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第6章 盆に踊りて縁に親しむ3





各々が開かれた縁日で楽しむ一方、
盆踊り会場は、まだ踊り開始の時間ではなかったために人通りが少なかった。





カラン、コロン。カラン、コロン。





ゆっくりながらも、その会場に向かって歩く音。





カラン、コロン。 カラン、コロン。





「ははっ、やっぱりこういう格好には慣れてなかったか」
「そうよ! 確かに素敵な格好だけど……やっぱり慣れてないとね」
「すぐになれるさ」


そっと差し出された手。


「さぁフリューネ。 宜しければお手をどうぞ?」
「……今回はしょうがないわね」





カランコロン。 カランコロン。





レン・オズワルド(れん・おずわるど)に支えられながら歩くフリューネ。


リネンの帰りをホテルで待っていたが、今回のイベントにはレンからも誘われていた彼女。
結局レンが約束の時間にホテルに迎えに来たが、リネンが戻ってこなかったので、
彼と共に夜の雅へと繰り出していた。 ホテルで着付けた貸浴衣。 
普段とかっての違う服装と、下駄という初めての履物に歩くのも精一杯だ。


「これでも、下駄の高さは結構低めなんだけどな」
「どうせ私はうまく歩けないわよ」
「悪い悪い。 そうすねるなよ」
「ふん」
「ふっ…さ、着いたぞ」
「ここは?」
「盆踊りって言う地球の踊りをする会場さ。 地球というか日本特有のものだが」
「盆踊り…?」
「ああ。 あの中心にあるやつが櫓。 あの上で演奏される音楽に合わせて皆で輪になって踊るんだ」
「へぇ…やぐらって結構大きいのね」
「元々人の身長よりも高く作られてるもんだが…この大きさは特別だな。 そこは薔薇学のなせる技だろう」
「でも私どうやって踊るか知らないわよ?」
「まぁそれは……ほら、あれを見てみろ」





「なんじゃこの格好は?」
「何って浴衣でございますわ。 アーデルハイト様のために私頑張って選んだんです!」


そこにいたのは、雅な浴衣に身を包んだアーデルハイト。
ただ他の客とは全体的に違っているのは金魚リボン帯という目立つワンポイントのせいだろう。


「地球じゃと、祭りには随分子供っぽい服を着るのじゃな」
「≪アーデルハイト様がより幼な…ではなく、可愛く見えるように選んだ特注品ですもの、当然ですわ≫」
「それにしても望。 お前、私が会食しとる間に、勝手に仕事を終わらせおったな?」
「あら、【存じ上げません】わ」
「まったくお前さんは…」
「そんな事よりも、このひと時を楽しむと致しましょう」
「うむ。 ありがとうな、望」
「………はい!」


そうしてアーデルハイトに盆踊りを教える望。
櫓を挟んだ向かい側にはアゾートが同じように弾から踊り方を教わっている。


「踊り?」
「そうそう、ちょっとやってみようよっ」


浴衣の少女がイルミンの制服を着た少女に踊りを教え、それをまた浴衣の少女が見て楽しむ。
なんんとも見目麗しい光景ではあるが、1人は男の子である。


弾は、普段賢くて何でもできるアーゾトに何かを教えられることが嬉しかった。





「って感じでまだ時間があるからみんな練習してる。 慣れない服で怪我をしても大変だ。 一緒に練習しておかないか?」
「よ、宜しくお願いします……」
「素直で結構、ってか」