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白蛇の神様現る!?

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白蛇の神様現る!?

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第3章 決別

 エース達の活躍で蛇の神様を、ひとまず落ち着かせることに成功した中。
 白蛇たちの方では、不穏な動きが起きていた。
「フハハハッ! お前達、我らオリュンポスの怪人として働く気はないかね!」
 ドクター・ハデス(どくたー・はです)は高笑いをしながら、集まった全部の白蛇に勧誘する。
 白蛇たちはそんなドクターの言葉に振り向くこともせず、ほかの場所へ散ろうとする。
「興味ないぜ〜おとといきな〜」
「ふむ、わが部下たち怪人蛇男たちは上司に不満があるようだな!」
「だれも、部下になるなんて言ってないんだがな」
「ここはお前たちの上司としてひと肌脱ごうではないか……さあ、神奈!」
「わらわ!?」
 ドクターの隣で、奇稲田 神奈(くしなだ・かんな)は目を丸くして驚いた。
「そ、そもそも、わらわはハデス殿と初詣に――は、ハデス殿なにをするのじゃーっ!?」
 慌てて反論する神奈をハデスは巫女服の上から、無理やりロープでぐるぐる巻きにし身動きをとれないようにする。
 ハデスは身動きの取れない神奈を地面に座らせると、誇らかな顔で蛇達を見下ろした。
「ククク、神奈ではイマイチ色気に欠けるだろうが、こういうのが好みなやつも多いだろう。今、部下になれば神奈を好きにできる!」
「オオーッ!! 俺たちはあんたについていくぞー!」
 次々とドクターの仲間になると蛇達が声を上げる。
 不安そうにそれを見る神奈へと蛇達が次々と迫ってくる。
「な、なにをするつも――ちょっ! なっ、なかにはいるのではない!」
 神奈の首元から下腹部にかけてするりと蛇が入っていく。
「せっかく二人きりでじゃったのに……そ、そこは!! でっ出てくるのじゃ〜!! やっ、やっぱり動くななのじゃ!!」
 こそばゆさと何とも言えない気持ちから顔を真っ赤にしながら、神奈は暴れまわる。
 結果、部下になった蛇達をドクターは集め、次の作戦を言い渡した。
「さあ、お前たち。手始めにこの神社を、神様とやらを征服するのだ!」

「今日で白蛇一同、あんたの眷属をやめさせていただく!!」
「えっ、どういうことなのだよ?」
 神社を守るべきなのか、つぶすべきなのかまよっていた神様の前に。白蛇たちはずらりと並んでいた。
 白蛇達からはオリュンポスの下につくため、神には使えないと書かれた辞表を受け取っていた。
「わ、私との約束より大事なことだというのか!?」
「俺たちゃ、あんたのことをもう女王とは認めねえ。もうあんたの言うことは聞いてられないんでな」
「……勝手にするといいのだよ!!」
 こめかみうっすらと血管を浮かべ、神様は手に持っていた辞表を地面へとたたきつけた。
「というわけで、あんたをまずは倒して神社を乗っ取る!」
 蛇たちが一斉に怒号をあげながら神様へ向かって進んでくる。
 神様はそんな蛇たちを一瞥すると、手を上に上げた。

「ピー!!」
 が、突然の笛の音に全員が気を取られて、動きが止まった。
 巫女服姿になった騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が空からゆっくりと白蛇たちの前へと降りてくる。
「なんで、こんなことになってるの〜?」
「うっせい! お姉さん止めてくれるなや! 今、俺たちは一揆を起こそうとしてるんや!!」
 関西弁口調の蛇が勢いと怒りにまかせてしゃべる。
 詩穂は大きくため息をついた。
「で、何で一揆を起こそうとしてるのかな〜?」
「姉さんには関係ないやろ!!」
「んー、あなたたちが暴れることで迷惑を被るんだけどなー?」
「ぐっ……」
 詩穂は「貴賓への対応」でにこやかに笑うと、白蛇達は何も言い返せなくなった。
「せっかくです、お料理はいかがですか?」
 詩穂はどこからかお重箱とお酒を取り出すと、地面に広げた。
「うおおおおおおおおおっ!! なんだ姉ちゃんが作ったのか?」
「もちろん!」
 蛇達は一斉に、お重へと群がった。

「フフフフ、この先は生かせない」
「ふむ……邪魔しないでほしいのだよ! 私は今こいつらを……いや神社ごと抹消することに決めたのだよ」
 白蛇へと向かって雷を放とうとしていた神様の前にはセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)がマントを翻し立っていた。
「弱者は散るのみ……言葉通り闇へと散るがよい」
 鋭い目つきで神様をにらむと、セシルは絶対闇黒領域を展開させる。
 神様は身体から力が抜けるような脱力感に襲われ始めた。
「そこまでするなら……手加減はしないのだよ」
 空へ浮かび手を挙げると、次々とセシルへ向かって雷が降り注いでいく。
 絶対暗黒領域によって力の得たセシルにとってそれをよけることはたやすかった。
 そして、すばやく神様の懐に入ると地上へとたたき落とした。
「――むうっ!」
 地面には着地を出来た物の、土埃が神様の視界を覆ってしまう。
 目をつむり静かに神様は精神を集中させる。
「そこなのだよ!」
 神様は白い刃を作り出すと、土煙の向こう側へと降り投げた。
「ぐっ!」
 セシルの短い悲鳴が上がる。
 その悲鳴を聞き深い安堵のため息を神様はついた。
 土埃が次第に薄くなっていく中で、急激な疲れを感じ取った。
「隙有り……」
 神様は背後からの声に振り向くと、そこにはセシルが息を切らしながら背中に手を当てていた。
 土埃が完全に収まると、神様は足下から地面へと崩れ落ちる。
 セシルのエナジードレインによって精気を半分近く抜かれたせいだった。

「まだだ、まだやられないんだよっ!」
 刹那、白い光があたりを包み込み、思わずセシルは目をつむると、神様の姿は消えてしまっていた。
「ふっ、逃げられたか……」
「いやー、凄い悪役っぽいですね!」
 余裕の笑みを浮かべながら笑うセシルに詩穂は声をかけた。
「そちらはどうだった?」
「神楽を舞ってみたのですが、これがまたまた蛇さん達が興奮しちゃって」
 えへへと、意味ありげな笑いを詩穂はあげた。
「蛇さん達は、お汁粉に入れるなら粒あんとこしあん派どっちだあ! って言い争っていますよ」
「意味が分からないわ……」
「にしても、セシルさんって本業は悪役なんですね」
「いやあれは演技で――」
「またまたあー、素ですよね。わかっうわああっ、お、おちついてください!」
「次の相手はあなたね!!!」
 セシルは額にうっすらと血管を浮かべると、エンドレス・ナイトメアを詩穂に向けて放とうとする。
 しばし詩穂は、セシルから逃げることに必死になっていたのだった。