リアクション
第五十九試合 『ただいま清掃中です。選手のみなさんに御注意いたします、くれぐれも武舞台にゴミを散らかさないでください。生活ゴミは、きちんと自宅で処理していただけるようお願いいたします。さて、そろそろいいですか? では次の試合です。緋王 輝夜(ひおう・かぐや)選手と、ミルゼア・フィシス(みるぜあ・ふぃしす)選手、武舞台へどうぞ』 「勝っても負けても、怨みっこなしだかんねー」 頭の上に紙風船を載せた緋王輝夜が挨拶をする。 「さてさて、輝夜さんがどこまで行けるか見ものですねぇ。さあ、楽しませてください」 また場所を移動して、今度は無事に観戦できながらエッツェル・アザトースがつぶやいた。 「よろしく」 黒い鎧に身をつつんで黒薔薇を髪の左側にシンボルとして挿したミルゼア・フィシスが答えた。右肩には、大剣ディザスター・オリジンを剥き身で担いでいる。 『さあ、試合開始です』 「いっくよー、でておいで、ツェアライセン」 緋王輝夜がフラワシを呼び出す。 「何もいないけれど、フラワシ? だったら、先に倒すしかないわね」 ミルゼア・フィシスが、大剣を大上段から振り下ろした。 「きゃっ」 緋王輝夜がミラージュでかろうじて避ける。 「今だ! いっけえ、これがあたしの全力全開だぁぁ!!」 緋王輝夜が嵐のフラワシをミルゼア・フィシスに突撃させた。 その殺気を看破したミルゼア・フィシスが紙一重でそれを避ける。右側を通りすぎた突風が、ミルゼア・フィシスの黒髪を舞い踊らせた。それが収まる前に、ミルゼア・フィシスが踏み出す。 「本体は、それか!」 横一線で、ミルゼア・フィシスが緋王輝夜の頭の風船を薙ぎ払った。 「あらら、やられてしまいましたか」 ちょっとあっけなかったかなと、客席で見ていたエッツェル・アザトースがつぶやいた。 「頑張ったほうじゃないかしら」 そう言って大剣をまた肩に担ぐと、ミルゼア・フィシスは何ごともなかったかのように武舞台を下りていった。 『勝者、ミルゼア・フィシス選手です』 第六十試合 『続いては、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)選手対、エリス・クロフォード(えりす・くろふぉーど)選手です』 「イルミンスール魔法学校、ソア・ウェンボリスです。よろしくお願いします」 イルミンスール魔法学校の制服を着たソア・ウェンボリスが、武舞台の上でぺこりと挨拶をした。 「ちょっと待ってくださいね」 「さあ、ソア、変身だ」 何やらごそごそしだすソア・ウェンボリスの足許で、ぬいぐるみ妖精がつぶやいた。 ソア・ウェンボリスが、シンボルの右銀翼の髪飾りを掲げる。目映い光の柱がソア・ウェンボリスをつつみ込んだ。着ていた制服が光に千切れてソア・ウェンボリスの裸体のシルエットの周りを回転した後、魔法少女のドレスに変化して素肌をつつみ込んでいく。 「武闘大会に差す一条の光! 魔法少女ストレイ☆ソア、参上です!」 ソア・ウェンボリスが名乗りをあげた。 「よろしくお願いします」 天御柱学院制服のエリス・クロフォードも、シンボルは右銀翼の髪飾りだ。 「頑張れエリ〜。怪我するなよ〜」 桐ヶ谷煉が、応援する。 「あたしは負けたんだ、おまえも負けろー」 すでに敗退しているエヴァ・ヴォルテールが叫んだ。 『それでは、試合開始です』 「いきます!」 バスターソードを構えて、エリス・クロフォードが突っ込む。 「魔法少女ストレイ☆ソア、まっこう勝負でお相手します! 炎よ、彼の者をつつみ込め!」 ソア・ウェンボリスが、火術を放った。 あわてて、エリス・クロフォードが避ける。 「もっと速く……」 今度はランスバレストで一気に突っ込む。 「来たれ、怒りの雷よ!」 今度は、ソア・ウェンボリスが雷術で応戦してきた。炎よりも速い。 「我求めるは、天翔る翼!」 なんとかカイトシールドでエリス・クロフォードが受けとめる間に、ソア・ウェンボリスが空飛ぶ魔法↑↑で宙に逃げた。またも外されてしまったエリス・クロフォードの手が痺れ、バスタードソードが床に音をたてて落ちた。 「もうそこまでだよ」 武舞台に戻ったソア・ウェンボリスが、呪文の詠唱に入る。 「氷雪よ、敵を封じよ!」 エリス・クロフォードの背後から氷術を叩きつける。だが、武器のないと思われたエリス・クロフォードが、剣型の光条兵器「プリベント」を顕現させて、振りむきざまに薙ぎ払ってきた。 「ひゃん」 もろに氷術を浴びて、凍りついたエリス・クロフォードの髪から髪飾りが落ちた。だが、同時に、エリス・クロフォードの光条兵器も、ソア・ウェンボリスの髪飾りだけを破壊している。 「そんな……」 ソア・ウェンボリスが、がっくりと膝をついて倒れた。変身が解けて、元の制服姿に戻る。 「ああ、ソアの本体が……。殺しちゃうなんて、酷いよ」 駆け寄ってきたぬいぐるみ妖精が叫ぶ。 「死んでませんし、本体はこっちです!」 むくりと起きあがって、ソア・ウェンボリスが叫んだ。単に負けたショックでがっくりしただけだったらしい。 『両者、相討ちです!』 シャレード・ムーンの声が響いた。 「う〜、私の負けか……」 「へっへっへ〜」 がっくりと帰ってきたエリス・クロフォードの背中を、エヴァ・ヴォルテールがバンバンと乱暴に叩いた。 「二人ともお疲れさん。順位も同じだったんだしもう仲直りしろよな?」 これでおさまってくれよと、桐ヶ谷煉が二人に言った。 |
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