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学生たちの休日16+

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    ★    ★    ★

「とうっ!」
 海京の人工海岸で、メイ・ディ・コスプレ(めい・でぃこすぷれ)がランニングをしつつ、途中で跳び蹴りや回し蹴りの運動をしていました。
 どうやら、ダスティシンデレラver.2とのBMIによるシンクロで脳筋ぶりがダイレクトに反映されてしまうというので、パートナーたちから精神修行をしろと命じられたようです。
 波打ち際で反復横飛びをしたり、スライディングなどを行っています。思い切り、肉体を鍛えるのです。健全な精神は健全な肉体に宿ります。どんな環境にも負けない肉体を作りさえすれば、きっとBMIとのシンクロもうまくいくはずなのです。
 もう、むっきむきを目指します。
 完璧な精神修行……精神修行……精神?
 まあ、鍛えることには変わりがありませんから、無駄にはなりません。きっと。
「そこ、逃げるんじゃありません!」
「逃げなきゃ死ぬだろうが!」
 そこへ、逃げる柚木桂輔と、ライフルを乱射するアルマ・ライラックが乱入してきました。どうやら、うまく柚木桂輔が、アルマ・ライラックを海岸へと誘導してきたようです。もっとも、海岸はメイ・ディ・コスプレのはた迷惑な修行のために、今は誰もいません。
「なに? 最近流行のリア充狩り!? ああん、でも、今の私には彼氏なんて……」
「どいてどいて!」
 何か勘違いして赤面するメイ・ディ・コスプレにむかって、柚木桂輔が突っ込んでいきました。
「できれば、もっとイケメンが希望でーす!」
 ドーンと、メイ・ディ・コスプレが柚木桂輔をパンチ一つで海の中へと吹っ飛ばします。
「ぷはっ、何をする……」
 文句を言いきる前に、アルマ・ライラックの射撃で海面に小さな水柱が立ちます。
「早く岸へ……」
「だから、もっとイケメンに限ると……」
「うわあっ!」
「そこっ!」
 岸にむかってはメイ・ディ・コスプレによって吹っ飛ばされる柚木桂輔をアルマ・ライラックが狙撃するという、堂々巡りがえんえんと続いていくのでした。

    ★    ★    ★

「なんだか、元気なのがいるなあ。フィルが巻き込まれなきゃいいが。まあ、離れているから大丈夫か」
 ホテルのプライベートビーチでのんびりとしながら、ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)が言いました。
 なんだか、一般の海水浴場の方で、断続的に大きな水飛沫や砂塵があがります。誰かが何やら修行でもしているようですが、元気なことです。
 とはいえ、せっかく新婚一周年記念の旅行でやってきたのですから、のんびりとさせてほしいものです。なんだか、微かに銃声のような音も聞こえますが、今は関わらないでおきましょう。
 波打ち際近くのビーチチェアーに寝そべったまま、女房の方はと視線を巡らせます。波打ち際でフィリシア・バウアー(ふぃりしあ・ばうあー)が楽しく遊んでいますが、水着姿の妻を見るのは久しぶりです。思わずサングラスをちょっとずらして、まじまじと見つめてしまいます。
 身内びいきととられても構いませんが、相変わらずみごとなプロポーションです。
「でも、さすがに、結婚してから少し肉つきがよくなったかな。いや、気のせいか」
 そんなことをつぶやきながらフィリシア・バウアーの方を見つめていたものですから、さすがに気づかれました。いくらサングラスで隠してはいても、女房の目はごまかせません
「何見ているの。一緒に遊びましょうよ」
 問答無用で水を浴びせかけながら、フィリシア・バウアーが言いました。
「やったなあ。よし!」
 サングラスと、着ていたパーカーをチェアーに脱ぎ捨てると、サーフパンツ姿のジェイコブ・バウアーがサブザブと海へと駆け込んでいきました。
 そのまま水をかけ合ったり、海に沈め合ったりして、ひとしきりじゃれ合ってから、二人はビーチパラソルの所まで戻ってきました。
「やれやれ、久しぶりの旅行だ。ちょっとはしゃぎすぎたかな」
 ビーチチェアーに並んで寝そべりながら、ジェイコブ・バウアーが言いました。隣のビーチからは、まだ騒がしい音が聞こえてきています。
「来年は、もう少し二人っきりに慣れる場所にするかなあ」
「来年の夏は、私とあなたと……、息子か娘と一緒に過ごしてるはずですわ」
 なんだかさらりと、フィリシア・バウアーが重大発表をしました。
「お、おい、それは本当か! 信じられん……俺が父親になるのか!?」
「ええ、二ヶ月ですよ、パパ」
 勢いよく身体を起こして危なくビーチチェアーから落ちそうになるジェイコブ・バウアーに、フィリシア・バウアーが誇らしげに告げました。