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第6章 デート 遊園地にて

「助けてくださってありがとうございます。お礼に、私とデートする権利を差し上げますわ!」
「……は?」
 黒服に追いかけられていた少女を助けた桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)は、少女の言葉に思わずぽかんと口を開ける。
 少女の名前は、美鈴といった。
「つまり、君は仕事放り出して逃げてきたアイドルで、さっきの黒服は連れ戻しに来たスタッフ?」
「まあ、そういう事になりますわね」
 KKY108のアイドル、美鈴から詳細を聞いた煉は、呆れたように大きなため息をつく。
「ほんと、我が儘なお嬢様だなぁ」
「我が儘、ですか?」
 煉の言葉に、急に不安そうな顔になって煉の顔を見つめる美鈴。
 そんな彼女の様子を見ていると、どうにも断れなくなってくる。
「まあいい、気持は理解できなくもないからな。今日一日くらいは付き合ってやる」
「ほんと! ……あ、と、当然ですわ!」
 ぱあっと明るくなった表情をなんとか引き締めようとしている美鈴の手を取る。
「あ……」
「行先は遊園地なんてどうだ?」
「遊園地……私、行った事ありませんわ」
「俺もあまり縁がない場所なんだけどな。ジェットコースターとかお化け屋敷とか、面白い物が色々あるぞ」

「……はい、確かに俺は秋葉原四十八星華の一人ですよ。ええ、キャラクエにも登場してます。KKY108のメンバーですか? 知りませんねえ」
 隣の不安そうな視線を笑顔で受け止めながら、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は電話を切った。
「もう大丈夫だ」
「……ありがとうございます」
 エヴァルトの言葉に笑顔を見せるのは、KKY108のメンバー、美星。
 エヴァルトをデートに誘った美星だが、その直後にエヴァルトの元にKKY108メンバーの消息を尋ねる電話がかかってきたのだ。
「ほんとに、アイドルの美星さんなんですね!」
 ミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)が嬉しそうに美星の顔を覗き込む。
「会えて嬉しいですー。サインとか、貰えないでしょうか?」
「申し訳ありませんけど、今はアイドルではなくフツーの女の子として見てほしいんですの。サインは、また後で」
「ほわー、そうなんですね。はい、分かりました!」
 美星の言葉に素直に頷くミュリエル。
「よし、それじゃあ早速遊び倒すか!」
 エヴァルトの言葉に、美星とミュリエルは嬉しそうに顔を見合わせた。

「きゃあああああ!」
 切札と遊園地デート中の璃良・サラーは早速トラブルに襲われた。
 水がかかるジェットコースターの中で、半裸の璃良は切札に抱き着いていた。
「ちょ、ちょっと落ち着いてください!」
 事の始まりは、貸衣装。
 遊園地の中にあった貸衣装屋を見かけた璃良は、変装したいと言い出した。
 半分変装、半分趣味でメイド服を選んだ璃良は、メイド姿のまま上機嫌で切札と遊園地の乗り物を楽しんでいた。
 しかし、その貸衣装には大切な注意書きがあった!
『水に濡らしてはいけません』
 大変弱い生地で作っているため、水に濡れると破れてしまう可能性があったのだ。
 それが水に濡れ、おまけにコースターの風圧。
 メイド服はいともあっさり破れ、半裸の璃良は羞恥とコースターの恐怖とが混ざり合い、パニックのまま切札にしがみつく。
 当然、顔以外にも雅羅によく似た大きな胸が切札の腕を圧迫し……
「いやぁああああ!」
「うわぁああああ!」
 コースターの中で、いつもとちょっと違った悲鳴が響いた。