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クレイジーな新薬実験

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クレイジーな新薬実験

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序章
 
 冒険には、危険がツキモノ。常に命の危険と隣り合わせである。
 それは未知の領域に踏み込み、手探りで進む以上、至極当然のことであり、太古より勇者たちはそれを承知で旅に出た。
 時には潜んでいた魔物に襲われたり、そのダンジョンを根城にしているならず者の一団と遭遇したり、はたまたえげつない罠にかかったり。
 しかし、科学が発達してきた昨今、その危険を少しでも減らそうという努力が、冒険の致死率を軽減しようという研究が進められてきた。
 現代、様々な便利なアイテムが発明され、役立てられている。

 そのうちの一つが、魔法薬。

 飲むだけでたちまち効果が現れ、身体強化、回復などで契約者たちの戦いをサポートする。
 そして今でも、未知の世界へ向かおうという勇敢な戦士たちを少しでも危険から遠ざけるべく、さまざまな研究が推し進められている。

 某日、イルミンスール魔法学校のとある研究室。
「はぁ〜っはっはっはっはぁ! できたぞ! これぞ究極のドーピング薬、その名も……あ、名前は考えていなかった」
 彼ら五人も、元は純粋な気持ちで魔法薬の研究をしていたケツの青い若造研究者だった。
「とにかぁく! さっそくだが実験をせねばなるまい。この薬がどこまで力を発揮できるのか……な」
 何やら怪しげな煙を上げているフラスコを片手に、研究者の一人が黒い微笑みを漏らした。
「今まで通りのラットたちでもいいのだが、この薬は是非とも人間、欲を言えばもっと大きな生物に試してみたいものだな。そう、例えば……」
 ちら、と窓の外を見る。はるか向こうには、緑生い茂る森が見えた。
「オークとか、どうだろうか」
 オークは、知能こそ低いが、身体能力だけで見れば屈強で頑丈な生物だ。サルを祖先としている人間に対し、ブタを祖先として進化した、とされている。敵として出会えば、ベテランの冒険者ならばさして苦労もないだろうが、戦闘経験の浅い契約者たちにとってはかなりの強敵となる。
「ふむ、異議なしだ」
「異議なし」
「異議はない。良いデータが取れそうだ」
 他の研究者たちも、どこか黒い笑みを見せる。
「だが、どのような副作用が出るかは分からない。余計な被害を防ぐためにも、捕獲するのは少数にしたほうが良いだろうな」
「オークを捕獲するために何度も往復するのか? それは面倒だな。もっと効率的な方法はないのか?」
「仕方あるまい。いかに天下のイルミンスール魔法学校といえども、実験の為にたくさんのオークを捕獲したとなれば、あちこちからクレームが出かねん。そんな面倒は、勘弁だ」
「違いない。では、行こうか」
「うむ。行こう。我々の科学こそ、何よりも優れた技術であるということを証明しに」
 と、白衣の科学者たちが、部屋を出た。

 かくして、金で雇った傭兵たちとともに三体のオークが捕獲され、すぐさま研究室に運び込まれた。
 騒ぎが起こったのは、オークが運び込まれた次の日の朝のことだった。

 オークの姿に似た、得体の知れないバケモノが校舎内に出現した。