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年忘れ恋活祭2022 ~絆~

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年忘れ恋活祭2022 ~絆~
年忘れ恋活祭2022 ~絆~ 年忘れ恋活祭2022 ~絆~

リアクション

 中央広場。

「賑やかだねぇ」
「そうですね」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)クナイ・アヤシ(くない・あやし)はデートにと恋活祭に来ていた。二人共ラフな格好をしていた。北都は紫のハイネックのフリースに黒のコートと黒のチノパンに黒ブーツにクナイは青のセーターに白いコートと北都とは正反対の色合いの服装。
「まずはクレープでも食べようか」
「そうですね。北都は甘い物が大好きですものね」
 甘い物好きの北都のためと商店街のカップル割引を使うのが恥ずかしいというのがあってクレープ屋『天使の羽』へ向かう事にした。そして、別々の物を買って少しずつ交換し合いっこをする事に。
 北都はチョコアーモンドの生クリーム増を選び、クナイは味音痴のため北都が好きそうな物をという事で新商品のプチロールクレープ詰めを選んだ。ブルベリーやバナナなど様々な味がある。もちろん生クリーム増にして貰った。購入後、『天使の羽』オリジナルベルを貰ってクナイはとても喜んだ。
 ベンチに向かう道々、ベルを求める吹雪達に遭遇し、北都とクナイは素直にベルを渡し、北都は“幸せがありますように”と優しい言葉も添えた。北都は基本的に願うと幸せが逃げて行くからと思い、自分の幸せを願わないのだ。

 クレープを買った後、
「あ、これ美味しい」
 北都は近くのベンチに座るなりはむはむとがっつき生地からはみ出た生クリームが口元にちょろり。
 隣に座るクナイは北都の様子に微笑みをこぼした。出会った時に比べてたくさんの表情を見せるようになった北都に心から喜んでいた。
「クリーム、付いていますよ」
 クナイは北都に顔を寄せて生クリームをぺろりと舐めとった。
「……クナイ、そのクレープ、美味しそうだね」
 北都はクナイの突然の行動に何でもない風を装うとする頬も耳も真っ赤。
「どうぞ。いろんな味がありますよ。北都のために生クリームを増量して貰いました」
「ありがとう」
 クナイは全然口を付けていないクレープを北都に渡した。北都はブルーベリー味のクレープを口に放り込んだ。
「どうですか?」
「美味しいよ。それにすごいお得感。クナイも食べる?」
 味を訊ねるクナイに答えながら北都は容器を差し出した。
「いえ、全部食べていいですよ」
「じゃぁ、食べるね。ありがとう」
 クナイの言葉に北都はどんどん食べ進めていく。
「……」
 クナイは幸せそうに食べる北都の横顔を愛おしそうに見つめていた。
「クナイ?」
 視線に気付いた北都は手を止めた。
「美味しそうに食べる北都を隣で見る事が出来て幸せだなと」
「……それは僕もだよ。君とこうして過ごす事が出来て良かったよ」
 クナイと北都は笑顔で最愛の人が傍らにいる事を幸せに感じていた。
 夜景が見られる時間までたっぷりと楽しんでいた。

クレープ屋『天使の羽』。

「これが今年のとんかつ祭の新商品のクレープですか」
 フレンディスは苺のクレープを受け取りながらマーガレットに言った。
「とんかつ祭? 違うよ、こいかつ祭だよ。恋と幸せ溢れるお祭り。はい、恋人さんに渡している『天使の羽』オリジナルベルをどうぞ!」
 マーガレットがフレンディスの勘違いをツッコミつつ『天使の羽』オリジナルベルを渡そうとしたが、フレンディスはそれどころではなかった。
「……こい……かつ…さい……あ……私」
 自分の勘違いにようやく気付いたフレンディスは顔を真っ赤にして硬直してしまった。
「……フレイ、近くのベンチで一休みをするか」
 ベルクは二人分のベルを受け取り、フレンディスの腕を掴んでクレープ屋『天使の羽』を離れた。ベルクは行く前にアルクラントに断りを入れた。

 近くのベンチ。

「……マスター、私はてっきりとんかつ祭だと」
 フレンディスはしょんぼりと勘違いした事を口にする。
「……まぁ、気にするな。語感が似ているから勘違いしても仕方ねぇよ」
「本当に申し訳ありません」
 必死のフォローするベルクにフレンディスは伏し目がちにしょんぼりと謝った。自分の勘違いでベルクにも迷惑を掛けてしまったから。フレンディスの頭にあるのは祭りの勘違いだけで祭りが恋に関係する事は全く入っていないようだった。
「ほら、顔を上げろ。せっかくの祭りだ。クレープを食べたかったんだろう?」
 ベルクは必死に元気づける。せっかく楽しい日なのに。恋人がしょんぼりしているとつまらない。
「……はい。マスターと一緒に食べたかったです」
 フレンディスはまだ口を付けていない苺のクレープをじっと見つめた。
「だったら、食べようぜ」
 そう言ってベルクはぱくりとガレットを食べ始めた。
「……はい。マスター、ありがとうございます」
 フレンディスはじっと隣で食べているベルクを眺めていたが、ゆっくりと食べ始めた。
 フレンディスは苺のクレープを食べると少しだけ元気になった。
 この後、アルクラント達と合流して楽しんだり二人だけで楽しんだりとたっぷりと楽しんだ。
 二人だけの時に吹雪達にベルを狙われるもフレンディスは『野生の勘』で襲撃を知らせ『行動予測』を持つベルクが吹雪が動き出す前にいち早く『エンドレス・ナイトメア』で足止めをしてフレンディスを連れて無事逃げる事が出来た。

 商店街。

 斎賀 昌毅(さいが・まさき)マイア・コロチナ(まいあ・ころちな)に誘われて商店街を歩き回りながら祭りを楽しんでいた。後ろから阿頼耶 那由他(あらや・なゆた)キスクール・ドット・エクゼ(きすくーる・どっとえくぜ)が尾行していた。昌毅はその事に気付いているがあえて聞かないでマイアはカップルではないが割引してくれるという事でガンガン買い物に利用した。

「昌毅、楽しいですね」
 にこにことマイアは昌毅に言う。胸の内では去年の夏の花火大会から保留中の告白の答えが気になって仕方が無く今回は絶対に引き出してみせると意気込んでいる。しかし、いざとなると少々怖いので自分達が逃げ出さないようにと那由他とエクゼに尾行を頼んだのだ。
「……そうだな」
 うなずく昌毅も胸の内では告白の返事をどうするか苦悶中。
 二人共充実した日々にすっかり告白の事を忘れ無難に過ごして来たのだ。

「こんな事、那由他に言わせれば全くの杞憂なのだよ。こんなもの二人を見てればはハイかイエスかダーしかありえないのだよ。馬鹿馬鹿しいのだよ」
 那由他は新商品の苺のクレープを頬張りながら昌毅達のデートを尾行しながら呆れていた。
「まぁ、あたふたしている二人を撮っておくのは楽しいかもしれないし」
 那由他は通りかかった店でドリンクを購入し、がぶがぶと胃に流し込む。
「今日はちゃんと昌毅さんが答えるまで逃がさないの。那由他ちゃん、あんまり食べてばっかいないでちゃんと追跡するの」
 同じくマイアに任務を与えられたエクゼは飲食に忙しい那由他に少し呆れ、食べる事に夢中で道を外れる那由他の手を引っ張ってしみじみとする。
「ふふん、仕方ないなぁ、私が手を引いてあげるの。こうしていると私達も仲良しさんみたいだね。普段喧嘩ばっかだけど、それでも大好きだよ那由他ちゃん……話がずれたの」
 飲食に夢中の那由他は聞いていないが、近くにいた係員の耳にはしっかり入っていたらしく金銀の鈴を渡そうと現れた。
「やめて欲しいの。そういう意味ではないの」
 エクゼは不機嫌に係員を追い払い、尾行を続けた。

 商店街。

「…………」
 九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は露店に並ぶ商品に目を忙しく動かしていた。
「買いたい物は見つかったか?」
 長曽禰 広明(ながそね・ひろあき)が頃合いを見てローズに言葉をかけた。
「……すみません、このお店にもありませんでした。せっかく付き合って頂いたのに連れ回してばかりで」
 ローズは自分の買い物に嫌な顔一つせず付き合ってくれている長曽禰に謝った。
「いや、俺は俺で楽しんでるから気にするな。それより疲れただろう、何か食べて一息入れないか?」
 長曽禰はローズの気分転換になればと息抜きを提案した。
「……はい」
 ローズはこくりとうなずき、長曽禰の提案を受け入れた。
 近くのベンチを見つけるなり、長曽禰はローズに待っているように言って食べ物調達に行ってしまった。

「……はぁ、長曽禰さんに新しい手袋を贈りたかったのに」
 ローズはぼんやりとつぶやいた。シャンバラ教導団の大掃除に参加して長曽禰と手を重ねた時に作業用の手袋が少し油で汚れていた事を思い出し、新しい手袋を贈りたいと思ったのだ。これまでの感謝とお世話になるこれからへの挨拶にと。
 そうこうしているうちに二人分のクレープと飲み物を手に長曽禰が戻って来た。
「……ありがとうございます」
 礼を言ってプチロールクレープ詰めと飲み物を貰い、少し黙々と食べる。長曽禰は気遣ってか静かにしていた。
 長曽禰よりも飲食が早く終わったローズはぼんやりと周囲に目を向けていた。
 とその時、
「……あっ」
 少し離れた露店に並ぶ商品が目に付き、思わず声を上げた。
「どうした?」
 ガレットを食べていた長曽禰は急に大きな声を上げたローズに少し驚いた。
「すみません、少し席を外しますね」
 ローズは大声で驚かせた事を謝り、目的の商品を買うために立ち上がった。
「あぁ、買いたい物が見つかったんだな」
 長曽禰は事情を察し、目的の品へと直行するローズを見送った。戻って来る間に長曽禰も飲食を終えた。
「……お待たせしました」
 ローズは紙袋を片手に戻って来た。
「買う事が出来たみたいだな」
 長曽禰は明るい表情のローズに安心した。隣で落ち込んだ顔を見ているのは堪らないから。
「はい。長曽禰さん、今年は凄く楽しかったです。月冴祭に一緒に行ってくれたり、今日も買い物に付き合ってくれて、それに相談にも乗ってくれて本当にありがとうございました。出来れば、来年も色んなことを教えて頂けますか?」
 ローズは長曽禰にうなずいた後、今年の感謝、来年に向けての言葉と共に買ったばかりの贈り物を差し出した。
「……俺でいいならいつでも相談に乗ってやるさ」
 長曽禰はそう言って贈り物を受け取った。
「……」
 長曽禰は貰ったばかりの贈り物を開ける。
 中には、長曽禰が好みそうな派手ではない色合いの丈夫で暖かそうな作業用手袋が入っていた。気兼ねしないように価格もお手頃である。
 長曽禰は両手にはめて具合を確かめてみるとぴったりだった。
「……気に入りませんか?」
 ローズはゆっくりと手袋を外し、包みに戻している長曽禰に恐る恐る訊ねた。
「いや、気に入った。ありがとうな」
 長曽禰は嬉しそうに口の端を上げた。
「いえ、その良かったです」
 ローズはほっとしつつもなぜだか長曽禰の笑顔に胸の奥の方がドキドキしていた。