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【蒼空に架ける橋】第3話の裏 停滞からのリブート

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【蒼空に架ける橋】第3話の裏 停滞からのリブート

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――監獄島、収容区域。
「せぇッ!」
 唯斗が拳を振うと、囚人が壁に叩きつけられ、ぐったりと意識を失う。
「ふぅ……囚人もまともじゃないな……」
 意識を失いながらも、手に鋭いガラス片を握りしめている囚人を見て唯斗が呟く。
「むしろまともな奴らは俺らしかいないんじゃねぇか?」
 恭也がサブマシンガンを下ろす。銃口からは煙が立ち込め、視線の先には撃ち抜かれ倒れている囚人と看守が居る。
「……どうですか?」
 マルティナが看守の傍らで様子を見ているフレイアに問いかける。看守はマルティナが手足を撃ち抜き無力化されているが、まだ意識がある。警戒する様にハンドガンの銃口は向けたままだ。
 だがフレイアはゆっくりと首を横に振った。
「駄目ね、正気じゃない。何か聞ければ良かったんだけど……そもそも話が通じないわ」
 そう言ってフレイアがちらりと看守を見る。虚ろな目は何処を見ているかわからない。そして口元は壊れたように薄ら笑いを浮かべている。フレイアが何度か問いかけてみても、一切言葉は届いていないようであった。
「一体何をどうすればこうなるんだか……まるで殺し合いでもしたみてぇだ」
 恭也が転がっている死体を見て呟く。よく見ると、死体の中にはガラス片や刃物のような凶器を持った者もおり、その凶器は血に濡れていた。他の死体には恐らくその凶器の餌食になったであろう者もいる。
「したみたい、じゃなくしたんだろうね」
 オミ・ナが「何があったかは考えたくもないけど」と言って溜息を吐く。
「……急ぐよ。ちょっと騒ぎ過ぎた。奴らが――ヤタガラスが来るかもしれない」
 そう言って歩き出そうとするオミ・ナの前を、唯斗が立つ。
「ここは俺達が先に立つ。アンタをやられるわけにはいかないからな」
「そうかい、それじゃ頼らせてもらうよ。これでもか弱い女なんでね」
 そう言ってオミ・ナが一歩下がる。
「か弱い、ですか……」
 プラチナムが何か含んだ様な言い方をする。
「ん? 何だい? 何か言いたい事でも?」
「いえ、先程からオミ・ナ様を観察させて頂きましたが、囚人を相手に素人とは思えない身のこなしをしていたので」
「ああ、そういうこと。まぁ、周りが荒くれ者だらけだと荒事にも慣れてくるってもんでね」
 オミ・ナはそう言うと自嘲気味に笑みを浮かべる。
「で、なんでお前は観察なんてしてたんだ?」
 唯斗がプラチナムに問う。
「そりゃ基本的に移動してる最中は暇なのでオミ・ナ様の3サイズでも目測計算しようかと……おっと、つい本音が」
「その鎧の息の根止める方法教えてくれないかい?」
 オミ・ナが今度は良い笑顔で言った。
「いや勘弁してくれ、今回本当にコイツ頼りの所あるんだわ……」と唯斗が疲れたように言った。
「ところでよ、お嬢」
 そんなやり取りをしていると、恭也が口を挟む。
「お嬢? あたしの事?」
「そうそう。本部区域に向かってエレベーター動かす、とか言ってたけどよ、そこでの管制室とかの場所ってわかるか? いざ動かす段階でロックされてちゃシャレにならねぇし、この船のコントロールも確保しておきたいところだしな、そういう所があるなら俺が向かうぜ?」
「ああ、その辺りは心配しないでいいよ。本部区域自体が管制室のようなもんらしいからね、行けば何とかなるさ」
 オミ・ナの言葉に「そうか、わかった」と恭也が頷く。
「……隊長、大丈夫でしょうか」
 ふと、マルティナが呟く。
「メルキアデスの事だから死にはしないわよ……まぁ、変に気張ってるかもしれないけどね」
 フレイアがマルティナを宥める様に言うが、何処か自分に言い聞かせているようでもある。
「でも急いだ方がいいのは確かだよ……向こうの方がもっとヤバいかもしれないね」
 オミ・ナがそう言って転がる死体を見る。
「……ん?」
 オミ・ナが眉を顰める。死体の傍らに、不自然な黒い影の塊のような物があった。
 その影はまるで生き物みたいに立ち上がる様に動き、人の形となった。
「――ヤバい、来るよ!」
 影――ヤタガラスは、オミ・ナ達を見つけたようであった。