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危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

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危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

リアクション

「キース、大丈夫か」
 グラキエスは実験室からずっとオルナを背負い続けているロアを気遣った。
「心配ありません。外まであともう少しですから気合いを入れて行きましょう」
 ロアはそう言った。ここで何か言えば、グラキエスが交代するなどと言うかもしれない。それだけはさせたくない。
「エンド、止まれ」
 先頭を歩いていたゴルガイスが急に止まるように指示をした。
「犬のぬいぐるみ」
 グラキエスは、ゴルガイスの言葉で視線をロアから前方に向けた。
「ぬいぐるみですね」
 火の付いたライターを持った犬のぬいぐるみ。ロアはオルナを背負っているため対応はグラキエスとゴルガイスに任された。
「ワゥゥン」
 犬のぬいぐるみは火が付いたままのライターを近くのごみ箱に放り投げた。
 途端、爆発が起こり中身が飛散する。
「……!!」
 ゴルガイスが素早く『ブレイドガード』と『歴戦の防御術』で自分の身だけではなく、仲間の身も守り切る。防御をしている間にぬいぐるみはこちらに襲いかかって来る。
「……動けないようにする」
 グラキエスが『奈落の鉄鎖』を使い、ぬいぐるみの動きを鈍らせた。
「よし、我が捕獲する」
 ゴルガイスが手早くぬいぐるみを捕獲した。
「……外に出て汚れと一緒に匂いを落としましょう」
 ロアの言葉でますます出口を急ぐ事にした。

 その道で犬のぬいぐるみの被害者達に遭遇した。
「犬君を捕まえてくれたんだね」
 レキはゴルガイスの手にあるぬいぐるみを見て安心した。
「いきなり襲いかかって来たのだ」
 ゴルガイスは簡潔に説明した。
「この子いいかな。ボク、この子達を探してたんだ」
 レキは袋を見せながら言った。
「では」
 ゴルガイスは手渡し、レキは消臭スプレーをかけてから優しくぬいぐるみを袋に入れた。
「オルナさんも大丈夫みたいだね」
 ローズはロアの背中にいるオルナに気付いた。
「治療はしてある。心配無い」
 グラキエスが答えた。
「……レキ、あと一体だけですね」
 カムイが未捕獲のぬいぐるみの数を確認した。
「その一体、熊のぬいぐるみでしたら実験室にいますよ。ちょうど、捕獲している最中だと思います」
 ロアが熊のぬいぐるみについて話した。今頃、悪戦苦闘している頃だろう。
「……実験室か。人がいるなら大丈夫だよね。ずっとこのままは可哀想だし。カムイ、行こう」
 レキはしばらく考えた。自分の手で捕まえたいが、袋の中の四体をこれ以上このままにしてはおけない。人がいるのなら大丈夫なはず。そう結論を出し、外で洗濯をする事にした。
 この後、セレンフィリティ達も外に行き、オルナと知り合いたいシオンに引っ張られ司達も外に行った。
 ローズはシンが指揮を執っているであろう浴場に向かった。

 浴場。

 屋敷が海になる危機は脱したが、掃除が必要である状況は変わらず、オデットは一人で掃除をしていた。
「……こんなに広いと一人で掃除は無理ね。手伝いを頼んでみよう」
 オデットは法正に人を回してくれるように伝えた。

 しばらくして、
「手伝いに来たぞ!」
 厨房と食堂を見事に生き返らせたシンが要請を受けやって来た。ローズは困っている人を発見し、途中で別れていなかった。

「良かった。一人でどうしようかと」
 オデットはほっと安心した。
「なかなか磨きがいのある浴槽じゃねーか」
 プール並の大きな浴槽を眺めながらシンは不敵に笑んだ。
「徹底的に汚れを落として窓も床も顔が映るまで磨き上げるぞ」
 周囲を見回してからシンは指示を出した。人数が少ない分、迅速に無駄なく動く必要がある。
「あ、はい」
 オデットは返事をし、気を引き締めて窓拭きに取りかかった。

「しばらくしたらロゼが来る。それまではオレ達だけだが」
 シンは一番重要な浴槽に取りかかった。
「頑張ろう!」
 何とかなる予感にオデットは気合いの入った声で言った。

「来たよ。うわぁ、もう綺麗になってる」
 ローズが来た頃にはある程度綺麗になっていた。ごみが転がっていない分、時間が短縮されたのだろう。この後、ローズは途中で救出されたオルナの事を話した。

「ロゼ、浴槽の水を抜いてくれ」
 翼を広げて天井を隅々まで掃除をするシンが下にいるローズに言った。
「消毒液の匂いがするんだけど」
 浴槽に近付いたローズは立ち上がる匂いに鼻をつまんだ。
「体を洗う所で魚を飼育していたんだぞ。一体、どんな生活してんだ」
 シンがまたまた怒りの声でローズに答えた。その間もしっかりと掃除の手は動いている。『ハウスキーパー』のおかげか天井は顔が映るほどの綺麗さ。
 何とか三人が力を合わせて掃除を終了させ、オデットが法正に連絡を入れるとオルナは救出され、彼女が目覚め次第入浴をさせると伝えられた。ローズが事情を知っている事を法正は知らないので多少重複していた。
「……オルナさんが目を覚ましたらここを使うそうよ」
 オデットが法正から聞いた情報をローズにも伝えた。
「今から湯を入れておくか」
 シンはそう言って蛇口を捻り、湯を浴槽に流し込んだ。
 それからオデットは湯加減確認のため残り、シンとローズは食堂へ移動した。

 外。

「すごい洗濯物だね」
 レキは洗濯に精を出しているアメリに声をかけた。
「……えぇ」
 アメリの額に少し汗が流れているが、自分にも出来る事があって嬉しそうにも見えた。
「洗濯物か?」
 アメリと共に洗濯しているダンが訊ねた。
「そうだよ。ぬいぐるみの洗濯」
 レキは四体のぬいぐるみが入った袋を見せた。
「少し汚れていますから洗った方がいいと思いまして」
 カムイが補足する。
「そこの洗剤を入れた水に放り込んだらいいよ。汚れも匂いも消えやすくなるから」
 汚れた服を洗いながら青夜が言った。まだ実験器具は来ていない。
「分かった」
 レキは早速、袋を開けてぬいぐるみをたらいに入れた。
「手伝います」
 カムイは入れられたぬいぐるみ達をしっかりと水に沈める。
「特製の洗剤を入れているからすぐに薄まるはずだ」
 青夜の言葉通り、少しずつ汚れが薄れていっている。当然消臭もばっちりである。
「それから水で手洗いして干せばバッチリだね」
 レキは水の入ったたらいに入れ替え、優しく洗って干した。
 カムイはしっかりと手伝っていた。