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【2022修学旅行】0208赤壁の戦い

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【2022修学旅行】0208赤壁の戦い

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【三章】幕間



 柴桑にて。

 孫権の元には、軍の重鎮達が集まっていた。

 孫権の正面には魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)が連れてきた孔明が座っている。
 孔明の両脇には諸葛涼 天華(しょかつりょう・てんか)黄 月英(こう・げつえい)が控えていた。

「曹操の大軍はもとは袁紹と劉表の兵であり、水軍での戦いにおいては我らが圧倒的に優位。降伏の必要などございませぬ」
 孔明の発言に降伏派の将軍達が次々に異を唱えるが、誰一人として彼を言い負かすことが出来なかった。

 途中、席を外した孫権を、それまでずっと沈黙を保っていた魯粛が追いかける。トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)もその後に続いた。
 孫権は追ってきた魯粛に気付くと、彼の考えを問うた。

「降伏すればよいではありませぬか。どうせ抗戦しても勝ち目などございませぬ。無駄な抵抗はせず、潔く曹操の軍門に下りましょうぞ」
「貴様ぁっ!」

 孫権が剣を抜き、魯粛へと向ける。剣先を突きつけられた魯粛は、ふっ、と笑みを浮かべた。

「それで良いのです。降伏した所で、孫権殿には身の置き所がない。降伏論は孫権殿にとって利は有りませぬ」

 それを聞いた孫権は驚いた顔をする。そして武器を収めると、ぬしには敵わぬ、と呟いた。
 孫権は自分の本心を打ち明ける。彼は降伏論ばかり唱える自軍の将校達に失望していたのだった。
 そして魯粛の存在を天からの贈り物だと称える。

 その後、孫権は降伏の意見を跳ね除け、抗戦を宣言する。

 話し合いが終わり、トマスは魯粛へ持参した胃薬を渡していた。
「ありがとう、坊ちゃん。課題の方はうまく書けそうですかな?」
 魯粛はトマスに、先程の話し合いを見て「中間管理職とは」という考察をレポートに纏める課題を出していた。
「はい。先程の子敬先生の活躍、しっかりと見させていただきました。旅行から帰ったらすぐにレポートを纏めようと思います」
「ええ、頑張ってくださいね」


 一方、孔明は天華達と共に帰路についていた。
 騎馬を走らせながら、月英が天華に話しかける。

「どうでした? 夫の手腕は」
「聞きしに勝る軍師ぶりであった。孫権軍の将ら、誰一人としてご先祖に口で勝てなかったな」
 そう言って小さく笑う天華。どうやらご先祖様の活躍する姿を見ることができて、ご機嫌らしい。つられて月英も笑みを浮かべる
「あちらの将軍さん、とても悔しそうな顔をしておられましたわね。ちょっとかわいそうな気もしますわ」
 
 降伏派の将軍達は、どうにか抗戦をやめさせようと必死に都合の良い言葉を並べ立てた。
 だが中身の無い上っ面だけの言葉で孔明を丸め込めるはずもなく、孔明は矛盾をずばりと指摘し、反論の余地を一切残さなかった。
 
 天華が続ける。

「周瑜の説得もうまいものだ。まさか煽るとは思わなかった」
「流石の周前部大督も『自分の妻を差し出せば難は去る』などと言われれば黙ってはいられませんわね」
 曹操は周瑜の妻、小喬を狙っていた。孔明はその事実をうまく利用し、周瑜に抗戦を決意させたのだった。

 月英は前を行く孔明へと目をやる。
「問題はこれからですね。おそらく周前部大督は夫を殺そうとしてくるでしょうし、護衛も考えなければ」
「赤壁の戦いでは、火計の為にご先祖が東南の風を吹かせたと聞く。その準備も必要だろうな」
「東南の風ですか……それなら祭壇を作って、それらしい格好で祈祷していてもらおうかしら」
「確かに、それなら前線にいるよりも護衛がしやすい。歴史上、風は吹くと思うが……まあもしもの場合は私が火計の火炎を操り、勢いをコントロールすればいいか」

 実際の所、祈祷により東南の風が吹いたのかどうかは怪しいところである。どちらかといえば、『偶然』良いタイミングで風が吹いたと考えるほうが現実的であろう。

「風に関しては後で情報を収集しましょうか。未来の気象予測なら、風向きの予想など簡単なことですわ」
「頼む。後は……火計自体は孫権軍の周瑜や黄蓋らに任せれば良いな。ああ、その前に『10万本の矢』を得る必要があったか」
「あら、それは一体?」
「周瑜の策謀の一つだが……まあ、これはご先祖がうまくやってくれるだろう」




 孔明は劉備の元へ戻ると、会合の結果を報告。

 その後孫権・劉備の連合軍が組まれる。

 そして数日後。

 長江中流の『赤壁』にて、川を挟み退治する二つの軍勢がそこにあった。

 三国の歴史上一番の山場とも言われる『赤壁の戦い』が、今まさに始まろうとしていた。