愛や友情がわかるのよ」

ふと魔女の瞳が遠くを見るように霞んだ。微かな痛みのようなものが、一瞬瞳に浮かんで、消えた。
 
「さーて、人間とも遊んだし、帰ろう帰ろう」

魔女はおサエをそっと美緒のいるオープンカフェのそばに下ろすと、箒に乗って飛び去っていった。悪戯の結果に満足して、きっと故郷へ向かったのだろう。

おサエは肩をすくめると、カフェに集まっていた瑛菜やシズル、小谷、美緒らにことの収束を告げに行った。

「ご迷惑をおかけしました。
 ……でも、当人はなんだか、この一件は贈り物だって言ってましたけど……」

「贈り物?」

美緒がオウム返しに呟いた。

「……ま、ある意味そうかもね」

小谷が大人ぶって言う。

「どういう意味?」

瑛菜が尋ねる。

「子供にはわからない、こ・と・よ」

「ちょっと〜。勿体つけずに説明しなさいよぉ! ねぇ〜」

シズルが言って、小谷の肩を抱く。

 その日の黄昏時は優しく暖かい風が、遠くない春の予兆を乗せてかすかに流れていた。夕日が落ちた直後、全てのものを水色に染める夕方。街の明かりが優しく灯り始める。

公園の隅で、気の早いスミレに似た花が、かすかな香りを放って一輪開いていた。


担当マスターより

▼担当マスター

鷺沼 聖子

▼マスターコメント

 こんにちは、鷺沼聖子です。インフルエンザが猛威を振るいだしましたね。皆様どうぞ体調にはお気をつけください。
さて、今回はバレンタインシナリオということで、想いを伝える、をテーマにしてみました。
 
 好きな人に気持ちを伝える、というのは片思いなら大きな勇気が要りますし、恋人同士でもなかなか普段そういった気持ちを改めて伝えあうと機会は少ないかなあと思います。

誰かを愛する、思いやる、、案じる気持ちというのは、人間が持てる感情の、大きなプラスのエネルギーではないでしょうか。
言わなくてもわかる……というものもありますが、せっかく言葉があるのですから、想う気持ちというのはぜひお互い伝え合えたらいいと思いませんか?
そしてまた、思いやりを持って接するのはとても大切なことだと思います。思いやりを持って接する、気持ちを伝え合うことで、よりお互いの絆も深まるのではないでしょうか。

皆様ご参加ありがとうございます。またよろしかったら、私のシナリオにご参加いただけますと幸いです。