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断章


 今から少し前のこと。
 学院内を歩くルシア・ミュー・アルテミス(るしあ・みゅーあるてみす)はいつもよりちょっとおめかしをして、鼻歌交じりに上機嫌で、何があるのか尋ねずにはいられない雰囲気。
「ルシアさん、何か嬉しいことでもあったの?」
 だからだろう、講習終わりのイーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)が呼び止めた。
「あ、イーリャ先生。お疲れ様です」
「はい、お疲れ様」
「実は私、これからレストランで食事なんですよ」
 場所は西地区の『海空』。
「そこでナンパしてもらえって、新聞部の部長さんに」
「……ああ、合コンね」
 イーリャの頭の中で男女間の懇談会が巡る。
「合コン、って言うんですね」
「ルシアさんは合コン初めてなの?」
「そうなんですよ。いっぱいお友達ができるといいわ」
 まだ見ぬ相手との会合に思いを馳せるルシア。
 少し勘違いしている感が否めないイーリャ。しかし、楽しみにしているところへ水を差すのもどうかと思い、
「まあ、学生の健全な範囲なら問題ないわよね」
 黙っておくことにする。
「先生も行きましょうよ」
「残念だけど、私はまだ仕事が残ってるわ」
 手に抱える教材を掲げる。
「それは残念だわ……」
「どうかしたのであるか?」
 通りかかったダミアン・バスカヴィル(だみあん・ばすかう゛ぃる)が話に加わる。
「あら、ダミアンさん」
「これから合コンに行くって話をしていたのよ」
 声のトーンを上げて、内容を喋るルシア。
「……中々楽しそうな企画であるな」
「ええ! とっても楽しみだわ!」
 咲き誇る笑顔。ふと、視界に入った時計。
「いけない! そろそろ時間だわ。それじゃ、会長さんが待っているので行ってきますね」
「いってらっしゃい」
 見送りながら手を振っていると、さっきの言葉に違和感を感じた。
「……あら? 会長って聡くん?」
「であろうな」
「聡君って公約でナンパ禁止してなかったっけ?」
「これは僕に報告すべきなのだよ」
 ダミアンは生徒会室へと向かう。
「ただのレクリエーションよね……?」
 一人残ったイーリャの視線の先では、クリスチーナと話しているルシア。
 その後も何度となく呼び止められ立ち止まる。
 この分だと、ルシアは相当数の天学生に話しているであろう。

――――

 時は戻り。
「やはりというべきか、ルシアが話を漏らしていたか」
 別室で通信を受けている笹塚。
「そうだそうだとは思っていたが、天然とは恐ろしい。で、どうする?」
 幾つかの回答が返ってくる。
「了解。俺もそのつもりで作戦に当たるとする」