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地球に帰らせていただきますっ! ~5~

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地球に帰らせていただきますっ! ~5~

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 ■ 本国に里帰り ■



 結婚して以来、一度も本国に帰っていないことに気付いて、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)は夏期休暇を利用して帰国することにした。
 駐日大使の父、ダバ・ブルーウォーターに連絡を入れてみると、偶然父も同じ時期に一時帰国するという話だった。
「丁度良いですねぇ」
 国にも帰れて父にも会える。
 そう思って帰国したのだけれど……。

「……ゆっくりしている暇があるわけ無いですよねぇ」
 分かっていたことだけれど、とレティシアは嘆息した。
 帰国して以来、国王への挨拶から始まって、TV出演やら新聞社の取材やら、レティシアのスケジュールはびっしりと埋められていて、のんびり家族団らんだなんて時間は全く取れない。
 父は父で忙しそうで、こちらもレティシアとスケジュールを会わせるような余裕は無いようだ。
 普通の家庭のように、ゆっくりと父と語らうことが出来ないのを残念に感じながらも、レティシアは仕方がないかと諦める。
「まぁ、王族の端くれとしての責務は果たさないといけませんしねぇ」
 レティシアの王位継承権の順位はかなり低いが、それでも王族であることは間違いない。普段パラミタで自由にさせてもらっているのだから、こんな時ぐらいは役目を果たすべきなのだろう。
 実家への帰省というよりは、本国での公務をしに来たようなものだけれど、レティシアは文句は口に出さずにそれらをこなしていった。

 ようやく父との時間が取れたのは、明日にはパラミタに帰るという夜だけだった。
 普段は厳格な父親だけれど、娘のレティシアとこうして私的に向かい合う時だけはフランクだ。
 やっと、この国の王子とその娘としてではなく、普通の父親と娘として、2人はゆっくりお茶を飲みながら話をした。
「旦那様は今回はお留守番ですねぇ」
 この忙しさに付き合わせるのも申し訳ないし、とレティシアが言うと、父は夫婦の生活が気になるらしく、あれやこれやとレティシアに質問を重ねた。
 こういうところはやはり父親というべきか。
 いつもは遠く離れて生活していても、娘とその夫のことを気に掛けていてくれるのだろう。
「そうですねぇ、それなりにうまくやってると思いますけどねぇ」
 父の質問にまともに答えるのはちょっと照れくさいけれど、心配を解消するのも親孝行のうちかと、レティシアはうるさがらずに父親の問いに答えた。


 南の国の一角で。
 父と娘の穏やかな時間が流れてゆく。
 良い香りのするお茶と、パラミタでの土産話を存分に味わって――。