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【アガルタ】土星くん、とっても丸いで賞を取る!?

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★当社(?)のスタッフは胃袋が頑丈じゃないとなれないエリートの集まりなのです★



 ラフターストリート。

「ん〜。これだけの大きさとなると芯の型分を引いても……これじゃ足りないわね。もう少し」
 ケーキ作成を企画しているラフターストリートでは、リネン・エルフト(りねん・えるふと)が完成予想図片手にケーキの食材を計算していた。
 巨大ケーキの名に相応しい大きさなので、かなりの材料が必要だ。さらには足りなくなった時のことも考えて多めに発注しておくべきだろう。
「分かってたことだけど、すごい量ね。う〜ん。せっかくだし、うちも1枚噛ませてもらおうかしら」
 リネンの店、『アガルタ冒険者の宿』でも土星くんミニチュアケーキを作ろうと考えていた。量を頼めばその分安く抑えられる。一緒に自分の店のも発注しようと考えついた。もちろん、自身の店の分はちゃんと支払うつもりだ。
「材料の目処はついたかしら?」
「レキシントン……ちょうどいいところに」
 そこへやって来たのは、コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)。彼女はケーキ作成に必要な費用の計上を行っている。先ほどまで材料以外の道具や雑費を計算していたので、手にはその書類があった。
 コルセアに事情を話す。
「ああそうね。んー、問題ないとは思うんだけど、一応祭りの支援本部に話通しといてくれるかしら。書類の準備はこっちでしとくから」
「分かったわ、じゃあそっちはお願いね。それと悪いんだけど、少し店に戻るわ。何かあったらそっちによろしく」
「ええ、お疲れ様」
 リネンは材料について書かれた紙を渡し、一度店へと帰っていった。

 後日、リネンの案は通り、ケーキ作成のための『まともな』食材が届けられた。

 倉庫に並んだ『小麦粉』やら『卵』などという至って変哲ない食材名を、やたらと感慨深そうに眺めている人物がいた。
「初めて……初めて普通に調理ができそうでござるよ」
 いつもいつも食材と『戦っている』上田 重安(うえだ・しげやす)である。その瞳からは喜びと期待があふれていた。
 まあこれらの食材で作るなら、たしかに今回は大丈夫そうだ。

 積み上げられた食材を見上げて小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が大声を上げると、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が同意した。材料がたくさんということは、それだけ大きいということ。
 美羽がエプロンの紐をしっかりと結び、気合を入れた。
「これどれだけ計ればいいの?」
「あ、計るのは大丈夫ですよ。この袋ごとでちょうどになるよう、手配してくださってるみたいです」
「そっか……じゃあまずは何から?」
「そうですね。まず」
 お菓子作りが得意なベアトリーチェが美羽に指示を出す。いや、美羽だけでなく、周囲の参加者も彼女に指示を仰ぐ。彼女はそれらに嫌な顔一つせず、微笑んで丁寧に答えていった。
 そして質問者の中には、とある2人組みの少年達もいた。
「で、俺達は何をすればいいんだ?」
「……なんで俺がケーキ作りなんか。まあ、どうしてもというからだな」
 エプロンと三角巾をきっちりと身につけたジヴォート・ノスキーダ(じぼーと・のすきーだ)ドブーツ・ライキだ。どうやら彼らにも応援を頼んでいたらしい。
 ドブーツは納得いってなさそうな顔だが、周囲の誰もが気に止めていない。彼が本当に嫌がっていた場合、この場にいないことを知っているからだ。
「ジヴォートさんはクリームのあわ立てを、ドブーツさんはオーブンのタイマーをセットしといてもらえますか?」
「おお、分かった」
「それくらいなら構わん」
 ベアトリーチェと美羽は、「うりゃあああ!」「っ! 周りに飛ばすな!」などと楽しげに会話している様子にくすりと笑った。
 そんな時美羽がもう一つキルルの形をしたケーキも作れないか、と提案。周囲と相談して、急遽もう一つ巨大ケーキを作ることになった。

「……ふぅ。みんながいてくれて助かったよ」
 追加の食材を巨大なボールに放り込んだ酒杜 陽一(さかもり・よういち)が、額にクリスタルを輝かせた人たちに笑顔で話しかけた。
「いえいえ。こっちこそお役に立てて何よりです」
「ええ。それに楽しいわ。誘ってくれてありがとう」
 どうやら陽一が彼らをケーキ作成に誘ったらしい。最初は他の人たちとなじめるか心配していた陽一だったが

「お、あんた中々いい手つきやな」
「ありがとう。一応、昔はお菓子作りで生計立ててたのよ……まあ作り方大分違うみたいだけど」
「へぇ。ニルヴァーナの料理ってどんなんか興味あるな。今度作ってくれへん?」
「そうね。コーンに聞いてみるわ。機材が必要だから」

 どうやら無用の心配らしい。
 まあ時折怒号が飛び交うこともあるが、五人囃子の奏でる音色に皆心を落ち着かせた。
「何人かは御輿作成に向かったみたいだけど、この様子を見るにあっちも大丈夫そうかな」
 連れてきたペンタ・パラミタペンギン・特戦隊も上手いことフォローしてくれているようだ……とその時、陽一のもとにキルルが駆け寄って(飛んで?)きた。

『よ、陽一さん! 大変です。ペンタさんたちが飴でぐるぐるに!』

 輪っか部分は水あめで作る予定だったのだが、一体何があったのか。ペンタが大変なことになっていた。

「ペンタ。どうしてこんな……え? 食べたかったの?」
「ふふ。少し食べてみますか、ペンタさん?」
 ハプニングではあるが、誰もが微笑んでみているので、和ませ役としての役割は担えているようだ。

「ケーキ作りってとても楽しいですね!」
「そうだね。お菓子づくりってやったことなくて心配だったけど、皆親切に教えてくれて」
「だなぁ。来てよかったな」
「はい! あ、見てください! 綺麗に切り抜けましたよ」
 始終笑顔で周囲の会話に耳をすませたり、驚いたり、周りと笑いあったりしている千返 ナオ(ちがえ・なお)エドゥアルト・ヒルデブラント(えどぅあると・ひるでぶらんと)。パートナーたちの反応に、誘ってよかったと千返 かつみ(ちがえ・かつみ)もまた笑う。
 今3人は、装飾のクッキーの型抜きを一通り終えたところだった。

「……オーブンの準備できたぞ」
「あっ、このクッキーも焼いてもらわないと……2人は……生クリームの手伝いにいってくれないか」
 ドブーツの声にかつみが反応し、2人に指示を出した。
 まだ本体――土星くん部分とその下の土台――は完成していないが、集まったメンバーは多い。作っているうちにできあがるだろう。
「分かりました」
「うん、行ってらっしゃい」
 ナオとエドゥアルトはかつみの言う通り、生クリームの作成を手伝うことにした。ふわふわなで良い香りのクリームはとてもおいしそうだ。
 2人がちらと互いを見た。そして周囲を見た。今は、何やらキルルたちのところが騒がしく、こちらに注目はいっていない。
(少しくらいなら)
(いいですよね)
 生クリームをさっと一すくいし、口の中へ。2人の顔が美味しさに緩む。

「ただいま……って、エドゥとナオ、今つまみ食いしただろ。慌ててたから顔にクリームついてるぞ」
 そこへ戻ってきたかつみが、2人の口周りについているクリームを目ざとく発見。仕方がないなと笑う。

「そろそろお昼ですから、一度休憩にしましょうか」
「ベアトリーチェに賛成!」
「それなら自分にお任せくださいであります! もう用意してあります」
 どんっと胸を叩いた葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の声に、重安が頷いて弁当箱を持ってくる。
「うちにある余った食材でつくってきたであります!」
「……吹雪が、まともなことしてるですって?」
 コルセアが愕然としながら、他の面々は吹雪に礼を言って昼食を採る。一応吹雪の食堂では『普通の』飯も提供している……ことを改めて言っておこう。

 ゆったりと昼食を採って元気を取り戻し、今まで以上に作業はスムーズに進んだ。

「あとは組み立てだな」
 かつみが生地で作った目や口を見た。これらを貼り付けて、一応土星くんは完成する。
「そうですね。あ、俺がサイコキネスで持ち上げるので、位置は――」
 ナオが丸い手を持ち上げると、かつみが手を上げた。
「じゃあ、俺が指示するから」
「……かつみ、位置の指示は他の人にお願いした方がいいと思うよ。多分、微妙に土星くんじゃなくなると思うから」
「え? 味は問題ないよ、ただ位置の問題なだけだから、ね!」
 位置の指示を必死に止めようとするパートナーたち。周囲が怪訝そうなのを見たエドゥがかつみに土星くんの絵を描かせ、そのなんともいえない『画伯ぶり』に、

「コレは素晴らしいであります。かつみ画伯とお呼びしても?」
「え?」
「……えーっと、あ、そっそうです。かつみさんは休んでいてください」
「でも」
「そうそう。かっつんはちょっと休憩しててよ」
「……だったらこっち手伝ってくれないかな。水あめでの輪っか成型が予想以上に難しくてさ」
『ぜひ手伝って欲しいです』
「わ、分かった……」

 彼に位置の指示を任せてはいけないということで、意見はほぼ合致した。

 そうしてケーキは無事に完成した。

「最初はただの生地だったのに、ちゃんと土星くんになりましたね! せっかくなので写真撮って……あれ? 足が消え――」
「むっ? 足が動いているでござるか……はっ! もしやあれは」
 屋根の上に飛び乗った足を見て、重安はその正体に気づいた。青ざめる。
「……あれだけ火を通したのにまだ生きていたでありますか。とってもいい食材であります!」
「どこがよ!」
 吹雪が満足そうに頷いたのに、コルセアがツッコミをいれた。それから頭を抱えた。

「ああ〜っ、今日は平和だと思っていたのに」
「いたし方ないでござるな。ここはそれがしぐぁっ」

 飛び出そうとした重安は、素早い動きのまん丸足に轢かれてどこかへと飛んでいった。

※このあと足(スポンジ)は無事に捕獲でき、スタッフで美味しくいただきました。