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【慟哭】闇組織を討て

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【慟哭】闇組織を討て

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○    ○    ○


 参謀班の大和の合図を確認し、正門突破班と共に敷地に入り込んでいた【敵飛空艇破壊班】は、格納庫に向かい、一気に駆け抜けた。
 ドラゴンアーツでドアをぶち破り、蒼空学園のアルフレート・シャリオヴァルト(あるふれーと・しゃりおう゛ぁると)がまず侵入を果たす。
「わっ……」
「テオ、どちらが多く壊せるか競争だ」
 整備士と思われる男には、目も向けず、アルフレートは敵の乗り物に走り寄る。
「負けた方が明日の昼を奢る。人身売買組織壊滅の報を聞きながら、な」
 最初の小型飛空艇にドラゴンアーツを叩き込む。
「昼を奢る、ね……まぁ、こいつらの壊滅報道聞きながらなら、それも悪くない」
 怯える整備士の姿をちらりと見た後、パートナーのテオディス・ハルムート(ておでぃす・はるむーと)も、一気に駆け込んで、ドラゴンアーツでバイクのタイヤを吹っ飛ばす。修理、部品交換が出来ないよう、エンジンと車体も破壊していく。
「あんまり無茶苦茶すんなよ。格納庫ごと破壊しそうな勢いだ」
 言って、教導団の一色 仁(いっしき・じん)は廊下へと続くドアに前に立ちディフェンスシフトを引く。
「入り口は私が見張りますわ!」
 仁のパートナーのミラ・アシュフォーヂ(みら・あしゅふぉーぢ)もディフィンスシフトを取り、白沢 鵤(しらさわ・いかる)の傍につく。
「了解」
 イルミンスールの鵤は、パートナーのイマ・アウドゥ=ヤシュト(いま・あうどぅやしゅと)が操る空飛ぶ箒に同乗し、格納庫内を飛ぶ。
「まずは、一番大きなあの乗り物を――!」
 イマが向かったのは、中型の飛空艇だ。
 狭い通路を巧みに箒を操って進み、飛空艇の上で止まる。
「この船で人を運んでるのか……っ!」
 込み上げる怒りのままに鵤は光条兵器を叩き付け、徹底的に破壊をする。
 廊下側のドアが開き、太めの男達が雪崩れ込んでくる。
「おっと、今日の定期便はナシだ」
 仁が仲間達を背にランスを向ける。
「どけ!」
 無我夢中で、男達は銃を放つ。
「乗り物を自分達で破壊しようってんなら止めないが」
 仁は1人をランスでなぎ倒した後、斜め後方に跳び大型バイクの裏に隠れる。
「こちらから逃げられますわ!」
 ミラが、搬入口に繋がっていると思われるドアを指す。
「一旦、本陣にもどりましょう」
 ミラがドアを開く。
「よし、退くぞ!」
 小型飛空艇を破壊したアルフレートが声を上げた。
「やむを得ないね」
 テオディスも5台目を破壊後、格納庫から飛び出す。
「はあっ!」
 アルフレートは最後にもう1台ドラゴンアーツをぶち込んで、残骸を入り口の前に飛ばしてからから外へ飛び出した。
 鵤とイマも火術で牽制しつつ、素早く飛んで敵の銃弾を避け、ドアから飛び出す。

 ――無論、本当に逃走したわけではない。
 屋敷正面では交戦が続いており、バイクの残骸も飛ばしてきたため、正面から乗り物を出すことは難しい。
 飛空艇のみ1隻無傷で残してある。
 この搬入口方面から飛空艇を出させるために、誘導をしたのだ。
 数分後、太めの男と、続いて駆け込んだと思われる者達を乗せた船が搬入口から飛び立とうとする。
 アルフレートとテオディスが同時にドラゴンアーツを叩き込む。
 激しく揺れる飛空艇に 仁とミラはランスを繰り出して穴を開けた。
 必死の形相で敵は4人に向けて銃を乱射する。
「あなたたちみたいな人を、一番逃がしてはいけないから」
 イマが箒で回り込む。
「イカルさん、やっちゃってください!!」
「ああ!」
 鵤はイマが操る箒の上に仁王立ちに立ち、光条兵器を振り上げて飛空艇に叩き込んだ。
 飛空艇は正常に飛び上がることができず、墜落をする。
 鵤はあえて人物は傷つけなかったが、墜落の衝撃で投げ出された敵――5人のシャンバラ人はうめき声を上げてバラバラに倒れている。
 即座に駆け寄り、全員でメンバーを捕縛する。

○    ○    ○


 戦闘員は殆ど全て外に向かい、屋敷1階はほぼ非戦闘員だけになっていた。
(せーの)
 声は出さず、口パクで合図をして、七瀬 歩(ななせ・あゆむ)は、振り上げた仕込み竹箒を寝間着姿の男に叩き込む。
 同時に日下部 社(くさかべ・やしろ)と、望月 寺美(もちづき・てらみ)も、エンシャントワンドと、高そうな壷を別の男の頭にそれぞれ叩き込んだ。
 光学迷彩を纏った3人は、倒れた男達を紐で家具に縛り付けておく。
 歩はハウスキーパーでドアから覗いただけでは異変が分からないよう整える。
「うふふ。それじゃ、私達はここでしばらく待機してましょうかぁ〜」
 エレノア・レイロード(えれのあ・れいろーど)が、ドアの傍に座り込む。
「手当てしまんねん」
 橘 柚子(たちばな・ゆず)にくいくい腕を引っ張られて、歩は痛みに気づいた。
 いつの間にか腕に怪我をしていて、血で服が濡れていた。
「お願いします」
「無理はせんといてね」
 柚子がヒールを唱えて、歩の怪我を癒していく。
「よぉ戦ったもんなあ」
 言いながら、社は室内を見回す。
 この部屋もコンピューター制御などされている部屋ではないようであり、社が子供の頃くらいの一般家庭程度の機材しか屋敷には見当たらなかった。
「センサーとかはなさそうか。けどま、念のためッ」
 社は念の為部屋の中にある電化製品らしきものに、雷術を放ち壊しておく。
「音に気をつけてねぇ」
 寺美は派手に魔法を放つ社に注意を促す。
「分かってるって」
 返事にこくりと頷いた後、寺美はドアの向こう――地下へと続く階段のある方に目を向けた。
「小さな子供達をイジめるなんて許せませ〜ん!」
 隠密行動が必要じゃなければ、寺美も暴れたいくらいの思いだった。
「人質が囚われていると思われる地下に、人質救出班が向かいました」
 アマーリエ・ホーエンハイム(あまーりえ・ほーえんはいむ)は、参謀班のパートナーミヒャエルにありのままを報告した。
「コンピューター制御などはされていないようです」
 彼女は皆の動き、状況を冷静に見極めながら、参謀班への報告に徹していた。