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2023春のSSシナリオ

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■2回目の誕生日

シャンバラ宮殿のアイシャ・シュヴァーラの自室にて。

騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、
ロイヤルガード兼アイシャのメイドとして、
アイシャの自室の掃除に訪れる。

「ねえ、アイシャちゃん。もうすぐ、誕生日だね」
詩穂は、アイシャの誕生日、
6月6日が、もうすぐ近づいていることを考える。
今は離れた場所にいる、大切な人を、慈しむように、語りかけながら。

「アイシャちゃんが祈りの間に入ってから、
もうすぐ、2回目の誕生日が来るね」

今年こそはお祝いしてあげたかったけど、
きっとまだ無理だろう。
そう思うと、詩穂は少し切なくなる。

「でも、さびしくないよ。
だって、詩穂とアイシャちゃんは、ここでつながってるから」

胸のブローチにふれながら、詩穂は、心臓のとくん、という音を聞く。

それが、女王騎士の誓いを秘めた、詩穂の想いである。





アイシャが、まだ、祈りをささげるようになる前のこと。

空京の町で、詩穂とアイシャは、
お忍びでウィンドウショッピングに出かけたことがある。

アイシャの変装は、詩穂が手伝い、一見して、女王とはわからないようになった。

「買い物もしたいけど、お店の人にばれるかもしれないから、見るだけにしようね」
「そうですね。でも、こうして、詩穂と街を歩けるだけでも楽しいです」
ふふ、と、少女2人は笑い合う。

「あ、ほら、見て、アイシャちゃん!」
ふと、前を向いて、
詩穂がアイシャの手を取って駆け出す。

ショッピングモールの真ん中の広場の噴水から、
水が噴き上がり、虹がかかったところだった。

「わあ……」
アイシャが感嘆の声をもらす。

しかし、しばらくすると、噴水の虹は消えてしまった。

「なんだか、はかないですね。綺麗なものには終わりがあるのかしら」
「うん。でも、終わらないものもあるよ」
詩穂が、残念そうにするアイシャにそっとささやく。

「詩穂の、アイシャちゃんへの気持ち、二人の気持ちだけは、
ずっと、変わらないよ。これからも」

「ふふ、ありがとう、詩穂」
「こちらこそ」
照れたように笑うアイシャに、詩穂も笑いかけたのだった。





再び、シャンバラ宮殿。

「ねえ、だから、アイシャちゃん」

詩穂が、そっとアイシャに語りかける。

「たとえ、救わなきゃいけないのが、世界そのものだったとしても。
それでも、詩穂はがんばれるし、
アイシャちゃんもきっとやり遂げられるって信じてる。
だから、直接、お祝いできなかったお誕生日の分も。
戻ってきたら、たくさん、お祝いしようね」

そう言って、詩穂は、祈りをささげる。
ともに、世界のために、祈りをささげている、大切な人のために。