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【創世の絆】その奥にあるものを掴め!

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【創世の絆】その奥にあるものを掴め!

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「ふう……」
「やっぱり、少し無理をしすぎな気がするな」
 と、早川 呼雪(はやかわ・こゆき)が、一息を入れた香菜に声をかけた。
 呼雪はその理由には触れず、話題を変えることで彼女をなだめることにした。
「さっき、ドージェ・カイラス(どーじぇ・かいらす)の写真を持っていたみたいだけど、要らないなら俺に譲ってくれないか?」
「構わないけど……どうして?」
 きょとんとする香菜に、ヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)が肩をすくめた。
「いろいろと縁深いものがあってね」
 ふところから取り出される写真を呼雪が受け取る。なんと言うことはない、単なる写真だ。
「変な言い方をしないでくれよ。誰かの落とし物かも知れないし、俺が落とし主を探しておいてやろうと思ってさ」
 彼らにとって、ドージェとの関わりが深いのは事実だ。呼雪は香菜がドージェの写真を持っていたことから、彼女がドージェと何らかの関係があるのではないか……と予想をつけたのである。
(でも、意外とあっさり渡してくれたな。……本当に、自分がいつこの写真を手に入れたのかも分からないみたいだ)
「それ、ドージェって人だよね」
 と、彼らの横から声をかけたのは神山 葉(かみやま・よう)
「俺はこっちに来たばっかりだから知らないけど、悪い人なの?」
「いや……」
 と、ヘルが答えかけるのを、呼雪がその意図を察して止めた。香菜の反応を伺っているのだ。しかし、その反応はというと、
「いえ……ただ、強力な契約者だということしか、私も知らなくて」
 という、あっさりしたものだった。
「もしかして、好みのタイプとかですか?」
 ひょこ、と結崎 綾耶(ゆうざき・あや)が顔を覗かせた。
「は、はい? いえいえいえ、確かに男っぽい人の方がいいけど……って、そうじゃなくて!」
「あんまり、からかってあげたらかわいそうだよ」
 匿名 某(とくな・なにがし)が綾耶をなだめる。
「許してやってくれよ、綾耶も君の緊張をほぐしてやろうと思っただけなんだよ」
「私、応援してますから。ほら、男らしい人を落とすためには女らしい体を手に入れられるように祈っています!」
 ぐ、と綾耶は拳を握る……胸の前で。その意図を察して、はっと顔を赤くした。眉をつり上げて怒りを顕わにする。
「って、なんでそうなるのよ! そういう話じゃなくて、今は調査を……」
 と、言うあたりで、呼雪はどうやら、彼女がドージェに対して何か特別な感情を持っている、ということはなさそうだと思った。
「何も、君が無理することはないんだ。みんなに任せて、少し休んだっていいんだから」
 ぽん、と、呼雪が香菜の肩を叩いた。
「新入生のうちに、首位に頼ることを覚えておいた方がいいぞ。無理が出たら、そのためにも人員を割かなきゃいけないからな」
「それは……頭では、分かってるけど……」
 恥じ入るような香菜の様子に、当てが外れたのは、葉のほうも同じだ。ドージェの話を打ち切ることに決めて、頭を掻いた。
「自己紹介が、まだだったよね。オレは神山葉。葉って呼んでくれて構わないよ」
「私は神山 楓(かみやま・かえで)。葉のパートナーです」
 二人に挨拶されて、香菜も同じように挨拶を返した。
「これからの探索では、サンプルを持ち帰ることを目標にしようと思います。できれば、ギフトが見つかればいいのですが……」
「でも、長く続けるのも危険じゃないか? またイン……ファントってやつが出てくるかも知れないんだろ? でかい蛾を連れて来られたら困るぞ」
 ウルフアヴァターラを連れた大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が、セリフに似合わない陽気な様子で現れた。
「そうじゃなくて、イン……グラムだろ。今は反応はないみたいだけど、他の脅威がないとは限らないし、万全の体制で臨んだ方がいい。急いては事をし損じる、って言うだろ」
 と、某がまたパートナーのフォローに回った。
「インテグラル、だよ」
 フォローとは言え、さらに間違えている某の言葉をヘルがさらに正した。
「そうだな。どんな危険があるか分からないぞ。いいんちょも気をつけろよ」
「私は何の委員長でもないって!」
 性格はともかく、今のところ役職にはついていないようだ。
「それがギフト? すごいな、本当に生物みたいだ」
 葉が康之のウルフアヴァターラに感心したようにかがみ込んだ。
「ニルヴァーナには分からないことがたくさんあるけど、中でもギフトは面白いな。何のためにこれが作られたのか分からないけど……」
「もしかしたら、私たち……いつかニルヴァーナにたどり着いた者に、これを使って何かをさせようとしたのかもしれません」
 と、楓。
「だとしたら、古代人でさえ人を頼るんだ。俺たちも助け合わなきゃな」
 呼雪が改めて、香菜に言い聞かせるように言った。
「もう、そんなに何度も言われなくたって、分かってるわよ! もう大丈夫だから、調査を再開しましょう!」
 何度も指摘されて恥ずかしいのだろう、香菜が叫んで歩き出そうとする。
「お待ちなさい!」
 ダダン! と効果音じみた足音と共に、フェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)が進み出た。
「探索に向かうなら、先にやらなければならないことがある」
「ええっと……もしかして、ついてきたのは……」
 イヤな予感を感じて、某が呟いた。
「お前の髪は長い。水晶の木に引っかかったりしたら危険だ。野放しにするのは危険だ。つまり……」
 きりりと、珍しく眉をつり上げてフェイが告げた。
「結わないか? そんな半端ではなく、もっと徹底的に!」
 しゃらん、とリボンを抜いた。
「え、えーっと……」
「それはいい。ぜひやってもらおう」
 と、呼雪。
「そうだね。彼女の言うとおりだ。その間、話し相手ぐらいにはなるよ」
 こちらは某。どちらも、髪を結われている間、香菜を休ませようとしてのことだ。
「え、えっと……」
 さすがの香菜もその雰囲気で、断れそうにはなかった。