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リアクション
「うーん……誰かいねぇかなー」
辺りをキョロキョロと見回しながら鈴木 周(すずき・しゅう)が呟いた。
「事件現場の近くなら誰かしらいると思ったんだけどなー……お?」
スライダーの方に目をやると、周の目にある異質な物が映る。
スライダーの着地点となるプールに普通は無い物、というべきか者、というべきか――プールに、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が逆さに刺さっていた。
「おっしゃ女の子発見!」
だが周の目に入ったのは、プールサイドにいたなななであった。野郎、というか無機物など眼中に入っていなかった。いやそこは眼中に入れろ。
「へーいそこのおじょーちゃーん!」
なななに向かって駆け寄る周。
「ん? なななのこと?」
自分に声をかけられていると気づき、なななが振り返る。
「そーそー……ってななな? 変わった名前だなーまぁ可愛いからいいけど……っと、それより事件について調べているんだろ?」
「そうだよ」
「その辺りの話はどっかそこいらで聞かせてもらったはずだぜ! なーに俺に任せておけ! 高校生探偵っぽい何かを漂わせているこの鈴木周は大体の事はわかっているっぽいんだ!」
周が曖昧で適当な事を言って胸を張った。
「大体の事はわかってる?」
「おうよ! その辺りはごちゃごちゃ説明するより実際にどんなかを見てもらった方が早い。再現を行おうと思う……そこで、だ」
周がなななの肩に手を置いた。
「被害者役を頼みたいんだ、ななな」
「え? なななが?」
そうだ、と周が頷く。
「おっと、ただやるだけじゃないぜ? 格好もちゃんと被害者と同じように再現する。なに、水着なら用意した!」
そう言って取り出した物はトランクスタイプの水着。どう見ても男物である。
「これ? 男の人のだよ?」
「ちゃんと再現する必要があるから男物にするに決まっているだろうが!」
「本心は?」
「オパーイとかトップレスが見たいからに決まっているだろうが!」
清々しいまでの男っぷりを見せた漢、鈴木周。
「ああそうだよ! ぶっちゃけムラムラしての発想だよ! 何だよ男子がオパーイとか見たくなるのはおかしくないだろ!? 反省なんかしてやらねぇからな!」
男の子なら仕方ない欲望である。だが人、それを下種と呼ぶ。
「おっと、取り乱した……まぁ確かに恥ずかしいっていうのはわかる。だが安心してほしい、何なら脱がすのを俺に任せてみろよいやむしろ任せろ!」
そう言って水着を握りしめ鼻息を荒くする周がなななににじり寄る。
「でも再現とかやる必要ないんだけどなー」
「おいおいそんな事言っちゃって恥ずかしがるなよ! 俺に全てを任せて身をゆだねてみろよさぁ!」
「いや、だってさ――」
なななが何か言いかけた時であった。
「……ぁぁぁあああああああああ!」
空から、何か音、というか声が聞こえてくる。
「ん? 何だ? 何か変な声ぐぶぉぇぁっ」
空を見上げた直後、降ってきた何か――伊大知 圍(いたち・かこむ)に周が潰される。
ぐちゃり、という音と同時に潰れた周は何か色々とぐちゃぐちゃになっていた。上から降ってきた圍はピクピクと痙攣しているが、動かなくなるのも時間の問題だと思われる。
「だって、今再現やっている所なんだもん」
なななの言葉は、周だった物の耳には勿論届かなかった。
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