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イコン博覧会(ゴチメイ隊が行く)

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イコン博覧会(ゴチメイ隊が行く)
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リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「ふう、助かったぜ」
 地面に転がったままの是空の中で、朝霧垂がほっと一息ついた。
「助かってないんだもん。早くワイヤーをなんとかしなくちゃ」
 このままではいい的だと、ライゼ・エンブが朝霧垂に言った。
「待ってくれ。もう少しで光条サーベルに手が届く……!」
 なんとか脱出しようと朝霧垂がもがいているとき、外部モニタの中に、輝く影がスーッと舞い降りてくる姿が映った。ララ・サーズデイとリリ・スノーウォーカーの乗ったラルク・デ・ラ・ローズだ。
「しまった!」
 朝霧垂がやられると思うまもなく、ラルク・デ・ラ・ローズのマジックソードが一閃した。
 切り裂かれたワイヤーが、弾けるようにして周囲に飛び散る。
「なんだ、助けてくれた? 敵なのに?」
 いったい何が起こったのか瞬間分からなくて、朝霧垂がきょとんとする。
『さあ立つのだよ。堂々と手合わせを願おう』
 外部スピーカーから、ララ・サーズデイの声が響いた。
「お人好しなのか、律儀なのか……、それとも、こちらをなめているのか!?」
 朝霧垂が、立ちあがってマジックソードを構える。
 スッと立てた剣をゆっくりと前方にむけるラルク・デ・ラ・ローズに対して、是空が下段の構えからスッと腕を引いて変則的な中段の構えをとった。
 一呼吸の後に、激しく剣を打ち合わせる音が響いた。
 一機にパワーで押し切ろうとする是空の猛攻に、互いの機体が激しくぶつかり合う。一瞬動きが止まった後に、互いが相手を弾き飛ばし合った。ラルク・デ・ラ・ローズの翅と是空の草摺が翻り、回り込むようにして互いに激しく体を入れ替える。
 マジックソードで敵の攻撃を受け流しつつ、是空が光条サーベルを抜いて敵を攻撃しようとした。だが、今までの蓄積ダメージのせいで、その動きがわずかに乱れる。その機を逃さず、ラルク・デ・ラ・ローズが右肩に剣を突き入れた。
「まずい……」
 あわてて、朝霧垂がワイヤーで敵の動きを封じようと考える。だが、突然動きを変更したことで、さらに対応の遅れを招いてしまった。
 ラルク・デ・ラ・ローズのマジックソードが、深々と是空の喉の部分を貫通していた。センサー系の接続を絶たれた是空の動きが止まる。続く一撃が、是空に止めを刺した。
 
    ★    ★    ★
 
「Bチーム。全滅です。残るは、Aチーム、Cチーム共に二機ずつの戦いとなりました」
 シャレード・ムーンが、経過をアナウンスする。
「やはり、まっこうからの斬り合いはいいね」
 是空とラルク・デ・ラ・ローズの決闘とも言える斬り合いを楽しんだ神和瀬織が言った。
「ええ、迫力がありますね」
 神和瀬織がうなずく。
「でも、真っ二つにできないなんて、まだまだです」
 ちょっと残念そうに、クリス・ローゼンが言った。
「いや、どういう戦いを想定しているんだ、クリスは……」
 ユーリ・ウィルトゥスがちょっと呆れた。同時に、こいつだけはイコンに乗せたら危険だとふと思う。
 
    ★    ★    ★
 
 激しい空中戦を繰り広げるアイオロスとブレイブハートを頭上に仰ぎ見る形で、晃龍オーバーカスタムはなおも突進を続けていた。その視界に、ゴッドサンダーの姿が捉えられる。
「次の獲物はあなたなんだもん」
 ゴッドサンダーが、フェイクとしてマジックカノンを再び構えた。心なしか砲身が曲がっているようにも見えるがお構いなしだ。
 だが、それが銃だろうと剣だろうとジガン・シールダーズには関係なかった。ただ、ひたすらまっすぐに、全力で突っ込んでいく。
「ちょっと、なんなんだもん!?」
 避けようともしない晃龍オーバーカスタムに、ゴッドサンダーが、振り上げたマジックカノンを叩き下ろした。マジックカノンで殴られた晃龍オーバーカスタムの頭部が歪み、傾いて元に戻らなくなるが、体当たりを食らったゴッドサンダーの方はもろに吹っ飛ばされて地面に転がった。
「ははは、止めだ。バラバラに分解してやるぜえ!」
 光条サーベルを抜き放った晃龍オーバーカスタムが、動けなくなったゴッドサンダーを容赦なく踏みつけた。
「模擬戦……否……破壊……。エメト……停止」
 抑揚のない声で、ザムド・ヒュッケバインが止めに入る。
「えー、ますたーの好きなようにした方が、格好いいんだよぉ」
「許可……抱擁……拘束」
「うん、やる!」
 渋っていたエメト・アキシオンだったが、ザムド・ヒュッケバインに言われて、嬉々としてジガン・シールダーズに飛びつくようにしてだきついていった。
「こら、てめえ、何をしやがる!」
 ゴッドサンダーの脚を破壊して完全に沈黙させた上に、さらにコックピットに致命的な一撃を加えようとしていた晃龍オーバーカスタムの動きが、それで止まった。
 そこへ、横合いからアペイリアーのガトリングの銃弾が雨霰と浴びせられた。たちまち蜂の巣にされて、晃龍オーバーカスタムがどうっと倒れる。もともとここまで激しく敵機とぶつかり合っていたので、あっけないほど脆くなっていた。
「残るは……」
 無限大吾が、ガトリングガンの残弾に注意しながら、砲身を上空にむけた。
 味方のブレイブハートはほとんど動かず、アイオロスの突進をマントでぎりぎり躱しつつ、カウンターでダブルビームサーベルをあてようとしている。
「狙うとしたら、二機が接触する直前だよね」
「よし、集中して狙撃するぞ!」
 西表アリカが、敵機に超感覚で意識を集中するのに同調して、無限大吾がスナイプモードで待機した。
「今だ!」
 上空で二機が激突する直前に、無限大吾がガトリングガンのトリガーを絞った。
 そのときだ。
 背後から忍びよっていたラルク・デ・ラ・ローズが、アペイリアーの腕をつかんで無理矢理射角を変えさせた。
「なんだと!?」
 アイオロスにすべての意識を集中していた無限大吾たちは、ラルク・デ・ラ・ローズの接近にまったく気がついていなかった。
「馬鹿な、味方からの攻撃だと!?」
 予想もしていなかった攻撃に、直撃を受けたブレイブハートの体勢が崩れた。
「もらった!」
 平等院鳳凰堂レオが、ダブルビームサーベルでブレイブハートの両腕をフローティングユニットごと斬り落とした。浮力を失ったブレイブハートが墜落していく。
「よくも!」
 やっとラルク・デ・ラ・ローズをふりほどいた無限大吾が、ダブルビームサーベルをアペイリアーに抜かせた。そのまま白兵戦に持ち込もうとするところへ、アイオロスからのマジックカノンが降り注ぐ。弾幕を張られて、アペイリアーの動きが止まった。そこへ、ラルク・デ・ラ・ローズが突っ込んでくる。スプレッドグレネードが反応して迎撃するが、ラルク・デ・ラ・ローズのマジックソードはアペイリアー腰部のエネルギーバイパスを切断していた。
「勝負ありました。Aチームの勝利です!」
 シャレード・ムーンが試合終了を告げる。
 沸き上がる歓声の中、ラルク・デ・ラ・ローズとアイオロスが観客席の前に進み出てならんだ。他のイコンたちは、回収部隊のイコンが回収して、それぞれ空京大学の修理工場へと運んでいっている。
 コックピットハッチを開くと、パイロットたちが姿を現して、観客たちにむかって手を振った。
 これで模擬戦は無事終了したと思われたのだが……。
「はははは、それで勝ったと思うなよ。最強は俺たちだあ!!」
 突如不穏な声が響き渡ったと思うと、夕日をバックにして丘の上に四機のイコンがずらりと姿を現した。その上には、それぞれのパイロットが乗っていた。
「何者だ!?」
 平等院鳳凰堂レオが誰何した。