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流せ! そうめんとか!

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流せ! そうめんとか!

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6.オチる

「ほう、『罪流し懺悔』……滝に生贄を流すことで、神々に祈りを届けるという、あの伝統ある儀式が行われていようとは……」
 既に元の流しそうめんから大きく逸脱した設定を呟きながら、罪流しを見守っている一人の男がいた。
「我々も負けてはいられない。神に生贄を捧げるとしよう!」
 高笑いと共に会場に会わられたのは……
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、 天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)!」
「ちょ、ちょっと、兄さん! なんですか生贄って!」
「ハデス先生っ、なんですかこのヘビは……」
 滝の上流に立つ彼の足元には、水着のままヘビに拘束された少女がふたり。
 憐れ高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)ペルセポネ・エレウシス(ぺるせぽね・えれうしす)は、今にも流されようとしていた。
「っていうか、いつも悪いことをしていて懺悔しなきゃいけないのは、兄さんじゃないですかっ! 私やペルセポネちゃんが流されて、どうするんですかっ!」
「いや、お前らでなければ駄目なのだ」
「ど、どうして……」
 ふいに真面目な表情になったハデスに、咲耶は思わず胸を高鳴らせ問う。
「それはもちろん……読者サービスのため!」
 それ重要!
「ていっ!」
「いやぁああああ! ヘビが、水着の中にいっ!」
「きゃぁああああ! ぬ、ぬるぬるしてるうっ!」
 ハデスによって無慈悲にも流されていく二人。
「ただ流れるだけでは、生贄の効果が足りんな…… いでよ、我が発明品よ!」
「命令ヲ確認シマシタ。アナタノ罪ヲ判定シマス」
 滝壺の中から現れたのは、ハデスの 発明品(はですの・はつめいひん)
 咲耶とペルセポネを見つめ、目を光らせる。
「判定…ぎるてぃデス」
「どういう基準!?」
「嫌な予感しかしませんーっ!」
 蠢く白くて細いヘビの中に、黒くて太い物が加わった。
 発明品から伸びる触手だ。
「世界征服活動ノ罪状ニヨリ……有罪度、まっくす!」
「だからそれは兄さんの罪ですー! ふぁあっ!」
「ああっ、ひゃん、そんなところ、掴まないで……っ!」
 増量された触手によっていたぶられる咲耶とペルセポネ。
 だが、二人を攻めたてている発明品の様子がおかしい。
「有罪度せんさーニ異常ガ発生シマシタ。異常ガ発生シマシタ」
「ああっ、またですかー」
「んんっ、う、うごかないでください……っ」
 案の定、暴走を始める発明品。
 ぷしゅーぷしゅーと煙を吐き、触手を蠢かしながら走り出す。
 その触手の先には、拘束されたままの朔夜とペルセポネ。
 このままでは、見学している人たちも危ない!
「サンダぁああああ……」
「え?」
「ちょっと……」
 見学者の中から、声が響いた。
「ブラストぉっ!!」
「いやぁあああ!?」
「ぷきゃあああ!!」
「……機能ヲ、停止シマス……」
 突如発せられた雷撃により、発明品はその動きを止めた。
 巻き添えを喰らった朔夜とペルセポネも動かなくなったのだが。
「一寸は手加減しろ」
「や。ついねー、つい」
 電撃の主は、ルカルカだった。
 朔夜とペルセポネを救出するダリルに窘められ、ぺろりと舌を出す。
「でもね、おかげでヘビを入れた犯人、分かったわ。いるんでしょ、ラフィルド!」
「……しびびびび……」
 ルカルカに呼ばれ、電撃を喰らって半分目を回したラフィルドが滝の中から浮かび上がる。
「さっき見てたよ。ヘビ持ってたの」
「みんな、きもちよくなるとおもって……」
「めっ」
 ルカルカはラフィルドのおでこをピン、とはじく。
「あのね。普通の人は水中で動けなくなったら息が出来なくなって危ないんだよ」
「……ごめんなさい」
「うん。分かってくれればいいの! 好意は嬉しかったからね」
 俯いたラフィルドを、ルカルカは抱きしめた。
「んじゃ、反省の意味も込めて一緒に流れよっか……ん?」

「うむむむむ……こんな事で停止するとは情けない!」
 安全圏から状況の推移を確認していたハデスは歯ぎしりする。
「だが、こんなこともあろうかと第2、第3の手は用意してある! さあ諸君、遠慮なく飛び込むのだ!」
「誰がやるかー!」
 こうして、罪流し大会は終了となった。

「……勿体ないな」
 ルカルカの電撃でやられ、ぷかぷかと浮かんだ大量のヘビを眺め、ダリルは呟く。
「ラフィルド、このヘビは食べられるのか?」
「んー。いけるよ?」
「ふむ……ルカには内緒にしておけ」
 それだけ言うと、ダリルは腕をまくった。

   ◇◇◇

「ふぅ、いっぱいいただきました」
「ふふふ……フレンディス、なかなかやるじゃない」
「セレンさんこそ。それにしても、動いたらなんだかお腹が空いてきましたね」
「奇遇ね。あたしもよ」
「更に!?」
 滝の下でさんざんそうめんを食べまくっていたフレンディスとセレンフィリティの言葉に、見守っていたベルクはあんぐりと口を開ける。
 見ると、罪流しが終わった面々もお腹を空かせたのか流しそうめん会場へと集まってきていた。
「ラーメン! 疲れた時には、ラーメンが一番だよ!」
 上流でラーメンを流していた結が降りてきて、通常のラーメンを饗するため準備を始めていた。
 ちなみにエースはメシエと散歩に出かけ、そのまま戻ってこなかった。
「良かったら、これもどうだ?」
 ぷーんと、香ばしい匂いが漂ってきた。
「この匂いは……蒲焼!」
 サニーが鼻をひくつかせる。
「流れて冷えた体には温かいものがいいだろう」
 ダリルが皿に乗せた大量の蒲焼を差し出した。
「すごーい、何時の間に…… なんのお肉?」
「……ウェザーの提供だ」
「そうだっけ?」
 しれっと答えるダリルにサニーが首を傾げる。
「よーし、まだまだ食べるわよ!」
「私もです!」
「ラーメンもよろしくっ!」
 高くなった青空に、元気な声が響いた。


担当マスターより

▼担当マスター

こみか

▼マスターコメント

 こんにちは、ご無沙汰しておりましてすいません……
 流せ! そうめんとか! を担当させていただきました、最近妙に流しそうめんにはまっていた、こみか、と申します。
 久しぶりのシナリオに、皆さんそれぞれ趣向を凝らして遊びに来てくださってどうもありがとうございました。
 食べる方流される方みんな楽しそうで、マスタリングしていて「ああ、この感覚久しぶりだなぁ」ととても楽しかったです。
 相変わらず、はじけてらっしゃる……!
 また今回、前回から長く時間が空いたため、お叱りを受けるのではないかとびくびくしていたのですが……皆さんとても優しいおかえりの言葉をかけてくださって、本当にありがとうございました。
 なんとも……胸が温かくなりました。ありがとうございます。

 期間が開いた理由のひとつに、小説の出版がありました。
 以前にも書いたのですが、私の書いたボーイズラブ小説が、『upppiボーイズラブコンテスト」で賞をいただき、電子書籍で出版されました!
 『ゼロコンマ ―狐の舌が徴した左手、兄の指が刻した背中―』
 電子貸本Renta!と電子書店パピレスにて、販売中ですのでこちらも是非、よろしくお願いします!
 リアクションとはまた一味違った(でもえろ多めの……)和風ファンタジーボーイズラブです。

 それでは、秋の一日楽しんでいただけましたら幸いです。