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第55章 キミが大好きだ!

「このイルミネーションすっごい綺麗だなー。梅琳の美しさには敵わないけどな!」
「もう、何言ってるのよ……」
 橘 カオル(たちばな・かおる)の言葉に、李 梅琳(り・めいりん)はクスリと笑みを浮かべた。
 カオルは今日、梅琳に誘われて空京を訪れていた。
 梅琳は今日の為にデートプランを立てており『今日は私にリードさせてね』と、催物会場や、レストラン、カフェへと連れ回したのだった。
 自分の趣味ではなく、それはカオルを楽しませるために立てられたプランであり、その一つ一つは勿論。
 この日に、彼女が自分と過ごすために時間を空けてくれたこと、彼女の方から誘ってくれたこと、プランを立てていてくれたこと、それらが本当に嬉しくて。
 カオルはいつも以上に、浮かれていた。
 ちらりと見ると、梅琳の指には、自分が贈った指輪が嵌められている。
 嵌めている指は――右手の薬指。
 サイズはちょうどいいように見える。
 ぴったりだったから、その指にしたのか、それとも何か意味があるのか。
 そわそわとそんなことを考えてしまう。
(左の薬指……はまだ早いよな)
 でもいつか、左手の薬指用の指輪も贈ることが出来たらと、思う――。
「いつもお疲れ様。楽しんでもらえたかな、今日」
 梅琳はそう言いながら、鞄の中から取り出したものをカオルに差し出した。
 赤い包装紙に白いリボンが巻かれている。
 中身が何かはすぐにわかった。
 カオルはもうほんと、堪らなくなって。
 我慢が出来なくなって、梅琳にバッと飛びついてぎゅっと抱きしめた。
「メイリン大好きだ……! 愛してる……ッ」
「だっ、からもう……恥ずかしいじゃない」
「恥ずかしくないッ、今日はこの場所は許されるんだ」
 そう言って、カオルは梅林を愛しげに大切に抱きしめて、頭を撫でていく。
 彼女と一緒に何かをしている時が一番楽しい。
 頼まれごとを手伝ったり、仕事の時だって。
 でも、やっぱり2人でいる時間が一番好き。
 これからも2人の時間を作っていきたい!
「ここが、俺の居場所――メイリンの傍が」
 カオルは、パラミタに自分の居場所を探しにきた。
 そして、彼女という人を知り、居場所を見つけた。唯一の大切な場所。
「落ち着ける場所いこうか……」
 体を起こして、カオルは彼女の両肩に手を置いた。
「ええ。最後に行く場所はカオルが選んで。贈り物も愛情も、いつもたくさんくれる貴方に、今日はお返しをする日だから。行きたい場所はどこ? 欲しいものは何?」
「そんなの決まってる。俺は今、行きたい場所にいるし、欲しいものは腕の中にある」
 それから、カオルは梅琳の手を取って歩き出す。

 梅琳の手を引いて、カオルが訪れたのはフラワーセンターだった。
 満開の花園の中で、梅林と並んで腰かけて。
 今日は仕事の話はせずに。
 他愛もない話を沢山した。
 梅琳は大人びていて、こういう時もカオルのような激しい喜怒哀楽は見せないけれど。
 職務外の、カオルと過ごすのんびりとした時間が、彼女の息抜きになっていて、必要な時間であることも、カオルには感じ取れていた。
 冷たい風がぴゅっと吹き抜けた。
 途端、カオルは梅琳を守るかのように抱きしめて、耳元で「大好き」と囁いた。
「私もカオルのこと好きよ」
 そう微笑んだ彼女に、カオルはキスをする。
 梅林の手がカオルの後頭部に添えられて。
 カオルの手は、梅林の首筋を温めていた。