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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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リアクション

「……せ〜ちゃんの……馬鹿……」
 八神 誠一(やがみ・せいいち)を引きずりながら、オフィーリア・ペトレイアス(おふぃーりあ・ぺとれいあす)は日が暮れた公園を歩いた。
 バレンタインのために手作りチョコを準備していたオフィーリアはバレンタインの朝にニコニコと笑顔で、誠一にチョコを差し出したのだ。
「今回のチョコは自信作なのだよ」
 キラキラとした目でオフィーリアは誠一を見つめ、要求した。
「さ、食べるのだ。遠慮はせずに」
 オフィーリアの料理のすさまじい腕前を知っている誠一は、遠慮が出来るならば全力で遠慮したいと思った。
 しかし、それを言い出せず……。
 誠一は、逃げた。
「あっ、待て!」
 オフィーリアは慌てて誠一を追いかけた。

 誠一は山葉を見つけ、山葉にオフィーリアのチョコを差し出して挑んでいた。
 チョコを欲する山葉にオフィーリアのチョコを差し出し、賭けを持ちかけたのだ。
「だったら、これを食べても同じ事を言えるか賭けてみませんか? 賭けの内容は、このチョコレートを完食し、心からおいしかったと言えるかどうかで、どうでしょうかねぇ。あなたが勝てば、喜んであなたの味方をしますよ、負けたら、馬鹿なことを止める、でどうでしょう?」
 しかし、山葉が勝負を受けるかどうかの返事をする前に、ウォーハンマーを持ったオフィーリアが現れた。
「なにをやっているのかな〜?」
 八神 誠一に200のダメージ!
 誠一は気絶してしまった。
 ダメージにものすごく補正が入っている気がするが、きっとオフィーリアのパワーブレスと想いの力のせい……としておこう。
 そんなわけで気絶した誠一を引きずり、オフィーリアは帰ることになったのである。
 
「…………」
 自分の呟いた言葉に、オフィーリアは今まで無自覚に抱いていた誠一への好意を自覚した。
「あ、あくまで義理だよ……」
 自分に言い聞かせるようにオフィーリアは呟く。
 しかし、その呟きはつまりは自分にそう言い聞かせないといけないほど好意のある現れただった。
(……こんなのじゃなくて、他にもっと良い男がいるでしょうに)
 密かに気絶から復活していた誠一は内心でそう思っていた。
 人殺しである自分が誰かから好意など受けるに値しない。
 大切な女性の面影を持つオフィーリアには幸せになって欲しいと誠一は願っている。
 だから、幸せになるために……誠一はずっと気絶をしている振りをして、オフィーリアの好意に気づかない振りをするのだった。


「不憫な眼鏡はどうしたかねぇ」
 日比谷 皐月(ひびや・さつき)雨宮 七日(あめみや・なのか)と街を歩きながら、山葉のことを口にした。
 蒼学内の噂では、山葉は花音からもチョコがもらえず、街を駆け抜けているらしい。
「チョコなんてもらえないからって気にすることねーと思うんだけどなぁ」
 頭の後ろに手を組んでそう呟く皐月に七日も同意した。
「たかだかチョコが貰えない位で、女々しいにも程が有ります。テロルチョコでもあげてみましょうか?」
「まぁ、いいんじゃないかな。山葉が邪魔してくるわけじゃなければ」
 実際、山葉に構うためだけにバレンタインを費やしてくれてる人もいるので、皐月たちのお出かけは邪魔されずに済みそうだった。
 七日は先ほどお店で買ったチョコを手に、少し考え込んだ。
「これ、どうしますかね」
「んあ? それは後で部屋に帰って一緒に食べればいいだろ」
「そうですね」
 皐月の言葉に七日は納得し、目的の地へ急いだ。
「生活雑貨を買うんでしたよね。今ならデザインが色んなものが出ていて、良いかもしれません」
「なんかハート型とかばっかりで、普段使うのは大変そうなものが増えちゃってるかもだけどな」
 笑いながら皐月は一緒に足を速める。

 2人で一緒に生活雑貨を見に行くのは、これからもずっと離れることがないから。
 離れられない運命だから。
 それはパートナーと言う制約。
 あるいは呪い。
 たくさんの相手とパートナー契約を結ぶ地球人も結構いるが、これは実は意外と危険な行為だ。
 パートナーに何かが起きれば、その契約者たる地球人にも影響が及ぶ。
 仮にものすごく強い地球人がいて倒せないとしても、そのパートナーであり、冒険にも出ず、まったりと留守番ばかりしている者がいたとすれば……無理にその強い地球人を倒さなくとも、パートナーの方を攻撃すれば、地球人側に影響を与えられるのだ。
 パートナーが倍になれば2倍に、7人とかになれば7倍に、貸してもらう力も増える分、危険が増えるのだが、それに気づかない人も時々いる。
 七日と契約したときの皐月もそうだった。
 しかし、砕音・アントゥルース(さいおん・あんとぅるーす)先生のように、パートナー死亡による後遺症で、頭痛や幻覚に悩まされている例を実際に目の当たりにし、その危険と制約に皐月はやっと気づいた。
 最初は恐怖し、逃れられぬ運命に痛む心を癒すように、皐月は恐怖を好意にすりかえた。
『好きだからそばにいる。自分は七日が好きだからそばにいたいんだ』
 そう思えば楽になると思ったからだ。
 欺瞞を、ずっと続けている。

「チョコレートをあげたい人が……」
 七日の言葉に、皐月は思考から現実に心を引き戻した。
 だが、それと同時に、チクッと胸が痛んだ。
「バレンタインデーにチョコをあげたい人が?」
 極力、冷静を装って皐月が問いかけると、七日はこくりと頷いた。
 その途端、皐月の胸がもっと強く痛んだ。
「バレンタインデーにチョコレートをあげたい人がいる人は、これだけのチョコがあると迷ってしまうでしょうね」
 七日に言われて、皐月は自分たちがバレンタイン特別フロアのそばにいたことに気づいた。
 最近では生活雑貨店でも、こういったものを扱っていて、手作り用のラッピング用品のほかにも、人気お菓子ブランドのチョコなども並んでいたのだ。
「あ、ああ、そうだな……」
 やっと話が見えて、さつきは落ち着いて頷く。
「…………」
 七日は黙りながら、いつかこういうものを渡しあう日が訪れるのかな、と考えてみた。
 先に好意を抱いたのは七日。
 そして、契約を申し出たのは七日自身。
 皐月を呪ったのは七日自身。
 何か言えるはずがない。
 これ以上、皐月に呪縛を増やせない。
 不意に皐月が七日の手を取った。
「それじゃ、向こう見に行くか」
 七日は素直に皐月についていきながら、繋がれた手を見つめ、自分にしか聞こえないような小声で言った。
「これからも……共に居ますから……」

 小指に繋がるのは、血塗られた鎖。

担当マスターより

▼担当マスター

井上かおる

▼マスターコメント

 皆様ご参加ありがとうございます。井上かおるです。
 リアクションの公開が遅くなり、本当に申し訳ございません。

 この度は沢山の方にご参加いただき、まことにありがとうございました。
 突然の増員により、バレンタインデーにお届けできず、また、予約のために朝にお時間を取って頂いた方には、申し訳ないことになってしまいましたが、今回だけは「一緒に参加する予定だった方が参加できなかったので……」という事態を避けたいという私のワガママにより、増員をさせて頂きました。
 このようなことになってしまったにも拘らず、お付き合いくださった皆様には厚く御礼申し上げます。

 なお、今回、山葉にアクションをかけられた方が70人以上いらっしゃいましたので、山葉メインの方以外(例えば山葉にもチョコをあげるとか、自分達の行動に山葉を混ぜてあげるとか)は山葉との絡み描写はない形にさせて頂きました。

 また、NPCもLCさんもMCさんも、リア執筆期間及び公開前後の他の状況はほとんど加味しない状態でリアの執筆を行っていて、かつ、執筆時期と状況が変わっていたりもあるので「あれ、このNPC、今こんなことできる状態じゃ……」とか「うちのLCは今は……」とかあるかもしれませんが、そのあたりはご了解頂ければと思います。

 目次でも書きましたが、この度のリアクションでは各マスター様にNPCさんについてお伺いしたり、PCさんとNPCさんについてお聞きしたり、アクションを判断して頂いたり、本当にいろいろお世話になりました。
 この場を借りて、御礼申し上げます。

 私信やお言葉、本当にありがとうございます。
 温かいお言葉に励まされました。
 
 何人かの方に称号をお届けしました。
 今回の行動でというのもありますし、キャラ設定を見て、私が勝手につけたりもあったりします。

 それではまたお会いする日まで。
 皆様、大切な人と、恋人と、友達と、パートナーと、仲間とどうか仲良くお過ごしください。
 末永く皆様の仲が続き、また自分が書く日が来たときに、同じ顔ぶれで書ける事をお祈りしております。