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第10章 秘宝

 空の祠を前に、秘宝探索の一行は沈黙のまま佇んでいた。
 秘宝が、ない。
 一体誰が、いつの間に……
 物言わぬ一行の間に、疑念が広がっていく。
 先程姿が見えなかったあいつが、実は先行して奪って行ったのではないだろうか。
 隣りで驚いたふりをしているこいつは、裏では笑っているのではないだろうか。
 それとも……
(あ、あ……嫌)
 セレアナは、不安に陥りそうになる自分の心を、体ごと抱きしめる。
(私は、セレンに、そんな感情を持ちたくない……私は、セレンを)
 ふらり。
 立ち尽くすセレンに、一歩、また一歩と近づくセレアナ。
 無言で抱きしめる。
 ただそれだけで、全てが変わった。
 腕に伝わる恋人の温もり。
 相手に伝える自分の心。
「セレン」
「セレアナ」
 しんじてる。
 言葉に出さなくても伝わる真実。
「そ、そうだよな」
 はっとしたように、ラルクが告げる。
「こん中に、誰かの裏をかいてお宝をゲットするような奴ぁいねえ」
「だったら、こういう事なんだ」
 エースの言葉は、確信に満ちていた。
「秘宝は、なかった。ただそれだけなんだ」