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リアクション
「はっはっは、どう訳か知らねえが運がいいぜ」
「しっかりしてセレン!……反則よこんなの!」
「フハハハ!」
遠くの枝上からから威勢のいい声が聞こえる。
「ど、ドクター・ハデス!」
セレアナは声を上げた。
ドクター・ハデス(どくたー・はです)が木の枝の上に立っていた。
「まんまと掛かったな!セレン・シャーレット!セレアナ・ミアキス!」
「掛かったですって!」
「敵を罠に嵌めたつもりだったようが残念だったな!」
「不覚だったわ!どうやらここはハデスが私たちをおびき寄せるための場所だったみたいね。それだけじゃなく傷の回復と武器の修復も――」
そう、ドクター・ハデスはスキル『潜在開放』で能力を引き出し、
『プロフィラクセス』を発動して傷を回復させ、『調律改造』でスプーンを修復したのだ。
「なんだなんだいきなり出てきやがって。てめぇ何者だ!」
「フハハハ!我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス!
ククク、ドグマ教よ。古の盟約にもとづき、我らオリュンポスが助太刀しよう!」
「おりゅんぽす?協力だあ?」
「フハハハ!ドグマ教の戦士ゴワンよ!この俺の指示通りに戦うがいい!」
「断る!なんだって知らねえ相手なんかと――」
「前だ!」
スプーンで咄嗟に攻撃をガードすると『絶望の旋律』弾丸が地に落ちた。
最後の力を振りしぼったセレンの攻撃だった。
「フハハハ!俺の指示がなかったら直撃を食らっていたな!」
「っく……適当なこと言ったらてめぇは今夜の晩飯にだからな!」
「撃て!ゴワン破壊光線だ!」
「まずいっ!」
セレアナはセレンを担いで逃げる。
何とか破壊光線を回避したセレアナだったが、風圧で吹き飛ばされてしまった。
「余裕じゃのう。わらわたちの『しびれ粉』は相当効いているようじゃ。もはや勝ったも同然じゃ」
現れたのは辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)とファンドラ・ヴァンデス(ふぁんどら・う゛ぁんです)、イブ・シンフォニール(いぶ・しんふぉにーる)だった。
「なんだてめぇら!次から次へと現れやがって」
「安心してください私達は味方です。ゴワンさんはドグマ教にとって大切な方ですから死なせるわけには行かないのですよ。
さてと――たった2人でよく頑張りましたね。これ以上学校を壊されたくないのならリリー・ペラドンナさんを出し下さい」
ファンドラはスキルの『エセンシャルリーディング』を発動してセレアナに言った。
「……知っているのなら引渡しているわよ」
「照準ヲ、イルミンスール魔法学校にセットシマシタ」
イヴが装備の『六連ミサイルポッド』を大樹に向かって構えた。
「引き渡してくれるのなら。我々は引きますが?」
ファンドラは不適な笑みを浮かべた。
セレアナは言葉に詰まる。
「なるほど……引き渡す気はないようですね。頼みますイヴさん」
「カシコマリマシタ、ファンドラ様」
イヴが『六連ミサイルポッド』を放とうとしたそのときだった。
上空からジェット機の音が迫ってくる。
甲高い音が最高潮になった瞬間。何者かが降下しつつゴワン達に向かって弾丸の雨を浴びせてきた。
足場に着地したのは葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)だった。
「到着!助けに来たであります!」
「おお、葛城吹雪ではないか」
「おや。ドクターまた会ったでありますね。まさかこの間の味方が敵になってしまうとは……しかし容赦はしないであります覚悟!」
「フハハハ!いつまでその威勢が続くかな。もはやまともに動けるのは葛城吹雪だけだぞ!」
そう。既にセレアナも『しびれ粉』で身動きがとれなくなっていたのだ。
「ぐぐっ。自分の仲間はまだたくさんいるであります。
もうすぐ騒ぎを聞きつけた契約者たちが駆けつけてくるであります」
「なんだとそれはマズイな。よしこうなったら即効で終わらせるぞ。『破壊光線』だ!ゴワンよ力を溜めるのだ!」
ゴワンは体にエネルギーを溜めていく。
「なっ!到着早々まずいであります」
吹雪は後ろを振り返るとイルミンスールの木の幹があった。
「フハハハ回避してもいいぞ!葛城吹雪。ただしその場合『破壊光線』はイルミンスールの木に直撃する!」
「ぐ、軍人を舐めるなであります!うおおおおおっ!」
吹雪はマシンガンを構えた。ゴワンに向かって射撃する。しかし弾ははじき返されてしまう。
ただでさえ頑丈な体がハデスの魔力によってさらに強固になっていた。もはや銃による攻撃ではダメージを与えられない。
それでも吹雪は射撃をやめない。やめるわけにはいかない。
「し、しまったであります」
射撃がとまった。止まってしまった。弾丸撃ち尽くしてしまったのだ。
「今だ!撃て!」
ハデスは命令した。吹雪は覚悟を決めて身を守る。
――だが攻撃は発射されなかった。
「ん。もういいぞゴワン。撃て!もったいぶらないで早く攻撃するんだ!」
ハデスが声高らかに指示をする。だが一向に放たれる気配がない。
「お、おいてめぇ。ど、どいうことだこれは!」
ゴワンの体が眩いばかりに輝いている、エネルギーの収束が収まらないのだ。
「い、いかん。魔力が暴走している!」
「て、てめえ!」
「う、動くな!下手に動けば爆破する!俺はオリュンポスの大幹部だ!なんとか抑えてみせる、うおおおお!!」
「まずいぞ!全員この場から離れよ!」
危険を察知した刹那はファンドラとイヴの2人を速やかに退避させて脱出した。
吹雪もこれはまずいと思ったのか、身動きが取れなくなっているセレンとセレアナを両肩に担ぎ、
「うおおおぉぉっ!火事場の馬鹿力であります!」
と気合を入れて2人を運んでいった。
ハデスは暴走する魔力をなんとか抑えようと試みているが光は強くなってく一方だ。
とうとう光が広がり爆発が起こった、黒い煙が巻き上がって折れ足場が崩れる。
ハデスの全力の力でなんとか最小限の爆発で済んだものの、ゴワンはイルミンスール木の根元まで落っこちていった。