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リアクション
場所:披露宴
「本当に、いいんですか?」
「ああ。ムシミスには後できちんと話をする」
「ならば、我らは執事として決定に従うまでだ」
ムティルの決定に、執事である北都とモーベットは頷き合う。
(一応準備してきたけど、これはいらなかったねぇ)
北都はそっと持参してきたとある危険物を隠す。
式の妨害に使おうと思っていたが、必要なさそうだ。
まもなく、披露宴が始まろうとしていた。
形式ばった式は省き、親族関係者に結婚を知らしめる披露宴だけを重点的に開催する。
まさに、偽装結婚に相応しい仕様といえるだろう。
北都たちがムティルから離れ、使用人とリアンに連れられた花嫁、エリザベタが隣に立つ。
そして披露宴会場の扉は開かれた。
新郎の親族、ムシミス不在のまま披露宴は進んでいく。
開いた場所で行われているため、ブライダルイベントの参加者もその様子を見ることができた。
ある者は憧れの目で、そして事情を知っている者は心配そうな目で。
その式の様子を眺めているのだった。
そして、参列者に料理も行き渡り、乾杯の合図で飲み物を口にした丁度その時だった。
式場の扉が、ばあんと開かれた。
「ぱぱー!」
「おとーさーん!」
2,3歳位の子供たちが会場に走りこんできた。
子供達は全員、ムティルの方に向かって走ってくる。
「……は?」
呆気にとられるムティルに、子供達と共に入ってきたカル・カルカー(かる・かるかー)がびしりと指を突きつける。
「ムティル、結婚前にどれだけ隠し子を作ってるんだ! 責任とれよ、な!」
勿論、カルの陰謀だ。
突然の事態に騒然とする会場。
「い、いや、ありえない! だいたい俺は男性にしか興味がない……あ」
ムティルは慌ててカルに弁明しかけ、慌てて口を押える。
それは、結婚式場で、当の新郎が言ってはいけない言葉だった。
「え?」
「それはどういう事だ?」
会場が、とりわけ花嫁の親族側がざわつき始める。
(当初の予定とはちょっと違ったけど、これはこれで良しっ!)
カルは心の中でぐっとガッツポーズ。
そして混乱する会場に、更なる混沌が訪れた。
「ククククク! 行け、我が部下たちよ!」
突如として響き渡る笑い声。
それと同時にアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)と奇稲田 神奈(くしなだ・かんな)、そして戦闘員たちがわらわらと乱入してきた。
驚いている参列者をけん制し、扉から花嫁までの道を切り開く。
そして、真打登場!
「フハハハハ! 花嫁は、我ら秘密結社オリュンポスが頂いて行くぞ!」
「え……きゃあっ!」
ドクター・ハデスが花嫁を抱き上げる。
「そうそう、忘れるところだった。俺の発明品も置いておこう」
ドン、と置いたのは先程入口で止められそうになった例の触手のついた装置。
「行くのだ、『災厄の守護者<ダークネス・ガーディアン>』よ! 追手どもを足止めせよ!」
『敵正反応ヲ確認。コレヨリ、対象ノ排除ヲ開始シマス』
うにょうにょうにょうにょ。
緑色の触手を滾らせるダークネス・ガーディアン。
その様子に、参列者もはっと我に返る。
「は、花嫁を守れ!」
「待てーっ!」
ハデスを追って、他の警備員と共にやって来たのは紅鵡。
「怪しいと思ってたけど、やっぱりこんな事しでかして……!」
「そうはさせぬ!」
「ハデス様の、邪魔はさせません!」
紅鵡と追手の前に、神奈とアルテミスが立ちふさがる。
「か、勘違いするでないぞ! 別にハデス殿のためにやっているのではない! 家の為に望まぬ結婚をする花嫁と花婿が許せないだけじゃ!」
神奈は大声で弁明するが、当のハデスは聞いていない。
しかしその主張は、参列者を僅かに動揺させるものだった。
「その通り! 本心からの結婚でないというなら、このオリュンポスの騎士アルテミス、妨害させていただきます!」
身構える二人。
しかし、その二人に大変な事態が襲い掛かった。
うにょうにょうにょうにょ!
「……むむ?」
「……えぇ?」
ハデスの発明品、ダークネスガーディアンの触手が神奈とアルテミスに絡みついたのだ!
「な、なんじゃこの触手はっ!」
「な、なんでハデス様の発明品が、私たちに……っ」
『敵味方識別機能ニ、えらーガ発生シマシタ』
「なに……うぅっ、ふ、服の中に入ってくるでないっ! ……あぁあっ」
「や、やだっ、下着の中に……やんっ」
置いてけぼりの紅鵡たちの前で大変なことになっていく二人。
『攻撃識別ハ<エロOK>!(しゅぴーん!)』
ダークネスガーディアンの触手が、会場中に伸びる!
「え……うわあああん!」
「ひ、丙お兄ちゃん!」
式の余興として能を演じるため待機していた丙が、触手に浚われた。
能の手伝いに来ていた梔子 禊(くちなし・みそぎ)の目の前で、ぐねぐねと巻きつかれていく。
「そ、そんな……あぅっ」
「きゃぁあああ!」
「歌菜っ!」
使用人として控えていた歌奈にも、触手の魔の手が!
披露宴は、これ以上ない程の混乱が渦巻きはじめた。
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