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【ダークサイズ】未来から来た青年

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【ダークサイズ】未来から来た青年

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 クロスの考察は大方合っていたことは、後々イコンが発掘されることによって分かるのだが、それに加えて推察されることがある。
 イレイザーの魂は、イコンのありかを知っていた。
 ということは、この遺跡がイレイザーによって滅ぼされる時、イレイザーとイコンの激闘が繰り広げられていたようなのだ。
 そして残念ながら、そのイコンはイレイザーによって撃墜され、遺跡に埋没する結果となった。
 ダークサイズとチームサンフラは、イレイザーの記憶の欠片が飛んでいった場所へと散っていく。
 光が飛んでいったのは全部で3か所。
 チームサンフラは、発掘まではダークサイズを手伝うという潜入作戦を続けるため、その一つである住宅地域へと向かった。
 コアあたりは、猛然とイコン発掘に取り掛かってゆく。
 向日葵は不思議そうに辺りを見渡した。

「あれ? こっちはダークサイズが来てないね……」
「イレイザーから発した光は三か所を示したんだろう? 発掘作業と言っても、大変だからな。
さすがに全てを同時進行でというわけにはいかないだろうな」

 と、涼介が分析して言った。
 ノーンがぴょんと跳ねながら、

「やったー。今のうちに早く見つけようよー」

 と、コアを追いかける。
 永谷もさすがにテンションが上がる。

「これはラッキーだな。ダークサイズより先にイコンを手に入れれば、彼らの力を削ぐ大きな布石になる」

 魔女っ子サンフラワーの初仕事が土いじりというのも地味な感じもするが、ともあれダークサイズに先手を打てるのはありがたい。
 が、そうは問屋がおろさない。

『ふっふっふっふ……』

 住宅地域の朽ちた石壁に隠れて、不気味な笑い声が響く。

「現れましたか……」

 ローザが周囲を警戒する。
 右前方にある壁から手が伸び、顔を半分だけ覗かせた人影が名乗った。

「あたしはDS5天王の一人、茅野 菫(ちの・すみれ)……!」

 と名乗る菫。
 また通りを挟んだ反対の岩壁から見えた顔は、

「私はDS5天王の一人、毒島大佐……!」

 と名乗った。

「な……何で顔半分しか出さないんだ……?」

 ひなげしが額に浮かんだ汗をぬぐった。
 ローザがひなげしの前に立って腕で制する。

「気をつけてください。罠を仕掛けているに違いありません」

 しかし菫はまたフフフと笑い、

「まさかー。罠なんかあるわけないじゃん。あんたたち手伝いに来たんでしょ? どうしてあたしたちが邪魔なんかすんのよ。
ほら、発掘作業するんでしょ? こっちにおいでよ」
「そうなのだ。こっちに来るのだ……」

 と二人で手招きして言うが、ますます怪しい。
 ひなげしはここは男らしく、拳を握って言う。

「お、俺達の足止めをしようったってそうはいかないぞ。だったら堂々と出てきたらどうだ!」
「そうね、じゃあ」

 と言いながら、菫と大佐は壁から出て来た。

「えっ、普通に出てくるなら何だったんだ今の!」
「そこまで言うなら教えてやろう……」

 大佐は菫の隣で胸を張り、

「意味など……ない!」
「な、なにいー! 5天王のくせになんて地味な登場の仕方なんだ!」
『ふふふふふ……』

 身体を電流が走るような衝撃のひなげし。
 そしてそれを含み笑いを込めて見返す菫と大佐。
 向日葵が前に出る。

「気をつけて! ひなげし君、ダークサイズの手口に引っかかっちゃダメだよ!」
「母さん!」
「ふふん、いつまでもそんな訳分かんない先方に引っ掛かる、魔女っ子サンフラワーちゃんじゃないんだからね!」

 菫がつまらなさそうに口をとがらせる。

「ちぇ、今日はいつもより頭が回るみたいだね……」

 魔法少女に進化した上に、ひなげしという守るものがあることが功を奏したようである。
 しかし、菫はそれほど気にもせず、

「ま、それは別にいいんだよ。局長が言ってた、向日葵の子供ってあんたね?」

 と、ひなげしを見た。
 ひなげしは警戒したまま、

「それがどうし……な! 局長から聞いたってどういうことだ!」
「筆頭株主なんだから、局と連絡取るのは当然じゃん? 向日葵あんた、そんなカッコじゃお腹のひなげしによくないんじゃないの?」

 ひなげしをスルーして、菫は向日葵のお腹をなでようとする。
 向日葵はお腹をかばい、

「だ、だからまだだってば!」
「そろそろ仕込んどかないとこっちのひなげしに間に合わないんじゃないの?」
「ひなげし君の前でそういうこと言わないでよ!」

 ゲブーの目が光る。

「だからおっぱい(向日葵)! ひなげしの存在が消えないように俺様がぎゃー!」

 吹き飛ぶゲブーを尻目に菫は、

「羨ましいわー。妊娠中はおっぱい大きくなるって言うしねー。羨ましいわー。ねえ、乳首張って辛いってホント?」
「触んないでよー!」
「ひなげし、ちょっと触ってみてよ」
「な、なんで俺に振るんだよ!」
「で? 父親って誰よ? あ、つまりあんたが体を許した人のことね」
「ちょっと、何よその言いなおし方!」

 向日葵の顔がみるみる赤くなり、ひなげしも母親のデリケートな話など聞きたくない。
 菫は口がにやりと上がりそうになるのを我慢しながら、

「今良い人いるってことでしょ? つまりこの人なら抱かれてもいいかなって思う人のことね」
「菫、実はな。ひなげしの母親は私の粘体のフラワシなのだよ」
「え、そうなの? ひなげし、スライムのハーフなの? あんた大佐の親戚にあたるの? 向日葵の中にスライムが入ったってこと? ねえ? そうなの? ねえ? 入ったの?」
「入ってないよ!」
「でもちょっとだけ入ったでしょ? よしんば入ってなくてもその後洗ってないでしょ?」
「ちょっとおおおお!」

 向日葵が菫をぽかぽか叩き始めた。
 ひなげしは顔を赤らめて目を逸らしている。

「……! しまった、そういうことなんですね……!」

 ひなげしの顔をみたローザが、慌てて【風銃エアリエル】と【魔銃ヘルハウンド】を抜いて、菫に向かって発砲した。
 瞬時に大佐が【烈風のフラワシ】で銃弾を弾き、菫を抱えてパッと後ろに飛び退いた。
 ローザは二人を追いながらさらに二丁拳銃で撃つが、大佐と菫はそのまま走り去ってしまった。

「ちょ、どうしたんです、ローザ殿。まだダークサイズとは協力しないといけないのに」

 小次郎が叫ぶが聞こえて、ローザは大佐を追うのをやめて戻ってきた。

「今のは彼らの攻撃だったのです。分断工作ですよ。見てください」

 見ると、向日葵とひなげしの間には微妙な気まずい雰囲気が漂っているのが分かる。

「母子をきまずくさせる精神攻撃か!」
「そ、そうだったんですかー……いつものことだから微笑ましく見ちゃってました……」
「慣れとは恐ろしいものだな……」

 今頃菫は、にやにやが止まらないに違いない。

「まぁ、サンフラちゃん、こんなところにいらしたのね」

 そこに、キャノン ネネ(きゃのん・ねね)が散歩がてらに通りかかって向日葵を見つけた。

「あ、キャノンネネ……」
「サンフラちゃん、ダメじゃありませんこと? 大事な体なのにそんな薄着で……お腹の子に触りますわ」
「だからまだだって……」

 ネネは向日葵のお腹を気にしながら、しきりに体を休めてはどうかと言っている。
 涼介はそれを見たあと、

「菫のやつ……変な情報ばらまいてるな……」

 と、菫の消えた方を見た。
 同時に、大人しくなったと思っていたララの目が光り、わざわざ【ペガサス:ヴァンドール】に跨る。

「君は……囚われの美少女戦士、セクスィーララ!」

 言うが早いか、ララはネネに【スペースセーラー服】を着せる。
 大人しく着せられるネネもネネだが、身長もありグラマラスな彼女がそれを着ると、胸元やら脇やら股下やらが教育上よろしくない。

「ララさん、これは何ですの?」
「君は正義の心を持ちながら、洗脳されて悪に身を寄せた美少女戦士だったのだ。だがもう大丈夫。
これから私と共に戦おう」
「まあ、そうでしたのね。でしたらサンフラちゃんとますます仲良くならなくては」

 リリがネコ耳をつけた頭をネネに向ける。

「……よいのか?」
「わたくしは楽しいことの味方なのですわ」

 ネネは大きな胸越しにリリを見下ろしてニコリと笑う。
 ユーワームーンこと結和が、ネネの身体を羨ましそうにネネを見ていると、

「あなたも美少女戦士ですのね?」
「ふぇ! は、はい。ゆ、ユーワームーンです……」
「まぁ可愛らしいですわ。ララさん、わたくし気に入りましてよ」

 何故かネネを味方に引き入れることに成功したチームサンフラは、ダークサイズ不在のまま発掘作業に突入した。