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リアクション
第3章 繋がる刻(とき) 3
「魔導ドライブ――オールグリーン。シールド装備完了。各部エンジン出力80%上昇確認。いつでも発進できます」
イコンに乗り込んだ涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)は、オペレーターの指示に従って自らのイコンの各部機能チェックを行っていた。
「いよいよだね」
副コクピットから内部通信を通じてそんな声がかけられる。
涼介の目の前のモニタに映ったのは、金髪をポニーテールに束ねた少女の画面だった。パイロットスーツに身を包んだ彼女――クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)は、涼介ににこやかな笑みを浮かべる。
「ああ。それにしても、この時代でソーサルナイトを駆るとは思いもよらなかった」
「それは私もいっしょ。でも、必要とされてるってことだよ、おにいちゃん」
「……そうだな」
うなずいて、涼介は感傷に浸るのはそこまでだと気持ちを切り替えた。
「涼介さん」
モニタの一部に別の女性が映りだし、外部通信が開かれたのはそのときだった。
「近遠さん?」
「はい、近遠です」
希薄めいた雰囲気を持つ落ち着いた青年――非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)は、抑揚の少ない声で涼介に答えた。
「いったい、どうしたんですか?」
「いえ、実はほら、ボクたち同じ部隊じゃないですか。それで……もしよかったら予備弾薬庫が空いてますので、そちらの装備も積んでおこうかと」
「ああ……なるほど……」
イコンの機体には予備弾薬庫が常備されているタイプもある。その一部が空いているということだろう。
涼介はしばらく熟考するように黙り込んだ。必要かどうかを探っているのだ。が、すぐにその顔が持ち上がる。
「念には念を入れて、だな……お願いしてもいいですか?」
「はい、任せといてください」
にっこりと笑った近遠からの通信は切れた。
出撃まであともうしばらく。涼介はしばし瞑目し、それから目を開いた。その瞳には、戦いを前にした研ぎ澄まされた感覚が滲み出ていた。
涼介たちと同じく、黒崎 天音(くろさき・あまね)はイコンに乗り込んで出撃準備を待っていた。各部機能チェックを行いながら、誤動作はないかを確認している。
「ん……?」
外部通信が開いて、天音は首をもたげた。
一体何だ? 回線を開くが、誰からの応答もない。代わりに、メッセージファイルとともに、各情報の誤差修正データが送られてきた。
「白竜からか……」
事前に、念入りに確認されたものなのだろう。
「さすがだね……」
その情報の正確さに感嘆の息をつきながら、天音は最後の動作チェックへとさしかかった。