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囚われし調査隊、オベリスクの魔殻

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囚われし調査隊、オベリスクの魔殻

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3章 「精神と力」


 〜遺跡内部・オベリスクの舞台〜


「はあああーーーッ!!」

 夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)は雄叫びと共にマキシマムアームでゴーレムを殴り飛ばす。
 吹き飛ぶゴーレムにすかさずアンボーン・テクニックを叩き込むとゴーレムは粉々に砕け散った。
 走り抜けながら、ゴーレムを粉砕する甚五郎。その息は切れておらず、その瞳には
 強い闘志が燃えたぎっていた。

「脆いッッ! 古の兵とは名ばかりかッ! この気合の無い腑抜け共がぁぁッ!!」

 叫びながらゴーレムを次々と粉砕していく甚五郎のそばでは草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)
 疲労で座り込んでいた。

「そなたはなぜかようにも、元気なのじゃ……わらわには立ち上がる気力さえないというに」

 羽純は立ち上がろうとするも、力は込めた先から抜けていき、立ち上がることすらままならない。
 ついには体勢を崩し、その場にぺしゃりと倒れ込んでしまう。
 次第にどうしようもない疲労感が襲い、手足の動きさえも妨げていく。

「なんだ、おぬしらッ! この程度の疲労感! 気合で乗り切れッ!!」

「そんなこと言われてもー……ムリな物はムリですよ……」

 同じく地面に突っ伏しているホリイが甚五郎に文句を垂れる。
 一所懸命に手を動かそうとするものの、やはり羽純と同じように力が入れる先から抜けていき、
 まともに動くことすらできない。羽純は仰向けだが、ホリイはうつ伏せであった。
 二人は一所懸命動こうと努力はするが、次第にその気力すら削がれていく。

 動こうとする二人の様子は、もはや地面に転がりぱたぱたと手足を動かす子供と大差ないほどであった。

「まったく、この程度の疲労感さえ跳ね除けられないとは……修業が足りんッ!!」

 喋りながらも甚五郎はゴーレムを次々と動かぬ石の塊へと……否、粉々に砕かれた小石へと変えていった。

 ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)が甚五郎に話しかける。

「甚五郎、戦場全体の士気が著しく低下しています。可能性として考えられるのは、何らかの効果により、
 みなさんの体力が奪われてしまっている、という事です。」
「ほう……何が原因だ?」

 ゴーレムを砕きながら、甚五郎がたずねる。

「これはまだ、推測ですが……舞台を包んでいるこのフィールドのようなものは、中にいる者の力を
 何らかの形で吸収するのかと」
「なぜ、そう思う?」
「先程から周囲に配置されているオベリスクの発光が強まっています。戦場の士気低下以前には
 見られなかった現象です。可能性は高いと思いますが?」
「そうか……ならば、動けなくなった者の分までわしが動こう! ここの皆は何としてでも守りきるぞ!」
「了解しました。その気合で全て解決するところ、嫌いではありません。」

 数体のゴーレムを相手にする甚五郎が振り返らずに聞く。

「ん? 何か言ったか? よく聞こえんかった!」
「いえ、何も」

 甚五郎にブリジットは加勢し、二人は出現し続けるゴーレム相手に奮戦する。