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忘新年会ライフ

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忘新年会ライフ

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 やがて全てを歌い終えたマイがペコリと客席にお辞儀をすると、大歓声と拍手が沸き起こる。
「ふぅ……終わったな。オレが心配し過ぎだったか。心配いらねーと断言できるくらいに、マイがしっかりしててくれりゃーいいんだけどなー」
 公演の終了と同時にマイの護衛の任から解かれた皐月も大きく溜息をつく。あとは、何か美味いモノでも食わせてやるかぁ、と彼が考えていた矢先、異変は起こった。
「フフフフフ……」
 お辞儀したまま、含み笑いを漏らすマイ。
「マイ?」
 おかしい。事前に確認した手順で言えば、お辞儀して手を振りながらステージを去る予定だったハズ。
 皐月がマイの元へ行こうとした時、顔を上げたマイがほんのり顔を赤く染めて客席を見渡す。
「ボク、チューしたい」
「……は?」
「「「な、なんだってぇぇぇーーー!?」」」
 アイドル少女の発言にざわつく客達。
 皐月が慌ててステージ下からマイに小声で呼びかける。
「(おい! 訳わからねー事言ってないで、さっさと帰ろうぜ? な?)」
 ニンマリと皐月に笑うマイ。
「やだ」
「はぁぁぁー!?」
「ボクの歌を聴いてくれたみんなにチューしてやる!!」
「「「うおおおぉぉぉぉーーー!!!!」」」
 この日一番の歓声が起こる店内。
「(ど、どうしたって言うんだよ!? マイ!!)」
 皐月が慌てるのと同時に、マイに体を貸している七日も「私の体ぁぁぁーーー!!」と声なき声をあげていた。
「あら? ここに置いていたコップがないですね?」
 リオンが皐月の背後で首を傾げる。
「コップ?」
「はい、知りませんか? 日本酒を入れていたんですけど」
 皐月の頭に、フラッシュバックする記憶。先ほど、MC時にマイに渡した中身……。
「お、おい! マイ、戻るぞ、撤収だ!!」
「やだ」
「やめておきな、そこの若いの」
 シンが皐月を制す。
「な、何を!?」
「大いなる川の流れを力で止めようとする者は、やがてその愚かなることに気付くだろう。正義の流れはもはや止められぬ……。人、それを……『怒濤』という!」
「訳のわからねぇ事言ってるんじゃねぇ!!」
「ただしぃッ!!」
 ステージ上でマイが釘を刺す。
「ボクの名前を言えた人だけね!! ボクの名前は、ツェツィーリア・マイマクテリオン!! はい! 復唱ーー!!」
「ツェテ……あれ!?」
「ツェツィーアリ……?」
「ツェツイアマク?」
 幾人もがチャレンジするが、結局、マイの本名を言えた者はおらず、皐月は酔っ払ったマイを抱えて店を後にしたのであった。
 元の賑やかさが戻った店内で、セルシウスは、ふと蜂蜜酒の販売の件とエルデネストの件からアイデアを思いつく。
「そうか! 疲れた警備員達にならば売れるかもしれんな!」
 考えを膨らませたセルシウスは、シンに別れを告げ、警備員達の詰める小屋へ営業へ向かうのであった。