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砂上楼閣 第一部(第1回/全4回)

リアクション公開中!

砂上楼閣 第一部(第1回/全4回)
砂上楼閣 第一部(第1回/全4回) 砂上楼閣 第一部(第1回/全4回)

リアクション

 一時は、上空から襲いかかってくる第六天魔衆に為す術もないと見えた薔薇学生達であったが、彼らもまた善戦していた。
 剣の花嫁ティア・ルスカ(てぃあ・るすか)は、光の糸である光条兵器を呼び出すと、パートナーであるヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)に向かって放り投げた。
「使ってください! 私は負傷者の治療に回ります」
「まかせておけ!」
 ヴィナは光の糸を受け取るなり、襲いかかる空賊に向かって一閃する。キラキラと光る光の糸は、まるで蜘蛛の巣のように上空を覆い尽くし、空賊が乗った小型飛空艇にからみつく。巻き付いた糸をほどこうと空賊がもがいているうちに、ロジャー・ディルシェイド(ろじゃー・でぃるしぇいど)はすでに炎を呼び出す魔法の呪文を唱え終えていた。
「いっきますよ〜」
 ロジャーの手から放たれた炎が空賊に襲いかかる。空賊の乗った機体が大きく傾いた瞬間、カルスノウトを構えたテリー・ダリン(てりー・だりん)が上空へと飛び上がり、敵を空へと叩き落とす。
 光学迷彩で姿を消した陸 雪宗(おか・ゆきむね)はマストの上に登っていた。両足をマストにがっちりと絡め身体を固定すると、空賊に向かってハンドガンを連射し、甲板で戦う者達の援護に努めている。
「痺れちまえ!」
アイザック・スコット(あいざっく・すこっと)が得意の雷術で敵の動きを止めれば、その隙を狙うように抜刀した瑞江 響(みずえ・ひびき)が斬りかかる。
 飛行手段はないものの必死の抵抗で乗船を許さない薔薇学生達に、第六天魔衆の面々は焦りを感じはじめていた。
「さっさとしやがれ、オッサン」
 しかし、このとき南鮪の隠れ身を使用した信長とメニエス・レイン(めにえす・れいん)の一隊は、外部に露出したプロペラへと密かに回り込んでいた。信長が動力部分を狙っていることに気がついた永夷 零(ながい・ぜろ)が小型飛空艇を急行させたが、時すでに遅し。信長は上段に構えた槍を宙で一閃させると、プロペラのジョイント部分に必殺の一撃を加えた。間髪入れずメニエスがサンダーブラストを叩き込む。
 その瞬間、軋むような音を立ててプロペラが動きを止めた。



「ヒャァッハァ〜! 偉そうなデカ物もエンジンやられりゃひとたまりもねぇってな!」
 南鮪の高笑いが響く。大きく傾き、小刻みに揺れ始めた特別機の中では、外務大臣が身を隠す貴賓室に向かってルドルフが全力疾走していた。
 途中、動揺を隠せない薔薇学生達を見つけると、すれ違いざまに檄を飛ばす。
「余計な荷物はすべて外に放り投げろ! 少しでも機体を軽くするんだ!」
 貴賓室の扉を開け放つと、そこにはミゲル・アルバレス(みげる・あるばれす)クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)に守られたハイサム外務大臣が、脅え震える接待役の女生徒達を宥めるように、聖書の一説をゆっくりと読み上げていた。
 ハイサムは静かに聖書を閉じると、ルドルフに言った。
「私はどうすればよろしいですか?」
 警備の不手際を責めるわけでもない。だからといって死を覚悟しているとも思えない。その黒い瞳は、月影を映す夜の湖のように、ただ穏やかだった。
 ルドルフはハイサムによって保護された少女達へと視線を向けた。
「イルミンスールのエリス・カイパーベルト(えりす・かいぱーべると)嬢はいらっしゃいますか?」
 突然名前を呼ばれたエリスは、ビクリと身体を震わせ顔を上げた。
「万が一の場合、君の空飛ぶ箒で外務大臣を脱出させて欲しい。他の者達は皆、甲板へ。2〜3人ずつに別れて教導団の小型飛空艇に乗り込んでください」
 指示を出すや否や踵を返したルドルフを、エリスが悲痛な声で呼び止めた。
「待ってください! 私一人では無理です。外にはまだ空賊だっているのに…」
 自らが課せられた使命の重さに震えるエリスをルドルフは静かに見つめた。
「甲板から乗り移っている最中に狙撃される可能性だってあるんだ。目立たぬよう外務大臣に脱出していただくには、これ以外の方法はない。百合園生達が接待役を務める中、イルミンスール生である君が何故この場にいるのか。その意味を考えてみたまえ」


 数多の命を乗せた飛空艇は、パラミタの大空に飲み込まれようとしていた。
 何時如何なる瞬間であっても足掻き続ける強き心を持つ者だけが
 歴史という名の定まりし結末を覆すことができるであろう。


                  (砂上楼閣 第一部第一話了)



担当マスターより

▼担当マスター

芙龍らむだ

▼マスターコメント

砂上楼閣第一部第一話にご参加いただいた皆様、
そしてここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。

リアクションの公開が遅くなってしまい、大変申し訳ありませんでした。
総勢112人の壁は高かったです…。以後、このようなことのないよう時間配分には気を使っていきますので、引き続き第二話以降もよろしくお願いいたします。

今回、民族問題という小難しいテーマであったにも関わらず、真剣に考え、アクションをかけてきてくださった方が多かったことが大変印象的であり、すごく嬉しかったです。中には「具体的な国名を出した上で、このようなテーマを扱って問題にならないのか?」と心配してくださった方もいらっしゃいました。この件に関しましては、プロット作成段階でメインディレクター様にご確認してありますので、ご安心くださいね。
蒼空のフロンティアは、今よりもちょっとだけ未来で繰り広げられるファンタジーです。なので、劇中で私が描いているイスラエルやサウジアラビアは、本来の国家とは少し異なる未来を選んだ架空の国として捉えていただければよろしいと思います。

ジェイダスやルドルフ、雪之丞と言ったNPCはすべて皆さんを砂上楼閣の世界へと誘うナビゲーターにすぎません。皆さんの分身であるMC・LCが持つ夢、奮闘や挫折、「こうなりたいと願う」未来の姿…たくさんの糸を寄り合わさり、新たな歴史という名のタペストリーが織り上がるのです。

あ〜でも、いくら希望しても、いきなり見ず知らずの国家的要人に会いにいって交渉しようとしたり、いきなり大地を2分するようなトンデモ必殺技をくりだしたり…といった一般常識として「アリエナイだろ…」ってアクションは通りませんのであしからず。

まぁ、要は設定に頼るなってことです。2本の手に持てるだけの武器と道具、後は自分の頭脳だけで勝負する方がカッコイイよ。

それから一生懸命に行動内容のみを書かれてくる方もいらっしゃいますが、あれがど〜して、こ〜して、こ〜なってという行動だけよりも、そのキャラが何を想い、そこにいるのかを伝えていただいた方が結果として活躍しやすくなります。

やっぱりね。キャラの性格や考えが分からないと、いただいたアクション以外の行動がさせられないんです。下手すると置き場がなくて、モブキャラにせざる得ない…そんな場合もあります。他の参加者に比べ自分のMCは描写量が少ない…と感じたときは、大概私があなたのキャラがどんな子なのか、つかみ切れていない場合です。
例え初めてシナリオを担当させていただくキャラでも、動く子は動く。アクションを読んだ瞬間、勝手に私の頭の中を飛び回ります。別に積極的なキャラでなくてもいいんです。大人しくて自分に自信が持てなくて…そんな地味なキャラでもいいんです。
あなたの中にいる大切な我が子について、もっと私に教えてください。そうすれば次はもっと活躍することができると思います。
後よくあるのが、それがキャラの考え方なのか、背後の方の考えなのか、判断がつかないパターン。キャラは活躍しているけど「イメージが違う!」という場合は恐らくこのパターンです。こちらも合わせてご注意ください。


砂上楼閣第二話は10月19日(月)の公開を予定しております。
パラミタの大空の下、再び皆さんと出逢えますように!