校長室
ブラウニー達のサンタクロース業2023
リアクション公開中!
夜、ヴァイシャリーの街、水路。 雪降る中、クリスマスで賑わう町中を行くゴンドラがあった。そして、よく見ると遠野 歌菜(とおの・かな)と月崎 羽純(つきざき・はすみ)の夫婦が乗っていた。 「まさか以前前申し込んでた古城でのスペシャルクリスマスディナーのペアチケットが当たるなんて今でも信じられないよ。これって絶対にブラウニーさんのおかげだね」 歌菜はペアチケットを取り出し、目的地に着く前からすでにウキウキ。ついでにハロウィンで新米サンタのブラウニー達との出来事を思い出していた。 「そうだな。それより歌菜、あんまりはしゃぐとゴンドラから落ちるから気を付けろ」 羽純も同じくブラウニーのおかげだと感じつつも隣に座る歌菜のはしゃぎぶりを心配する。何せ今自分達は水上にいる上に冬だ。落ちたりでもしたらディナーどころではない。 「だって、嬉しくて。しかもクリスマスだよ。じゃなくて雪が降ってるからホワイトクリスマスかな。こんな日に羽純くんとディナーなんて幸せだよ」 歌菜は雪降る空を仰いだかと思ったら羽純の腕に抱き付き、最高の笑顔で夫を見上げた。 「……俺も幸せだ」 羽純は妻の幸せ全開の笑顔にわずかに口元をゆるめた。 ゴンドラは幸せな夫婦を乗せて水上をゆるりと行く。 途中、橋の下を通過しようとした時、 「羽純くん、あれ」 歌菜がそう言って橋の上を指さした。そこには首切れ馬を連れた男女の幼い六人の子供達がいた。 「あぁ。あれはハロウィンで会った七人童子だな」 羽純はすぐに歌菜が何を発見したのか知った。一人行方不明になりその仲間をあちこち捜し回っている妖怪だと。 ゴンドリエーレ(船頭)に頼んで停止して貰ってから 「みんな、ブラウニーさん達から再会するきっかけは貰えた?」 歌菜は七人童子に声をかけた。 「!!」 あらぬ方向から声をかけられた童子は少しビックリするも相手が誰なのか確認した途端、 「あぁ。お姉さん達はハロウィンの」 見覚えのある顔に表情を和らげた。 「それで仲間と再会する手掛かりは貰えたのか?」 今度は羽純が歌菜の質問を繰り返した。 「うん。貰ったよ」 「あの子を最後に見かけた人がここにいてどこで見かけたのか聞いた所なんだ」 「でも見かけてからたくさん時間が経っているからいないかもしれないって」 童子は笑顔になったり憂い顔になったり忙しい。 「奇跡を貰えたんだね。大丈夫、きっと見つかるよ!!」 歌菜は童子が奇跡を貰えた事にほっとすると共に思いっきり励ました。 「ありがとう、お姉さん」 童子の一人が礼を言った。 「もしいなくとも悲しまないようにな。必ず何かしら手掛かりは残っているはずだ」 羽純もまた歌菜とは違う言葉で彼らを励ました。 「うん。お兄さんもありがとう」 「あたし達、もう行くね」 「お姉さん達も楽しいクリスマスを楽しんでね」 七人童子は馬を引き連れ、去った。 「……早く見つかるといいね」 「そうだな」 歌菜と羽純は静かに童子を見送っていた。 この後、ゴンドラは再び水飛沫を上げて進み、無事に古城専用の桟橋に到着した。 古城専用桟橋。 「わぁ、とっても素敵なお城!」 ゴンドラから下りるなり歌菜は目の前に建つ城を見上げて感動。けばけばしい華やかさではなく長い時を経た威厳と培われた上品さを兼ね備えた城だった。 「……」 羽純は城ではなくそれを目を輝かせながら見上げる歌菜の姿を見て満足そうであった。 ともかく、二人はディナーを楽しむべく城の中へ入った。 入城すると歌菜のテンションを上げるさらなるイベントが待っていた。 「衣装の貸し出しがあるよ。ねぇ、羽純くんお願い! お姫様と王子様になろう」 衣装貸し出しサービスを知るなり歌菜は両手を合わせて羽純に必死にお願い。 「今日はクリスマスだしな。分かった」 必死にお願いされては断れるはずもなく羽純はあっさり承諾。 「ありがとう! それじゃ、また後でね」 羽純の了解を得るなり歌菜は羽でも生えているかのように飛ぶように行ってしまった。 「……なかなかいい風景だな」 衣装チェンジを終えた羽純が現れた。歌菜はまだ衣装チェンジ中。 妻が来るまで近くの窓から見える絶景に目を向けながらのんびりと待つ事にした。 少しして 「待たせちゃってごめんね、羽純くん」 美しいドレスに身を包んだ幸せいっぱいの歌菜が現れた。 「ねぇ、どうかな? このドレス今日完成したばかりの新作なんだって」 歌菜はくるりとその場で一回転して改めてお披露目する。程よい飾りで彩られた上品なドレスだ。 「……綺麗だ。とても似合っている」 羽純はあまりに綺麗な歌菜に目のやり場に困つつも褒める事は忘れない。 「ありがとう! 羽純くんもすっごく格好良いよ。こんな素敵な羽純くんが見られるなんて生きてて良かった!」 歌菜は改めて洗練された王子様衣装を纏った羽純を上から下に見ては幸せ発言を爆発させる。 「それは少し大袈裟だ」 そう答えながら羽純は歌菜に組んだ腕を差し出した。 「大袈裟じゃないよ。むしろ、言い足りないくらい♪」 歌菜は差し出された腕にそっと腕を絡め、にっこり。 そのまま羽純のエスコートで豪華な料理が並ぶテーブルへ。 そして、美味しく料理を頂く前に 「羽純くん、素敵なクリスマスに乾杯!」 「あぁ、乾杯!」 歌菜と羽純はワインで乾杯した。歌菜は幸せのあまり顔がにやけていた。 ワインを一口飲んでから料理をデザートまで美味しく頂いた。 食後にさらなる豪華なサービスとして部屋に様々な楽器を抱えたスタッフ達が登場し、しっとりとした音楽を奏で始めた。 「うわぁ、生演奏だよ。素敵だね」 歌菜はまさかの生演奏に大感激。 羽純はそんな歌菜に近付き、 「歌菜」 声をかけつつ手を差し出した。 「……羽純くん」 歌菜は満面な笑みで差し出された手を見ていたが、すぐに手を取った。 静かな音楽とシャンデリアの幻想的な光に包まれ羽純は歌菜を優しくリードしながら踊った。見ているだけで幸せが伝染しそうなワルツを。 「……(羽純くんとこうしていられる私って世界で一番幸せ者だなぁ)」 「……(歌菜とこんなクリスマスを過ごせるとは)」 踊る二人は互いの目に互いを映し、こうして手を取り同じ時間を過ごしている事がいかに幸せかを感じていた。そしてそれは口にしなくとも互いに感じていると知っていた。 しばらく後、ダンスタイムを堪能した二人は羽純の提案で火照った身体を冷ますためテラスにいた。 「雪が降って寒いが、今は心地良いな」 「夜景も綺麗だね。雪が降っているから余計に」 改めて夜が深まった外の景色を楽しむ羽純と歌菜。 「……」 羽純はちらりと景色を眺める妻の横顔を感慨深げに見ていたかと思ったら 「……歌菜」 そっと妻の名を口にし、抱き寄せた。 「……羽純くん」 歌菜は顔を上げた。 そして、夫婦は唇を重ねた。 また一つ、夫婦に幸せなクリスマスの思い出が出来た。 新米サンタクロース達は無事にパラミタの人々に“奇跡”を届け終える事が出来た。 「人々の幸せな顔はこちらも幸せになるの」 「疲れも吹っ飛ぶな。これからも腕を磨いて行かねばな」 ザッハとドゥルスはクリスマスを過ごす人々の幸せそうな顔に自分達も満たされ、疲れも吹っ飛んだ。そして、もっと腕を磨き、皆に幸せを運ぶ事を誓うのだった。
▼担当マスター
夜月天音
▼マスターコメント
参加者の皆様お疲れ様でした。そしてありがとうございました。 遅れましたが、皆様、メリークリスマスです。 クリスマスを存分に過ごして頂き、ブラウニー達もサンタクロース冥利に尽きます。 それではまた別のシナリオでお会いする機会がありましたらよろしくお願いします。 最後に少しでも本リアクションでクリスマス気分を味わって頂ければ幸いです。