リアクション
キマクのチョココロネ 『迷子の御案内をお知らせします。アクアマリン様、お姉様がメリーゴーラウンドでお待ちです。至急……』 ここは、アトラスの傷跡に作られたアミューズメントパーク。魔威破魔 三二一(まいはま・みにい)が、恐竜騎士団をだまくらかして、いえ、協力を得て、宇宙港の修理にかこつけてなし崩しに作ってしまった遊園地なのでした。 「うわあああ、姉さんったら、いったい何を……」 遊園地のバレンタインイベントでウグイス嬢をやりに来ていたシャレード・ムーン(しゃれーど・むーん)の声に、アクアマリンが頭をかかえました。本当は、迷子になっているのは、姉のエメラルドの方です。 「やれやれ、だから、早く城に帰ればよかったものを」 はた迷惑なことだと、フードパークで昼食をとりながらオプシディアンが言いました。 「まあまあ、せっかくの長期休暇なんだから、いいじゃないか」 急ぐことはないと、ジェイドが苦笑します。 「とりあえず、迎えに行って参ります」 「ああ、頼むよ」 アラバスターに、ルビーが答えました。そのまま、アクアマリンを引きずって、アラバスターがエメラルドを迎えに行きます。 ★ ★ ★ 「楽しかったですねー」 遊園地の目玉であるジェットコースターから降りてきたエステル・シャンフロウ(えすてる・しゃんふろう)が、フレロビ・マイトナーに言いました。 「ええ、ヴァラヌスよりも速くて、楽しかったですよねー」 「えー、どこがあ……」 元気なフレロビ・マイトナーと対照的に、弟のニルス・マイトナーは結構へろへろです。イコンの高速機動ならなんでもありませんが、遊園地の遊具はまた話が別のようです。 「やれやれ、少し鍛え直した方がいいんじゃないですか」 グレン・ドミトリーの言葉に、ニルス・マイトナーが、思いっきり首を横に振ります。 「さて、そろそろフリングホルニにお帰りを……」 デュランドール・ロンバスが、いいかげん遊びすぎだと、エステル・シャンフロウに釘を刺しました。お正月にここに来てから、味をしめて何度も通いすぎです。 「嫌よ、もっと遊ぶんだから」 そう叫ぶと、エステル・シャンフロウは、ジェットコースターを待つ列の横を駆け抜けていきました。 ★ ★ ★ 「まったく、いつまで待たせるんですぅ」 順番待ちの列にならびながら、いいかげんに飽きてきたフィーア・レーヴェンツァーン(ふぃーあ・れーう゛ぇんつぁーん)がぶつぶつと文句を言いました。 そのときです。突然、リューグナー・ベトルーガー(りゅーぐなー・べとるーがー)の携帯が鳴りました。 『お前たち、どこにいる!』 電話をかけてきたのは、新風 燕馬(にいかぜ・えんま)です。 『ちょっと聞きたいことがある。この葦原島の旅館宿泊費ってのは何だ。他にもヒラニプラにヴァイシャリーのホテルやら土産物店やら……エリュシオンからまで請求来てるぞ、どうなってるんだ!』 矢継ぎ早に新風燕馬がまくしたてます。 「ええと、それは……」 思わず、リューグナー・ベトルーガーが口籠もります。それも当然です。新風燕馬のお金を使い込んでしまったのですから。 「そういえば、フィーアたちは持ち逃げ犯だったですぅ」 今さらながらにフィーア・レーヴェンツァーンが思い出します。 「完全に忘れていましたわ」 リューグナー・ベトルーガーがフィーア・レーヴェンツァーンと顔を見合わせます。今さら請求書を出されても、対応できるわけがありません。 「実は、ニルヴァーナ学園の魔法学科・魔術学科・ルーン魔術学科・マントラ学科のそれぞれから『2024年中にわらわたちの誰かが死ぬ』という予言を受けまして……。運命を回避する方法を『不可思議な籠』に訊ねて、それを実践していましたのよ」 あわてて、リューグナー・ベトルーガーが口からでまかせをまくしたてます。あれ? 確か、光条世界の調査という名目ではなかったのでしょうか。 あっ、その点を新風燕馬からも突っ込まれました。これはもうまずいです。 「こうなったら、出口へダッシュですわ。さっさとここから逃げだしますぅ!」 「合点承知ですわー」 二人は電話をブッチすると、一目散に出口にむかって逃げだしました。 ★ ★ ★ コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は、Sインテグラルナイトで宇宙港の駐機場に降り立ったところでした。 ちょうどそこで、散楽の翁たちと待ち合わせをしたのです。 「お迎えにあがりました」 見るからに陰陽師ふうの風体をした散楽の翁と巫女服姿の剣の花嫁たちを見つけだしますと、コハク・ソーロッドが挨拶をしました。 メイちゃんたちをコウジン・メレが狙っていると聞いて、ショワン・ポリュモニアたちから散楽の翁の居場所を教えてもらって、助力を請いに来たのでした。 「そうですか。やっと、助け出すことができそうですね。では、イルミンスールへとむかいましょう」 ストゥ伯爵の城から、この地の遊園地のジェットコースターを見に来ていた散楽の翁が、そうコハク・ソーロッドに答えました。 「こちらのめども立ちましたし、あなた方の協力に報いることもできるでしょう。後は……」 「そちらは、すでに観測にチュチュエたちをむかわせております」 散楽の翁の言葉に、タイオン・ムネメが報告しました。 「急ぎましょう。僕のインテグラルナイトなら、何人か運べるはずです」 「いいえ、それにはおよびません」 コハク・ソーロッドが申し出ますと、アマオト・アオイが空を仰ぎ見ました。コハク・ソーロッドがその視線を追いますと、ゆっくりと銀色の大型飛空艇が降下してきます。 「ポータラカUFO?」 やや大きめのそれは、流線型の船体をしており、どこかヴィマーナに似ていました。 「さあ、どうぞ、天津へお乗りください」 昇降用のハッチを開くと、パイフ・エラトがコハク・ソーロッドをうながしました。その言葉のままに、コハク・ソーロッドが散楽の翁たちと共に大型飛空艇に乗り込みます。 「イルミンスールですね。かしこまりました」 コックピットにいたシンロン・エウテルペは、そう告げると、天津を離陸させました。 |
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