First Previous |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
Next Last
リアクション
イレイザーを殲滅せよ
「最大の懸念だったビショップは片付きましたでありますな」
H部隊に所属、最前線でアクリト艦の護衛をになう葛城 吹雪が伊勢のコクピットで呟いた。だが依然として遺跡へと向かってくるイレイザーの群れは今までと大きく動きを変えることもない。人間の軍隊と違い、司令官が指揮しているのみならず、個々がただただ遺跡の破壊を目的として動いているだけだからだろう。つまり母艦のひとつであるであるアクリトの戦艦の護衛も、依然として必要であるということだ。だがビショップさえいなければ敵の戦力は大幅に落ち、かなり戦闘は楽になっているはずだ。
「ここは敵を引き付けて一気に叩くであります!!」
コルセアが伊勢所属の笠置 生駒(かさぎ・いこま)、シーニー・ポータートル(しーにー・ぽーたーとる)のジェファルコン特務仕様に通信を行う。
「こちら伊勢。今こそ防戦のみではなく、こちらから動くとき。
敵の群れをひきつけ、伊勢の主砲正面に誘いこみをお願い! 危険な役割だから、十分に気をつけて!」
生駒が元気よく応じる。
「任せて! 戦場の火消しとしての役割、バッチリ果たして見せるから!」
相変わらずシーニーは二日酔いだ。
「あ〜。頭痛いんやけどなぁ〜」
それでも状況はきちんと把握している。こぼしながらもコンソールに指を走らせ、敵の移動パターンや進行速度などを計器類から読み取り、イレイザーの集団がなるべく固まった位置と、ぎりぎりそこを掠めて劣り飛行ができるルートの算出を行う。
「このルートが最適や。周囲の警戒、情報収集は任せてや。
多少ドンパチしながら飛んで歩いて、終盤逃げるつもりという感じでバーストダッシュを使う。
でもって伊勢の主砲の前を横切ればええんちゃうやろか?」
生駒は少し考え、そのプランに賛成した。
「そうね、攻撃は多少入れたほうが効果的だと思うし、そのプランで行こうか」
近隣にいる機体にも通信を入れ、手短に行おうとしている行動を伝えると、土佐を母艦とする岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)の閃電からも通信が入った。オペレーターの山口 順子(やまぐち・じゅんこ)が油断なく索敵しながら通信の安定を図る。伸宏が言った。
「今回も団体さんでお出ましだな。ビショップはいなくなったようだがまだまだ数は多い、協力させてもらうよ。
水中戦はあまりやった事がないが、できるだけのことはするさ。
生駒さんとは別方向から誘導してみる。一気に殲滅できる敵は多いほうがいいしな」
「よろしくなのであります!」
「がんばろうねっ!」
吹雪と生駒が応じる。湖底のスキャンも全て終わって、遊撃メインで敵を叩いていたテメレーア所属の富永佐那のザーヴィスチからも声がかかった。
「こちらザーヴィスチ。遺跡に被害が出るのは、今後の調査の為にも望ましくはありませんよね?
誘引して叩くのはいいプランだと思います。私は岡島さん、生駒さんのとは別方向から敵を突きます。
ザーヴィスチの機体コンセプトは白兵戦への特化、そしてそれに加え大出力に裏打ちされた機動力での敵の翻弄です。
伊勢の主砲から漏れた敵のうち、近接戦が必要なものを担当します」
エレナは出撃前にピーピング・ビーをザーヴィスチの後頭部にセットし、死角をカヴァーする第二の眼として活用しようかと考えていたのだが、イコンのレーダーでカバーできるため、ほとんど意味が無かった。H艦隊からヘクトルにも連絡が行き、ヤークトヴァラヌスも現地に急行、支援に参加するという。
閃電が伊勢の右手方向に大きく移動し、イレイザーの群れにウィッチクラフトライフルとバスターライフルを打ち込む。イレイザーたちは即座に反応し、一直線に閃電へと向かってくる。順子がレーダー、赤外線、目視を併用して索敵を行い、敵の動きをつぶさにモニターしている。
「伸宏君、3時方向から敵インテグラルの別の群れがが接近中よ」
「オーケー。そいつらも一緒に巻き添えだ」
ザーヴィスチはウィッチクラフトライフルで牽制射撃を行いながらヘクトルのヤークトヴァラヌスと共に遺跡に近い位置にいるイレイザーの群れをおびき出す作戦に出た。2機で遠隔射撃を行い始めると、遺跡に向かいかけていたイレイザーたちはすぐこちらに向かってきた。湖底の凹凸を利用して、岩や崩壊した建造物を遮蔽物にし、誘引されてきたイレイザーのうち接近しすぎたものに大型超高周波ブレードを叩き込む。やられた仲間に気づき、イレイザーたちが追ってくると、遠距離砲撃で牽制しながら少しずつ伊勢の前方に敵を誘導してゆく。
「飛んで火にいる夏の虫、ってやつだな」
ヘクトルが言った。3機のイコンは通信で連携を取りながら、伊勢の鼻先へとイレイザーの群れを誘導してゆく。
「そろそろ良い感じでありますな」
吹雪が言った。コルセアが周囲の機体を含めて警告を発する。
「全機伊勢正面に達したら回避行動を行ってください!」
エレナ・リューリクが叫ぶ。
「砲撃、来ます! 今回は水中、影響範囲が広まる可能性が考えられます。可能な限り射線より距離をとって!」
イレイザーを集めてきた4機が、水中演技のように垂直に上昇する。追尾しようとしたイレイザーの群れめがけて、伊勢から荷電粒子砲が打ち込まれた。光の柱がイレイザーの群れにまっすぐに突っ込む。まさに一網打尽という感じだった。大きな群れが一気に消滅する。主砲射撃が一段落すると、4機のイコンは周囲に残る残党に向かってゆく。閃電が大型高周波ブレードでイレイザーを切り裂き、生駒のジェファルコンが多弾頭ミサイルランチャーを放っている。
「ヘクトルさん。此処は私が支えますから一旦、弾薬、エネルギーの補給をして下さい」
佐那がヘクトルに呼びかける。順子がエネルギーチェックをして信弘にも帰艦を促す。
「残存エネルギーが30%を切りかけてる、帰艦して一旦補給に!」
「ああ、わかった」
周辺で残党と戦う遊撃隊は、大分数を減らしながらもなお遺跡へと近づくイレイザーたちを排斥し続けていた。
「……ッ?! アレは……もしや瘴気をまとうイコンではござらぬか?!」
索敵していたスベシアが叫んだ。まだかなりの遠距離であるが、手前に集くイレイザーの群れの遥か向こうに、イレイザーと違う光点が見える。北都が呟くように言う。
「会話が可能だから……話し合いで戦わずに済ませられればいいのになぁ。
光条世界へ行ける者の上限って決まってるのかな?
決まっていないのなら、ソウルアベレイターと僕達が皆で行けばいいんじゃない? ダメなのかな?」
First Previous |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
Next Last