百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

~ガルディア・アフター~ 石の魔物と首なし騎士の猛攻

リアクション公開中!

~ガルディア・アフター~ 石の魔物と首なし騎士の猛攻

リアクション



四章「影の騎士」


〜遺跡最奥部〜

「ぐぁぁあああああーーーッ!」
 巨大な影の腕がイディを殴り飛ばし、彼の鎧を砕きながら壁面へと叩きつける。ダメ押しとばかりに、巨大な腕はイディを追撃。壁にめりこむほどに殴り付けられたイディは口から血を吹き出した。
「がぅ、はぁっ!」
「隊長を離せぇぇぇーーーッ!」
「待てッ! ラージュ!! むやみに突っ込むな!」
 ブリックの言葉など耳に入らないラージュはいまだイディを壁に縫い止めている巨大な影の腕に向かって魔術を放った。
 炸裂した爆炎が腕の一部をかき消すように吹き飛ばし、イディを解放する。
 が、影の標的はラージュに変わったらしく包み込むように広がった影がラージュを捕らえた。
「ふぁっ! やっ、だめっ……くる、なぁ……んんっ、うくっ……ぁあ……」
 黒い影に絡め取られたラージュはびくんびくんと脈打つように痙攣する。その瞳からは精気が消えていき、次第に光を失っていった。
「くそっ! そいつを離せ、この化けもんがぁぁーーッ!!」
 跳躍し、斬り掛かったブリックの腹部を影の槍が貫いた。そのまま、投げ捨てるかのように地面へと叩きつける。
「がはぁっ!! ぐ、う、ち……くしょう……」
「ぁ……ひっ……う……ぁぁ……」
 ぴくぴくと小刻みに痙攣し、既に喋る気力すら失ったラージュを地面へと落とすと、影は次の標的を探す。
「せやぁぁぁぁぁーーーッ!」
 デュラハンの面影を残している部分に対し匿名 某(とくな・なにがし)は急襲をかけた。
 一気に距離を詰めた彼は刃を振り、影とデュラハンの継ぎ目を狙った。影は刃に縦一文字に引き裂かれ一時は分断されたものの、またすぐにくっついてしまった。
(やはり、そう簡単にいかないか!)
 シェードの剣と影の槍による猛反撃をなんとか全て捌ききると彼は跳躍し、距離を取る。
「再生力を上回る強力な攻撃で一気に仕留めるしかないか。出し惜しみしてる場合じゃない、皆っやるぞ!」
 某の合図でそれぞれが予め決めておいた作戦通りに動き始める。
「その言葉を待ってたぜェ! 勝負だぁぁぁぁーー! 化物やろぉぉーーーーッ!!」
 聖騎士槍グランツを構え、大谷地 康之(おおやち・やすゆき)はシェードに突撃した。いくつもの影の槍が彼を掠めるがその痛みは無視して彼は速度を上げていく。
「うおおぉぉぉぉおおおーーーッ」
 目にも止まらぬ速度で彼はシェードと打ち合う。一瞬でも気を抜けば斬り刻まれてしまうかのような高速の打ち合いだった。
「ちょっと重いですけど、我慢してくださいね!!」
 結崎 綾耶(ゆうざき・あや)が両の手を合わせ、シェード周辺の重力を操った。打ち合っている康之もろとも潰れそうなぐらいの加重が襲い掛かる。
 間髪入れずに次の手を発動に入る。彼女が手を上空に振りかざすと冷たい冷気が身動きの取れないシェードの周りに発生した。
 振り下ろすと同時にシェードの身体の周囲を絶対零度の氷の壁が塞いだ。
「この時を逃さない、決めるッ!」
 事前に某に調律改造してもらった装備の力を解放、青い正常な光が武器を包み込みフェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)の手に確かな力を伝えていく。
 轟音と共に発射された青く輝く長大な光芒が氷の壁を吹き飛ばし、シェードの身体を貫く。
 腕や足などの装甲を吹き飛ばされ、くず折れる。先程の一撃で胴体部分に残る鎧の割れ目からシェードのコアが露出していた。
「さぁ……フィナーレだ」
 某は動きの鈍ったシェードに接近する。背中に突き刺さるフェイの視線に、言ってみたかっただけです、はい、と詫びを入れながら。
 シェードの前で武器を振り被ると、彼はヴィサルガ・イヴァを発動させる。腕輪状のそれは光の粒子となって拡散した。光の粒子の渦を纏った某はシェードに襲い掛かった。
「でやぁぁぁーーーーーッッ!!」
 彼の刃が振られる度にシェードの鎧は引き裂かれ、コアに傷が入っていく。その傷は大きくなり、シェードの反撃も激しさを増すが、頬が裂かれようが、腕を貫かれようが某は攻撃の手を緩めない。
 引いた方が負ける。それを十分に理解していたからであった。
「これで、しまいだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 傷だらけのシェードのコアに某は剣を突き立てる。コアを貫かれたシェードは周囲にとげの様に鋭い影の槍を放った。某はそれに貫かれるが剣を刺し込む手は止めない。
 声にならない悲鳴のような断末魔を上げ、ついにシェードのコアが砕け散る。コアを失ったシェードは霧散し、いくつか残った鎧の破片がごとりと床に落ちた。
 全身の力が抜ける様に某はその場に倒れ込む。
「はは……やった……あ、でも、限界……ははは、自分で、立てないや……」
 某の周りに仲間達が駆けより、傷だらけの彼を称賛した。