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リアクション
『エントリーナンバー14、ジュニアアイドルとして参戦します……ふたりはロリペタ!!』
アリッサ・ブランド(ありっさ・ぶらんど)とジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)がステージ上に駆けていくと、それだけで「かわいいーっ!!」と声が上がる。
「みなさ〜ん、元気ですか〜♪ 元気があれば、なんでもできる! いつも元気な、ジーナでーっす♪」
「にへへ〜☆ ジーナちゃんと一緒にいつでも元気! 歌って踊れて鎧にもなれちゃう可愛いマジカルアーマーアリッサちゃんの登場だよ〜☆ おねーさまの応援に応えて頑張っちゃうよー」
ジーナとアリッサの声に、観客席からは再び「かわいいーーーっ!!!」と声が上がった。
「あの、樹さん……出場する皆様の気迫が凄いですね……。この空気、”あいどる”の世界とは激しい戦いの場なのでしょうか」
舞台袖から、控え室の方をちらちらと眺めながら、フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)が呟いた。
「あながち間違いではないな」
緒方 樹(おがた・いつき)はジーナの姿を眺めつつ、フレンディスの言葉に応える。
「……ジーナは全くもって、このような事が大好きなようだな。忍び娘、今回は貴殿の魔鎧娘共々、無理を聞いて貰ってすまない」
「いえ、こちらこそかような戦いの世界があると知ることもできましたし」
「まあ、気に病まないのであれば良いのだがな」
苦笑いする樹に、フレンディスはステージ上のアリッサとジーナを見る。
「私は目立つ行為は苦手故参戦出来ませぬが……アリッサちゃん達ならきっと大丈夫ですよね。私、お二人が優勝するよう精一杯応援致しますね」
ステージでは、エンジュがジーナたちにインタビュー中だ。
『このステージで、目指すことはありますか?』
「小さなお子様からおっきなお友達まで、観客のみなさんに幸せをお届けしやがりますっ!」
ジーナが元気に答え、観客席が盛り上がる。
「アリッサちゃん、今日はみんなにワタシ達の歌を聞きながら踊って貰いませんか?」
「いいですね〜! そうしましょー☆」
「踊り方なら、ワタシが教えますですっ!」
アリッサとジーナが観客席に近寄って行く。
「サビの部分の振り付け、皆さんも是非覚えてくださいね〜☆」
「まずは両手を猫の手にして、右から2回ずつにゃんにゃん、にゃんにゃんって動かします」
「恥ずかしがらずに、皆さんご一緒に、ですよー」
ジーナが手を動かしてみせると、観客席でも同じように皆が手を動かす。
「次です! 『うーにゃっ!』って言うところでは、両手を上に上げてばんざーい、ですよ!」
観客席がバラバラと万歳をする。
「それでは一回、通してみますね。にゃんにゃん、にゃんにゃん、うーにゃっ!」
「にゃんにゃん、にゃんにゃん、うーにゃっ!」
ジーナとアリッサの振りに合わせて、観客たちも踊る。
「みなさん、覚えました? じゃ、歌いますね……『猫の手貸し出し中』」
猫も杓子も忙しい季節
猫にかつぶしそれどーなのよ
猫じゃらしよりワタシ達でしょ
猫の手貸します今日だけは
「さっきの振り付け行きますよー☆」
サビ前になり、アリッサが観客席に向かって叫ぶ。
にゃんにゃん、にゃんにゃん、うーにゃっ!
にゃんにゃん、にゃんにゃん、うーにゃっ!
にゃんにゃん、にゃんにゃん、うーにゃっ!
にゃんにゃん、にゃんにゃん、うーにゃっ!
ジーナは楽しそうにダンスをしながら、観客に笑顔を振りまく。観客もすっかり電波ソングの虜だ。
ジーナのダンスと歌に合わせるように動くアリッサは、幼女の可愛らしさを最大限引き出すように小股で可愛らしくステージ上を駆け回る。
「にゃは、みんなで歌って踊ると楽しいですね♪」
間奏に入ると、ジーナが満面の笑みではしゃぐ。
「皆さん、もうひとついきますよ! 両手を胸の前で回して〜ぐるぐるぐる、にゃー! ぐるぐるぐる、にゃー!」
ぐるぐるぐる、にゃー! と、観客席からも声が上がる。
「胸がないと回しやすいですね〜☆」
アリッサがにこにこと笑った瞬間、ジーナが殺気を纏った。
「アリッサちゃん? ソレは禁句でございやがりますよ……」
「はっ……!?」
アリッサがつるぺたに言及してしまったことに気付いた時には、時すでに遅し。
「乙女の嗜み、ハリセンあたぁあっく!」
ジーナのハリセンがスパーンっと入り、舞台袖まで吹っ飛ばされるアリッサ。
「ふー、乙女に胸の話は禁句なのです!」
ジーナが一仕事終えたような顔で舞台袖を見る。観客はそれもパフォーマンスの一種として楽しんでいる。
樹とフレンディスも、ジーナとアリッサのやりとりを楽しそうに見ていた。
もうすぐ、間奏が終わって二番に差し掛かりそうだ。
「しかし何だ、この曲は子供向けだけあって思わず歌って踊りたくなるな」
樹は音楽に合わせて体を動かしながら、ワクワクしたようにステージを見ている。
「皆が同じ動きをしていると、釣られてしまうのでしょうか……」
フレンディスの感想は相変わらずマイペースなものだが、樹と同じく楽しそうであることには違いない。
「どれ、ちょっと加勢してみるか……」
そう言うなり、どこかから拡声器を持ち出す樹。に、目敏く気付くジーナ。
「おや? 樹様どうされました……っ! そ、その拡声器は?!」
舞台袖の樹を見て愕然とするジーナ。樹に歌わせてしまってはならない。会場が怪音波に包まれてしまうを『捕鯨〜♪』なリサイタル状態になってしまう。
そこに、アリッサがフラフラとステージの中央に戻ってきた。
「アリッサちゃ〜ん、逃げて〜!!!」
「……ふぇ?」
ジーナは一足早く、樹がいる方向とは逆の舞台袖へと走り出した。
何が起きたのか理解できていないアリッサが周囲を見回す。と同時に、大きく息を吸い込む樹の姿がアリッサの目に映った。
猫の首に鈴を付けても
猫の子一匹捕まりゃしない
猫が寝込んだそれアナコンダ
猫の手貸します今日だって
「にゃんにゃん、にゃんにゃん、うーにゃっ!」
会場に樹の歌声が響き渡る。というよりも、会場を樹の歌声が襲う。
突然のことに、審査員たちは目を白黒させていた。
「うむ、やはり歌うというのはとても清々しい物だな!」
二番を歌い終えた樹は、満足そうな笑みを浮かべて、キョロキョロと辺りを見回した。
「……おや? 忍び娘、魔鎧娘、ジーナ……どうしたんだ?」
「私は何ともありませぬが……」
フレンディスも一緒になって周囲を見回すと、アリッサが目を回して倒れており、ジーナが縮こまって耳を塞いでいる。
歌ってすっきりした樹と、マイペースに色々と勘違いしているフレンディスは、きょとんとして周囲を眺めていた。
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