百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

めざめた!

リアクション公開中!

めざめた!

リアクション

 

イルミンスールでのめざめ

 
 
「ノルンちゃんのお洋服ですかぁ?」
 神代 夕菜(かみしろ・ゆうな)に相談されて、神代 明日香(かみしろ・あすか)が聞き返した。
「ええ。最近、小さなお子様を着替えさせる機会がありまして……。そしたら、意外と楽しいじゃないですか。それで、よく考えたら、うちにはエターナル五歳児体形のノルンちゃんがいることを思い出したのですわ」
「それは、いいところに気がついたですぅ。じゃあ、ノルンちゃんの秘密クローゼットに御案内ですぅ」
 そう言うと、神代明日香が、神代夕菜をウォークインクローゼットの一つに案内していった。
夢の入り口にようこそ〜
 神代明日香がそう言うと、ハンガーに掛けられたノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)用の洋服がずららら〜っと現れた。
「凄い、これ、全部ノルンちゃん用なのですか?」
 さすがに驚いて、神代夕菜が聞き返した。
「ノルンちゃんは体形がずっと変わらないので、成長して服が着られなくなると言うことがないんですぅ。だから、今まで買ったお洋服は、全部今でも着られるんですよぉ。かわいいお洋服があればついつい買っちゃってましたし、この間実家から古いお洋服もまとめて送ってもらいましたぁ」
 ちょっと自慢げに、神代明日香が言った。
 それにしても、ちょっと壮観なラインナップだ。パーカーだけでも、うしさんパーカーぶたさんパーカーひつじさんパーカーりすさんパーカーいぬさんパーカーどらごんさんパーカーねずみさんパーカーオウムガイパーカーぺんぎんさんパーカーくまさんパーカーカエルさんパーカー+♪ねこさんパーカー、さらには、しーくれっとパーカーまでもが揃っている。
「こんなにたくさん……。いったい、どうやって着せたらいいんでしょう……」
 ちょっと呆然としながら、神代夕菜がつぶやいた。
「仕方ないですね。ノルンちゃんマスタリーがまだビギナーの夕菜ちゃんに少し教えてあげますぅ。六時くらいだと、ノルンちゃんはまだ寝ぼけてますよ。七時くらいなら、ちゃんと目が覚めて起きて来ます。最近のノルンちゃんの寝巻きは、着ぐるみパジャマがマイブームですぅ。お着替えは、ワンピース系を着せるときにばんざーいしてくださいは大丈夫ですが、キャロットなどはかせるときに片足上げてくださいはバランス崩して転ぶので注意してくださいねぇ」
「は、はい、頑張ります」
 神代明日香の説明をしっかりとメモしながら、神代夕菜が答えた。
 いざ、実践である。
 ここからは全て神代夕菜に任せて、神代明日香は朝食の支度にでかけていった。
「はい、ノルンちゃん、朝ですよ。お着替えしましょうね」
 まだ寝ているノルニル『運命の書』に、神代夕菜が声をかけた。
 今日のノルニル『運命の書』のパジャマは、ひよこさんパーカーである。
「すやすやすや……」
「はい、ノルンちゃん、おっきしましょうねえ。朝ですよー、お着替えの時間ですよー」
「あい……ぼけー」
 神代夕菜に言われて、ノルニル『運命の書』が目を瞑ったままふらふらと立ちあがった。まだ、半分以上眠っているようである。
「はい、ばんざーい」
「ぱんにゃー」
 言われるままにバンザイするノルニル『運命の書』から、まずはパーカーを剥ぎ取る。次はもこもこの半ズボンだ。
「片足あげてくださーい」
 えいやと引き下ろすと、さすがにノルニル『運命の書』がちょっとよろけた。
 身体を支えようとしてのばした小さな手が、むんずと神代夕菜の胸を掴む。
「この感触は……。明日香さんではない! 誰です、お前はあ!」
 一気に目が覚めたノルニル『運命の書』が、なんだかかわいく格闘のポーズをとった。
「あれ、夕菜さんでしたか。なんで私パンツ一丁になっているんですか? 脱がしましたね。エッチ。ちょっと寒いです
「今日は、私がお着替えさせてあげることになったんです。さあ、これを着ましょう」
 そう言って、神代夕菜がセーラーカラーのワンピースを取りだした。夏向きの、白地に水色のラインが入った爽やかな物だ。
どうしてもやるんですか?
「ええ、もちろん」
 ちょっとわくわくしながら、神代夕菜が答えた。
「仕方ないです。協力してあげますです」
 そう言うと、ノルニル『運命の書』がばんざーいをした。すかさず、神代夕菜がワンピースをカポンと被せる。
うっ、痛いです……
「ご、ごめんなさい」
しっかりしてください
 ノルニル『運命の書』に怒られながらも、神代夕菜がなんとかお着替えを完了させた。最後に、かわいい水平帽を被せて完成だ。
「できましたあ」
 ちょっとうっとりしながら神代夕菜が言った。
「じゃあ、頑張った御褒美にアイスがほしいです