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嘆きの邂逅(最終回/全6回)

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嘆きの邂逅(最終回/全6回)
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〇     〇     〇


 ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)の携帯電話に、とある人物からの連絡が入った。
 電話を切った後、ナガンはふと空を見上げて……。
 思えば、随分と無駄な遠回りをしたもんだなぁと思う。
 そういえば、最初に組織と絡んだのも、ある人物――崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)からの協力要請を受けたからだった。
 これまでの事の反省は後にして。
 ナガンは強化スーツを着込み、ネクタイスーツに腕を通していく。

 準備を整えた白百合団員達は、組織本部近くで現地を確認した後、班長のロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)主導で打ち合わせを行う。
 集まったのは団長の桜谷 鈴子(さくらたに・すずこ)とロザリンド、ロザリンドのパートナーのメリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)
 冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)と白百合団に入団したエノン・アイゼン(えのん・あいぜん)雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)
 ファビオと面識のあるロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)真口 悠希(まぐち・ゆき)
 それから、友人のミクルの為にもとファビオを探し続けてきた他校生の緋桜 ケイ(ひおう・けい)悠久ノ カナタ(とわの・かなた)だった。2人はロザリンドの推薦も得ての参加だ。
「潜入には人数が多すぎますので、何人かにはここに残っていただき退路の確保、もしくは正面の作戦に加わっていただきます」
 鈴子がそう皆に言う。
「最初の仕事はファビオ救出ねぇ、団長。無事に闇組織本部制圧できたら私を名誉隊員に、ファビオが無傷だったら名誉顧問にしてよねぇ、ふふ」
 そんな緊迫した空気の中、リナリエッタが笑みを浮かべながら言った。
「もう……リナさんは……」
 鈴子は脱力したように苦笑する。
 リナリエッタは鈴子の側にいることが多いものの、白百合団に入団することはなかった。
 鈴子は白百合団の団長として、一般の百合園生のリナリエッタと付き合ってきた。 
 色々あって。先日、リナリエッタは鈴子が傷つくことが何よりも嫌だから、『白百合団隊長の鈴子』を守るため、白百合団に入ると鈴子に話して、団員となったのだ。
 私のことではなく、百合園や一般の百合園生を守ってあげてと、鈴子には念を押されているが、それは笑ってかわしておいた。
「退路の確保ですが、団長にはそちらに回っていただきたいと思います」
 ロザリンドがそう提案する。
「ミルミさんの事もありますし、貴方の身に何かあったら困ります」
 小夜子もロザリンドと同意見だった。
「分かりました。ありがとうございます。私は退路の確保と、もしもの時のサポートに徹することにいたします。あと、リーアさんの身を案じて離れない百合園生がいましたので……護衛をお任せしてリーアさんも、潜入には加わらず、無線で指示を出すことになります。元々彼女にも漠然とした場所しか分かりませんので」
「わかりました。潜入前の複数地点からの調査はお願いします。潜入班はファビオさんが見付かるまでは、可能な限り騒ぎを抑えましょう。彼の身柄の確保が出来ましたら、弾幕を使って脱出をします」
 ロザリンドの案に鈴子が頷く。
「行動は奇襲組みが突入を果たし、騒ぎが起きた後で。リーアさんからの指示は私が受けます。その情報とあわせて、トレジャーセンスで探していきます」
 小夜子がロザリンドの案に補足をしていく。
「私は隠れ身で気配を殺し、黒檀の砂時計で素早く行動するわぁ。パートナーの同行はダメかしらぁ?」
 リナリエッタの言葉に、鈴子は苦笑しながら頷いた。
「白百合団員には守秘義務があります。このような情報の漏れが命取りになる作戦の場合、パートナーにであっても、団員ではない者に作戦を教えることはしないで下さいね」
「分かったわぁ」
 本当に大丈夫かしらとリナリエッタを心配そうに見る鈴子に、小夜子が、
「信頼を失ったと落ち込んでいたようですし、団長からの信用を取り戻したいみたいですから。信頼出来ますよ」
 と、口ぞえをする。
「……分かりました。リナさん、実力はありますものね。非常に心配ではありますが」
「任せといて〜」
 リナリエッタはニヤニヤと笑みを浮かべる。
「突入後はスピードを命に、ファビオの下へ迅速に駆けつけることを目指す。警備兵と遭遇した場合は、騒がれないよう即座に対応しなきゃ、な。……俺は絶対に、ファビオを救出したい、するんだ」
 ケイは強い意思を見せる。
 鈴子は頷いた後、ロザリィヌに目を向ける。
「わ、わたくしは……」
 緊張しているのか、ロザリィヌはいつもの高笑いを見せなかった。
 未だに、大切な人が分校の為に身を投げ打ってまでする事をロザリィヌは受け入れることが出来なくて。
 それを止められなかった自分を責め続け。
 分校生を扇動したりしてしまったことで、分校にも白百合団にも居辛くなってしまって……。
 複雑な思いを抱えながら、ロザリィヌはこの場にいた。
「……ファビオ様と、お話したいことがありますわ。アユナ様のことも存じていますから。必ず探し出しますわ」
 ロザリィヌは憂いを含む目を見せた。
 頷いて、鈴子は最後に悠希に目を向けた。
「静香さまがボクに力がある筈と仰って下さいましたから……今度こそ、皆の力になれる様、ボクも頑張ります。途中の障害を引き受け、皆を先に進ませる役を担当します」
 悠希の言葉に、鈴子は怪訝そうに眉を寄せると首を左右に振った。
「悠希さんはファビオさんと面識がありますのに、他の皆様と違い、やはり何か他の事を考えていませんか? 無茶なことは考えず、退路確保か正面からの作戦の支援にパートナーと共に加わっていただきたく思います」
 この作戦は失敗の可能性が高いファビオの救出作戦だ。参加の動機は違えど、ファビオを救出するという同じ目的のために、協力し合って全力を尽くさなければならない。
 これまでの言動から悠希は桜井 静香(さくらい・しずか)の言葉に振り回されて単独行動に走ってしまい、大事な作戦に支障が出る可能性があると鈴子は判断した。
 そして鈴子は、悠希と自分、リーアを除くメンバーを裏口から突入する潜入班として任命した。

「おっ、団長思い留まってくれたか。ロザリーと小夜子も無理しないでね……と一応言っておくよ」
 離宮対策本部で皆を出来る限り回復させた後、ロザリンドのパートナーのテレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)は連絡要員として本部で留守番をしていた。
 ケイのパートナーの『地底迷宮』 ミファ(ちていめいきゅう・みふぁ)も一緒に心配気にケイ達の帰還を待っている。
「作戦開始後には場所教えてもらえるそうだから、それから私も駆けつけるよ」
 リナリエッタのパートナーのベファーナ・ディ・カルボーネ(べふぁーな・でぃかるぼーね)も本部に待機して、リナリエッタと電話でやりとりしている。
「しかし、アイツは殴りたかった。リーアに迷惑かけたらマジ殴るけど」
 本部で見かけた久多 隆光(くた・たかみつ)のことを思い浮かべながら、ぶつぶつテレサは呟いている。
 でも、真剣な顔付きだったし、きっとリーアや皆の為に頑張ってくれる。
 そう信じてみたくなる男でもあった。