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【裂空の弾丸】Recollection of past

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【裂空の弾丸】Recollection of past
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エピローグ

「ふうっ……なんとか追い払えたわねぇ」
 ハデスの撤退を確認してから、ようやくベルネッサは息をついた。
 ブリッジ内にもやっと安堵の空気が広がる。
 そのときである。
「ベル」
「えっ……」
 フェイに呼ばれて振り返ったベルネッサの視界には、たくさんの契約者たちの姿があった。
 その視線は一点――ベルを見つめている。
 慌ただしくて忘れていたが、彼女が戻ってきてくれたことを、改めて喜んでいてくれているのだ。
「ベル、おまえは一人じゃないよ」
 フェイが真っ直ぐな瞳で見つめながら言った。
「フェイ……」
「そうそう! 私たち、ベルのために、ここまで来たんだもんね!」
 と、美羽が満面の笑みで言う。
「ほら、あんたも……」
 ドンッと、セラフが凶司の背中を押す。
「って、押すなってっ!」
 つんのめるように前に出た凶司は、ベルネッサの顔を見て急に恥ずかしくなったようにどぎまぎした。
「えっとその……美羽たちの言う通りですよ。僕たちは、ベルだから……一緒にいたいんです」
「あたしだから……?」
「そうよ」
 セレンフィリティが腕を組みながらほほ笑んでいた。
「他の誰でもない、ベルだからね」
 すると、セルファも笑みを浮かべながら、
「大切なことは“自分が誰だったか”じゃないわ」
「――“これからどうするか”、ですわよ」
 ユーベルが続けるように、リネンから預かった言葉を告げた。
「これから、どうするか……」
 ベルネッサはその言葉を噛み締めるようにつぶやいた。
「ベルさん……これから、どうする? それを決めるのは、あなたですよ」
 そう言ってほほ笑む朝斗は、ベルネッサに判断を促した。
 もちろん、ベルネッサの下した決断は――
「――決まってるわ! 天空城へ! そして、無転砲の発射を止めるのよ!」
「そうこなくっちゃね! それじゃ、さっそく準備を始めましょう!」
 ルシェンがそう言って、契約者たちに持ち場につくよう指示を出した。
 ベルネッサはその間、自分の出生について少し考えてみた。
(……父さん……)
 父はクォーリアの騎士だった。
 この浮遊大陸を守る者たちで、大陸を支配しようとしたアダムと戦った。
(また、そのアダムが目覚めようとしているのだったら…………今度こそ……あたしが…………)
 自分の運命と宿命に決着をつけることを、ベルネッサは固く誓ったのだった。

● ● ●


 ここは、飛空艇内部の通路である。
 そこを歩く一人の女がいた。真っ白な髪を長く伸ばした女だ。
 その手には、黄玉と藍色に輝く剣を握りしめている。
 すると、その後ろから――
「イブっ!」
 彼女を呼び止める声がした。
 イブが振り返る。そこにいたのは、呼雪であった。
「お前か……」
 イブがぼそりとつぶやくように言う。
 呼雪はそんな彼女の態度にゆっくりと問いかけた。
「どうして……誰にも言わずに行こうとしたんだ……」
「…………ここには、私の居場所はないからな」
「そんなことはないだろう。時が満ちれば、ベルにだって伝えるべきことがあるはずだ。あなたは、ここにいなければならないんじゃないのか」
「…………」
 呼雪の問答に、イブは答える術を持っていなかった。
 彼の言うことはまさしくその通りであった。だからこそ、イブは口を閉ざしたのである。
「……戻ろう。あなたはどう思っているか知らないが、ベルにはきっとあなたが必要だ。クォーリアを知る、あなたが」
「また、私は逃げ出すかもしれんぞ。それでも、いいのか?」
 それはイブにとって自分自身への問いかけでもあったのかもしれない。
 彼女は自分を信用していないのだ。それだけ、自責の念が彼女を苦しめている。
 呼雪はそれを知った上で、うなずいた。
「それでも、いいさ。そのときはまた、あなたを探すだけだ」
「…………」
 イブはしばらく押し黙っていたが、やがて、呼雪の傍を通り抜けてブリッジへと戻る道を歩んだ。
 それが、彼女の答えであった。
「……何をしてる。早く戻るぞ」
「ええ、もちろん」
 呼雪は微笑を浮かべ、彼女の後を追っていった。

● ● ●


 戦いが全て終わったとき――
「…………」
 はるかかなたの上空から、飛空艇を見つめる一つの人影があった。
 それは、かつてはエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)と呼ばれた者であった。
 クルーエル・ウルティメイタム(くるーえる・うるてぃめいたむ)をその身に宿し、もはや人間とは呼べない姿になった者。
「…………」
 そいつは戦艦モードへと変形した飛空艇を見て、何を思うか。
 宙へと視線を浮かべて、彼はどこか遠い場所を見ているような目をする。
 もはやそこに人としての意思は存在しない。
 だがなぜか、哀しげだ。
 エッツェルは誰もいない空で、しばらくそうして立ち尽くしていた。

担当マスターより

▼担当マスター

夜光ヤナギ

▼マスターコメント

 シナリオにご参加くださった皆さま、お疲れ様でした。夜光ヤナギです。
 【裂空の弾丸】シリーズ第三弾、いかがだったでしょうか?

 今回も、皆様のアクションには助けていただきました。
 その中で、いくつか新たに決まった事実もあり、僕自身驚いていたりもします。
 さて、今回で飛空艇の名前が決定致しました。

 飛空艇(非変形時):ホープ・シーカー(希望の探求者)
 戦艦(変形時)  :インテンス・ディザスター(激しい災い)

 皆様のご応募、本当にありがとうございました。
 どれも素晴らしい名前ばかりでしたが、響きと意味合いを吟味した結果、こちらを採用させていただきます。

 それでは、またお会いできるときまで。
 ご参加ありがとうございました。