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訪れた特殊な平行世界

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■両調薬会に協力


 イルミンスールの街。

「……廃棄物の合成物というが探求会の廃棄物も混じっているかもしれない。だとしたら早くこの騒ぎを早く解決しないとな。探求会には世話になっているから」
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)は上空を飛び交う不気味な赤い光を見ていた。
「そうですね。あれを捕らえ、分析すれば正体を明らかにする事や薬の作製にも役立たせる事も可能になるでしょうね」
 ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)も同じく記憶食いを見ていた。
「……あれの能力が有効なのは素材化された記憶のみか気掛かりな所だな(生身の人間に効かないのなら不安要素が一つなくなるが)」
 ウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)は記憶食いの能力に注意を向けた。それは自分のためではなくグラキエスのためなのは明白である。
 その時、
「協力の申し出の知らせを入れてくれてありがとう」
 ロアの『根回し』により騒ぎ発生後すぐに知らせを受けた調薬探求会会長のシンリが現れた。
「いえ、これまで世話になっているのですから」
「今後の為にも」
 ロアとウルディカはシンリを歓迎。なぜならグラキエス達はとある依頼を通して調薬探求会と親しくなっていたのだ。
「いや、本当にありがとう。早速だけど、君達から連絡を貰った後に調薬場所確保に行かせたオリヴィエから連絡があって学校が実験室を貸してくれるそうだからそっちに行こうと思う」
 シンリは三人との合流地点に来るまでに受けた知らせを明らかにした。
「そうですか。では、魔法薬の製作に参加出来ればと思うのですが」
 ロアは消滅薬作製参加を願い出た。
「手伝ってくれるとありがたいよ。ただ……」
 シンリはあっさりとロアの申し出を快諾するも少々渋い顔で記憶食いの方に顔を向けた。
 その表情に込められた意味を察したウルディカが
「魔法薬製作のために必要なら捕縛して届けるが」
 と、提案すると
「そうしてくれると製作も捗るよ」
 シンリはあっさりと頼んだ。
「捗るとは言え、すぐには完成しないだろう。それまでの間、被害を最小限にするために捕縛して完成した時にすぐに処理出来るようにしよう(それにもし記憶食いの原因が探求会にあったら彼らの評価も悪くなるかもしれない)」
 本日体調が割と良好のグラキエスもまた自分に出来る事で調薬探求会に力になろうとしていた。何かと関わりを持ったシンリ達の評価が下がるのは無視出来ないから。
「助かるよ。とりあえず、後の話は向かいながらしよう」
 シンリはやるべき事が詰まっているため立ち話を打ち切った。
「そうですね。後は道々、お願いします。魔法薬製作のため私はイルミンスール魔法学校に行きますが、エンド達はどうしますか? 一度、立ち寄りますか」
 ロアは捕縛担当のグラキエス達に同行の有無を訊ねた。
「いや、緊急時だからこのまま作業に移る」
 グラキエスは異変を続ける世界を見、余計な時間を消費する時間は無いと読んだ。
「……分かりました。ただ、頑張るのはいいですけどほどほどにお願いします。折角体調がいいのに無理したらまた具合が悪くなります」
 ロアはグラキエスの意見を尊重するも言うべき注意は忘れない。自分の知らぬ間にグラキエスの身に何か起きては堪らないので。
「あぁ、心配無い」
 グラキエスの返答は躊躇いのないものであったが、
「……ウォークライ、エンドの事をよろしくお願いします」
 それだけでは心配消えぬロアはウルディカに任せるのだった。何せこれまでも多々心配を掛けさせられたので。
「あぁ、言わずとも分かっている」
 ウルディカは即引き受けた。実際、グラキエスの事はロアと同じく知っているのでお願いされるまでも無かったりする。
 グラキエス達のやり取りに一段落した事を見て
「それじゃ、行こうか」
 シンリがロアに声を掛け、行動開始となった。

 道々。
「記憶素材化魔法薬、無事に完成したのですね」
「何とかね。散布も向こうにしては上手くやってくれているから問題はあの記憶食いだけだよ」
 ロアとシンリは空に舞うカラフルな閃光について話していた。散布についてはグラキエス達と事前にやり取りをしておいた調薬友愛会に力を貸しているフレンディス達が上手くやってくれている。
 二人は無事にイルミンスール魔法学校の実験室に到着し、新たな協力者と合流する事となった。

 一方、グラキエス達。
 記憶食いの捕縛を開始しようとした時、ポチの助から避難誘導と記憶素材化魔法薬の散布状況についての連絡を受けたグラキエスは今から記憶食い消滅薬に取り掛かる旨を伝えた。
 連絡終了後。
「向こうは順調みたいだな」
 ウルディカはグラキエスの様子から連絡内容を推測し確認を入れた。
「あぁ、避難誘導も完了して散布も徐々に進んでいるそうだ」
 グラキエスは順調に進んでいるフレンディス達の詳細を伝えた。
「そうか。ならば……」
「あぁ、こちらもやるべき事をする。まずはサンプル確保だ」
 ウルディカとグラキエスは上空を見つめた。

 行動開始後。
「……これが記憶食いか」
 グラキエスがネロアンジェロの機動力を活かし、空中にいる記憶食いに接近し、『行動予測』で記憶食いの動きを先回りして動きを阻む。
 同時に
「……普通の弾丸だが」
 『銃器』を有するウルディカが『スプレーショット』で記憶食いの動きを見事に鈍らせ
「動きが鈍くなった今の内に」
 そこへグラキエスの『奈落の鉄鎖』で捕縛する。
 その様子を地上で見守るウルディカは
「……(動きを一時鈍らせるだけか。やはり、消滅させる魔法薬が必要だな。これは早く完成して貰わなければ。エンドロアが変調を見せぬ内に)」
 自分の弾丸を受けた際の記憶食いの様子を振り返ると同時に消滅薬が出来ない限り作業が終わらないと確認しグラキエスの身を案じていた。
 しかし、もう少しサンプルが必要と数体ほど捕縛作業をする事になった。
 その合間に記憶食いについての情報が入り、
「……(狙うのは素材化した記憶を持つ者だけか。となれば、気に掛けるはエンドロアの体調だけか。こればかりは油断できん)」
 ウルディカをひとまず安心させたが、グラキエスを全く心配しないには繋がらなかった。
 とにかくサンプルを数体用意出来たグラキエスは付近にいた調薬探求会に宅配を頼み、自分達は捕縛に精を出した。