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薄闇の温泉合宿(最終回/全3回)

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薄闇の温泉合宿(最終回/全3回)
薄闇の温泉合宿(最終回/全3回) 薄闇の温泉合宿(最終回/全3回)

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○     ○     ○


「あったあった。パーティに間に合うね!」
 セシリア・ライト(せしりあ・らいと)が一方を指差す。
「良かったですぅ。足元気をつけて下さい〜」
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)がほっと息をつきながら、注意を促した。
 メイベルとパートナー達は、今日も伝説の果実を探しに来ていた。
「色は今まで手に入ったものと同じだね。食べたことない色の果実にするか、味がわかってる果実にするか迷うな〜」
 果実が生っている木の前にたどり着いたセシリアは、どの色の果実を持って帰るか少し悩む。
「4人いますから、4種類持って帰りましょう。食べたことのない色の果実も、是非いただきたいですわ」
「ええ、私もです」
「そっか、そうだね」
 フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)シャーロット・スターリング(しゃーろっと・すたーりんぐ)の言葉に、セシリアが頷く。
「熟してるの〜っと」
 食べごろの果実を探し、セシリアはオレンジと黄色と黄緑の伝説の果実をもぎ取った。
「美味しいスイーツ作ってください〜。味見頑張りますぅ」
「うん、任せて〜。でも味見で全部なくなっちゃわないよう、気をつけないと」
 メイベルにセシリアはふふっと笑みを見せる。
「皆さんにも食べてもらいませんとね〜。ええ、味見といいつつ、平らげてしまわないよう気をつけますぅ。年越しスイーツ、楽しみですね〜。美味しいスイーツを食べたらきっと嫌なことも忘れて、楽しく年越しできるでしょうね〜」
「ううっ、なんかプレッシャーになる、メイベルの期待」
「セシリアのスイーツはとっても美味しいから、大丈夫ですぅ」
「そうですわ」
「ホントに、セシリアさんの料理は綺麗で美味しいです」
 フィリッパ、シャーロットがメイベルの言葉に続けてそう言い、セシリアは「当たり前」などと言いながら、嬉しそうに笑みを浮かべ、気合を入れていく。
「でも、量が少ないですから、それだけではお腹が膨れませんよね」
 そう言って、シャーロットは山菜や他の果実を採って、籠に入れていく。
 このように伝説の果実や食料を探しに出ることが多かったため、食べられるもの、食べられないものの区別もつくようになっており、食材はスムーズに集まっていく。
「こうして自分達で集めたものだと、なおさら美味しく感じるものですわよね」
 フィリッパはぶどうをもぎ取って、籠にそっと入れていく。
「そうですよねぇ。探索でお腹も空きますし〜」
 メイベルは山葵を引っこ抜いて、籠に入れた。
 寒さが厳しくなっており、採れる山菜は非常に少なくなっていた。
 だけれど、苦労して見つけたものだから、よりいっそう美味しく食べれるというもの。
 少女達は沢山の料理が並んだ、楽しいパーティを思い浮かべながら探索を続けていく。

○     ○     ○


「立場関係なく、楽しみたいですね。契約者以外の方もお誘いできたらよかったのですが……今年は急でしたしね」
 神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)は、ミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)と一緒に、ミルミを手伝ってパーティの準備を進めていた。
 テーブルや椅子を並べたり、伝説の果実を使ったスイーツ作りも。……勿論、料理はミルフィには手伝わせてない。新年早々卒倒者を出すわけにはいかないから。
「ロイヤルガードにもなった今、こんな風に色々な立場の方と楽しく過ごせるのはこのような時くらいでしょうか……」
 生地を混ぜながらぽつりと有栖は言葉を口に出した。
「お嬢様……きっと、それが日常になる日がきますわ」
「そうね、ミルフィ」
 有栖がにこっと微笑み、ミルフィは頷いて食器類を準備していく。
「野外ですし、今日は風もありませんから、使い捨てのもの中心にいたしましょう」
「そうね。お湯はこちらでも沸かしていくけれど、会場でも沸かせるようにしておきましょう」
「ええ、準備でしたら任せてください。なんでしたら、そちらのお菓子作りの方も代わりますわよ?」
 ミルフィが小麦粉に手を伸ばす。
 即座に有栖は小麦粉を自分の方に引き寄せた。
「こ、こっちは大丈夫よミルフィ……! 食器類や機材の準備、とてもたすかります。よろしくお願いしますね」
「お任せ下さい、お嬢様」
 道具を持って、トワイライトベルトの方へと向かっていったミルフィの後姿を見ながら、有栖はくすりと笑みを浮かべる。
「ミルフィ、絶対楽しいパーティにしましょうね」

 合宿所の台所では料理を担当するメンバー達が、仕上げに勤しんでいた。
「うお!?」
 ゼスタがキッチンに顔を出すと、そこには豪勢な料理が並べられていた。
「……ヴァイシャリーから取り寄せたんじゃないよな?」
 訝しげな目で、ゼスタは盛り付けをしているスレヴィ・ユシライネン(すれう゛ぃ・ゆしらいねん)に目を向けた。
「森で採れたものと、畑から採ってきたもの中心で作ったんだ。食材の方は、取り寄せたものなんてないけど、飲み物は?」
 スレヴィは手を止めずにゼスタに尋ねた。
「届いてるぜ、シャンパン、スパークリング・ワイン! 子供が間違えて飲まないように注意しろよー」
「ありがと。やっぱりパーティやるんなら、これくらいは欲しいよな」
 スレヴィはゼスタから酒類の場所を教えてもらい、確認をする。
「ヴァーナーチャン達はこっちな」
 ゼスタは空京から取り寄せたシャンメリーをヴァーナーの側に置いた。
 彼はケーキのデコレーションを一緒にやろうと、ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)に誘われてキッチンに訪れたのだ。
「ありがとです」
 ヴァーナーは微笑んで受け取って、出来上がったお菓子を入れている箱に、一緒にシャンメリーも入れておく。
「畑の手伝いもありがとな。おかげで野菜も沢山使える」
 スレヴィが畑仕事の手伝いも積極的に行ってくれていたヴァーナーに礼を言った。
「スレヴィおにいちゃんが、がんばったからです。お手伝いできてうれしいです」
 ヴァーナーはとても嬉しそうな笑みを見せる。
「素材の味を生かした料理つくるからな」
 スレヴィはそう約束をして、仕上げに入っていく。
「それじゃ、飾りつけするですよー」
 ヴァーナーは森で採れた果実や、取り寄せてもらったものをテーブルの上に並べていく。
「ミルミ、イチゴ置いたりは出来るよ!」
「私は……えっと、生クリームしぼってみたいなっ」
 ヴァーナーはミルミとライナも誘って連れてきていた。
「こっちのケーキには、チョコペンで絵を書くです。ゼスタおにいちゃんもどうぞです!」
 ヴァーナーはゼスタにホワイトのチョコペンを差し出した。
「そんじゃ、最後まで付き合ってくれた皆に、礼の言葉でも書くかな」
 ゼスタはチョコペンを受け取ると、チョコレートケーキに、ありがとうの文字と、ハートマークを入れていく。
「生クリームですわ。ホイップはこちらを塗ってからですわ」
 セツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)が、生クリームの入ったボールをミルミに渡した。
「どうやって塗るの?」
「上からかければいのかな?」
「こうするですよー」
 不思議そうにしている2人に、ヴァーナーがパレットナイフを使ってスポンジケーキに生クリームを塗って見せる。
 2人も真似して塗ってみるけれど、なかなか平らにならない。
「平らにしないと、フルーツが落ちちゃうね」
「フルーツたくさんもいいけど、生クリームたくさんもおいしそう」
 ケーキ作りの難しさと、何かを作り上げる楽しさを知っていく。
「こうですよー」
 ヴァーナーはライナの手の甲を握り締めて、一緒に生クリームを塗ってあげて平らにしていく。
「優しく丁寧に作るのですわ。力を入れすぎると、崩れてしまいますわ」
 セツカは時々アドバイスをしながら、裏方として手伝い、少女達を見守っていた。