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薔薇に捧げる一滴(ひとしずく)―NL編―

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薔薇に捧げる一滴(ひとしずく)―NL編―
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曇りのち晴れ

 幸せな花言葉のエリアでは無事な者が多かったが、青エリアはどうだろうか。
 どうにか危険な状態だった参加者たちの目を覚まし、全員の意識を無事取り戻すことに成功した。
 とは言え、月島 悠(つきしま・ゆう)麻上 翼(まがみ・つばさ)は青のエリアでも比較的に楽な症状だったのではないだろうか。白い薔薇の奥地へ向かっていたため魔力に当てられたものの、悠が不思議な機械について話し始めるくらいだった。
 普段から2人は戦いに明け暮れているというのに、家事のほとんどを翼に任せっきりにしており、これからは楽をさせてやると言わんばかりの笑顔で語っていたようだ。
「悠くーん、大丈夫? 気持ち悪くない?」
「うん……一体何をしてたんだ?」
 翼に楽しんでもらおうと何かを話していた記憶はあるが、どんな話題で盛り上がっていたのかいまいち思い出せない。目の前には心配そうに覗き込む顔があるし、盛り上がっていたというのは夢だったのだろうか。
「悠くんは、いつも真っ直ぐすぎるんだよ。息抜きできてるのにさ」
「……ごめん」
 とにかく迷惑をかけてしまったらしいということだけは、状況から理解できる。抜け落ちた記憶があるのは気になるけれど、ともかく今日は翼に楽しんでもらわなきゃいけない。
「翼、何か探してるんだろ? いつも家事とか頑張ってもらってるから、今日くらいは我が儘言っていいんだぞ」
「えー!? 悠くん戻ってないよー」
 眉を下げ、へなへなと座り込む翼に小首を傾げる悠。日頃の感謝の気持ちで連れてきたのだから、何も間違っていないはずだ。
「何を言ってるんだ? 戦いも家事も楽にならないから、今日は礼だと言ってあるだろ?」
「じゃ、じゃあ、スイッチ1つで料理が出てくる箱とか、勝手に掃除してくれる生きてるモップとか……」
「へぇ、そんな便利なものがあるんだ?」
 凄い世の中になったなぁと頷く悠に、翼は安堵する。さっきは何が見えていたのか、天からのお告げがあったとばかりに夢のようなことを口走っていたが、本当に戻っているようだ。
「もう心配かけさせないでよ? 早くお茶飲みに行こう!」
 薔薇も満喫したしね! と明るく笑う翼に連れてきて良かったなぁと思う反面、あんな不思議な物が欲しがるくらい家事とはつらい物なのだろうかと考え込む。
(たまには、手伝ってあげようか。洗い物とかアイロンがけくらいなら……なんとか)
 しかし、家庭科が不得意な悠にさせれば仕事が増えると言わんばかりに翼は全力で断るのだが、遠慮しなくていいと押し切られて想像以上の仕事が増えてしまうことになる。
 1人で来ていた鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)は、幻影に捕らわれること無く彼女に相応しい薔薇を探し歩いた。プロポーズの答えを聞けてはいないが、大事な彼女に贈る花。自分の思いを映す花を見つけようと1人でまわっていたのだ。
 結局、お茶会なのに休むことなく探すことになったが、自分が納得できる1輪を見つけることが出来た。
「ルカルカ……」
 恭しく花に口づけて、待ち合わせの場所へ向かう。違うエリアへ向かった彼女は、自分への答えを用意してくれているだろうか。まだ待ち合わせには早いが、少しでも早く会いたい。真一郎は薔薇園の出口に向かうのだった。
 と同じ真っ白い薔薇の奥地へ訪れていた遠野 歌菜(とおの・かな)譲葉 大和(ゆずりは・やまと)は、その騒動を目にしていた。
「こんな物が役に立たないはずですね」
 大和の手の中では、くるくると回り続ける方位磁針と電波が受信できていない携帯電話。GPSを使えば位置を正確に確認出来ると思っていたのだが、奥地に行けば行くほど機械たちは役に立つことはなかった。
「リボンも付けているから、大丈夫だよっ!」
 機械が使えなくなってからは、歌菜が用意してくれた青に銀糸が入った目立つリボンを一定間隔で付けてきた。パンのように小鳥に食べられることもないし、風でほどけないようにしっかり目に結んである。モンスターでも現れない限りは、取り乱すこともないだろうから迷わず戻れるだろう。
「きゃあっ!?」
「歌菜さんっ!」
 足下に現れた窪みに足を取られかけ、体制をくずした歌菜を大和が支える。白い薔薇が続く中、ぽっかりと不自然に空いた穴。そこだけ妙に湿り気を帯びた土が顔を出している。
「大丈夫です! それよりここ、誰かが抜いていったのかな?」
 足下に気をつけながら周辺をくまなく調べてみても、その穴以外に不自然なところは見つからない。どこまでも続く白い薔薇を見渡してから、大和も同じようにしゃがみ込んだ。
「それにしては土が掘り返された様子はありませんね……」
 リボンもそろそろ底つきるし、随分奥までやってきた。雫が見つかっても良い頃だと思うのだが……その考えは2人で一致したらしい。
「まさか――」
「えぇ、ここに何らかの形で存在していたのでしょうね」
 しょんぼりとする歌菜に、めがねをかけ直す大和は立ち上がって手を差し出す。
「歌菜さんにそのような顔は似合いません、先ほどのように笑ってください」
「……ありがとうございます」
 はにかむように笑って、もう1度残念そうに穴を見ると元来た道を歩いて行く。1つ1つ丁寧にリボンを取り、勇とルドルフの姿を見た辺りで足を止める。
「大和さんは具合悪くなったりしてない? あの子みたいに幻が見えたりとか」
「どうでしょう、可愛らしい歌菜さんしか見えてなかったので自覚症状がありませんね」
「も、もう! 褒めても何も出ませんよ?」
(そんなに可愛らしい反応をしておいて、自分の魅力に気付いていないとはね)
 つい眼鏡を取りたくなる衝動にかられるが、堪えて先を急ぐ歌菜との間合いを詰める。
「俺のことは信じられない?」
「まさか! だったら2人でなんて来ないですよ」
 振り返った歌菜を捕まえるように、リボンの束を握った手を捕まえて、目線を合わすように屈む。
「だったら、君が可愛いというのも信じてくれる?」
「信じる信じないじゃなくて、その……」
「それとも、そうやって惑わすのは歌菜さんの作戦なのかな」
「ま、惑わすとか、そういうのじゃ……」
 真っ赤になっておろおろする顔は、小動物を追い詰めているような気分にさえなるが、いじめ抜くのではなく自分の手に飛び込んできてもらいたいと思う自分の方こそ、魅力を伝えるという大義名分の中で惑わしているのかもしれない。
「行きの元気良い明るさも良いですが、そうして謙虚に恥ずかしがる姿も美しいですね」
「だ、だから、大和さんっ!」
 にっこりと微笑み返すだけで、否定しようなんて気はさらさらない顔に余計恥ずかしくなるが、止めなければ帰り道の間ずっと言われ続けてしまうのだろう。
「お気持ちは大変うれしいです。けど、あまりに褒められると、どうしたらいいのかわからないですよ!」
 困ったように眉を下げて頼まれては素直に話を聞いてやりたくなるが、そういう顔をみせるから言いたくなるというのもまた事実。
「もっと見ていたかったのですけれど、可愛らしい歌菜さんが美しい声でお願いされるのですたら仕方ありません」
「わ、わかってくれましたか!?」
「えぇ、誰かに盗み見られる外ではなく、可愛らしいお顔は自分の腕の中だけで見せて頂くことにしましょうか」
「――っ!!」
 本気か冗談なのかわからないその言葉と同時に、繋がれた腕は引き寄せられて大和の腕の中に抱き留められてしまう。
「貴方と出会えた奇跡に、俺は意味を見出したい。今しばらく貴方と共に歩ませてくださいませんか?」
 少しずれたレンズの向こう、自信たっぷりの瞳に捕らえられては逃れることは出来そうにない。熱くなる頬を止めることも、目を逸らすことも出来ないまま、歌菜は大和に捕らえられてしまったのだった。
 そんな様子を盗み見てしまったスレヴィ・ユシライネン(すれう゛ぃ・ゆしらいねん)はと言えば、すっかりやさぐれモードだ。確かに、こんなお茶会へ1人でやってきた自分も悪い。けれど、少しくらいは同じような境遇の人がいるかと思えば、右を見ればカップルが、左を見れば片思いの幸せそうな人が、後を振り返っても過去の恋愛に浸ってるから声をかけてくれるなというオーラがでているから仕方なく前を見れば初々しいカップルだ誕生した瞬間だ。
「一体俺が、何をしたって言うんだー!!」
 薔薇学生としてイエニチェリの薔薇園には興味があったし、不思議な力があるらしい愛の雫も手に入れたいというよりは見てみたいという程度だったのに。今となってはそれすら1人身の言い訳のようで悔しさが込み上げる。
「俺だって、あの性癖さえ出てこなければ彼女の1人や2人くらい!」
 思い出すのも嫌になる過去。彼女がいた幸せの時代が過ぎて、いったいどれほどの時間がたったことだろう。
(一度スイッチ入ると自分じゃどうしようも……しょせん言い訳か)
 薔薇に愚痴り倒してもしょうがない、せめて愚痴の言い合える友達でも出来ればと思ったが、それも難しそうだ。今日は諦めてやけ食いでもしようと休憩スペースに向かう途中、逆の道から島村 幸(しまむら・さち)が現れた。
「良かった……人と会うことが出来て」
 自分より背は低いものの、大人びた笑い方をする幸に自分と同じ境遇の人がいたとスレヴィは喜んだ。
「なんだ兄さん、あんたも1人か?」
「兄、さん?」
「ああ、周りはカップルばかりで嫌になるよな。男同士の友情でもはぐくまないか?」
 ニッと子供っぽい笑顔でのお誘いに、年下だろうから遠慮してやるかとも思う。だが、最大のコンプレックスと言っても過言ではない地雷を踏みつけておいて年下も年上もなかった。
「私が男? ふっふふ……あはははははっ!! 面白い冗談ですね」
「へ?」
 ゆらりと背中から陽炎が見えた気がする。眼鏡が怪しく光り、どこからとも無く薬品を取り出してにこやかに笑う。
「さて、どこから改造してあげましょうか? 視力でも良くしてみるか、いっそ見えなくしてみるか……」
「えぇええ!? お、お姉さん!? すみませんでしたぁああっ!」
 あまりの気迫に圧倒されて、一生懸命頭を下げると不満が残る顔で薬をしまう。
「まぁ、こっちは1人で困っていたし……保留にしておきましょう」
(お、女の子ならあのスイッチが入っちまうか? それとも、見た目がこんなだしもしかしたらイケルかも!)
 キラキラした目で見つめられ、眉を顰めながら幸はカードを取り出す。
「すまないが、現在地は――」
「幸っ! どこだっ!」
 後を追うようにやってきたガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)を見て、クールな幸の頬が緩む。
(お友達から彼女作戦は開始前に失敗かよ!!)
 スレヴィが打ちひしがれている間にも、2人の会話は進む。カップルの前に他人は不要、引き立てる薔薇にすらなれなくて申し訳ないという気分にさえなっていることに、気付いてくれる様子はなかった。
「だからあれほど離れてはなりませんと……」
「ごめん、どうしても調べたい部分があって、気がついたらはぐれていたんです」
 喧嘩でもしようものなら見物だったかもしれないが、仲の良いカップルにそんなことは一切無く、1人身に見せつけるだけとなった。
「無事で良かったですが、協力してくださった方には後で挨拶をしなければなりませんな」
「協力?」
「背の高い、可愛らしい女性が通らなかったかと聞いてまわっておりましてな」
(絶対通じない! 初対面は絶対見間違うだろ!)
 全力で突っ込みたいが、怪しげな改造をされたくもなければ、どうみても強そうで骨抜きなボディーガード。2人を相手に勝算もなければ、人の恋路を邪魔するヤツはなんとやら。触らぬ神にたたりなしだ。
「えぇっと……捜し物が見つかってよかったな! それじゃ、また会うことがあったらよろしくな!」
 僻んでいることなど微塵も感じさせず、爽やかに去っていくスレヴィを見送ってガートナにもう1歩近寄る。
「こっちは収穫ゼロでした。次はどこへ向かいますか?」
「丁度白い薔薇の傍ですね。……誓いをするには相応しい色だ」
「……そうですね」
 純白の、結婚をイメージするような白。トラブルはあったけれど、恋人同士のデートを飾るに相応しい場所へ向かい、最後までゆっくりと過ごすのだった。
 そうして、同じように園内を歩き回っていたウェイル・アクレイン(うぇいる・あくれいん)フェリシア・レイフェリネ(ふぇりしあ・れいふぇりね)はゆっくりと一息ついていた。
「いろんな場所を見て回ったけど、結局怪しいものは見つからなかったね」
 少し残念そうにフェリシアがチェックして回った箇所にバツ印を付けていく。たくさんのバツで埋められたカードを見ると、もう少し奥まで行かないと見つからないのかもしいれないなと思いつつ、テーブルの中央に置く。
「音は聞き逃さないようにしてたつもりだったんだけどな。残念だぜ」
「ねぇ、見つかったら何かしたかった?」
 単に珍しいものだからと探検してみたが、特別何かに使おうと思っていたわけじゃない。見つからなくても楽しい思い出になるだろうと考えていた程度だ。
「そう、だなぁ……あ、目瞑ってみてよ」
 何だろうかと思いながら言うとおりにしてみると、微かな金属音が聞こえる。フェリシアが目を開けたときには、銀のネックレスがかけられていた。
「これ……」
「ずっと傍にいて欲しい。そう言える相手が出来たら、渡したいと思ってたんだ」
 雫が見つかっても見つからなくても渡すつもりでいたけれど、もし見つかっていたならもっと格好良く渡せただろうか。
 そしてフェリシアも彼のために用意した物はあるけれど、まさかこんな素敵な物が貰えると思っていなかったので驚いてしまい返事を返すタイミングを逃してしまった。
「気に入らないなら、言ってくれて構わないぜ?」
「そんなことないよ! ありがとう、すごく嬉しい……」
 お返しになるかはわからないけれど、と一言添えて手渡されたのはお守り。
「朽ち果てるまで貴方と共にいるから、よろしくね」
 いつでも一緒にいるのに、改めてそんな風に言うのは照れてしまう。けれど、言わなきゃ伝わらないことだから言えるきっかけをくれたお茶会に参加出来て良かったなとも思う。
「ちょっと休んだら、また探しに行ってみようぜ!」
「ええ、いいわよ!」
 1つの地図を見ながら、今度こそと綿密な打ち合わせをする2人。大切な人になったからと言って急激に何かが変わるわけではないのだから、今まで通り楽しもうと、残り時間で回れる場所を相談するのだった。



 青のエリアには助っ人が来たが、桃のエリアで高まった魔力の被害にあっていた京子はというと――
(京子ちゃんがこうなった原因は、きっとあの時の風。わざわざエリアが分かれてるってことは……)
「花言葉……?」
「さっきからなんなのよ、離して! 私を主人だって扱うなら、離してよっ!」
(お願い、そんなこと言わないで! こんなこと言いたくない、私はただ)
 思わず主従関係を持ち出されてしまい手を離すが、そこから逃げ出すことなく1歩引いただけの京子に真は膝を折って頭を下げた。
「確かに君は主人だ。けど俺が守りたいのは……っ」
(君が主人だからじゃない、君が京子ちゃんだからなんだよ!)
 間違っても口に出来ないそれがこぼれ落ちることのないように、真は強く唇を噛んで砂を握る。いっそ吐き出してしまえれば楽になるのに、どうしてそれは許されないのだろう。
「……契約したときのことを覚えてる? まだ俺が、京子ちゃんと主従関係じゃなかったとき」
 絶対に言ってはならない言葉、本当は伝えたい言葉。記憶を揺さぶるように、気持ちは悟られないように言葉を選ぶ。
「京子ちゃんだから、主人になってもらった。だから守りたい……それは迷惑かな?」
 許しがあるまで顔を上げることも出来ない、一緒に食事を取ることも出来ない。いつも1歩引いて、その後ろで支えるのが執事としての勤め。けれど、最近はいろんな事件に同行してその関係に甘えが出てきてはいなかっただろうか。
「……私はただ、これからも一緒にいてほしくて、だから傷つかないでって。無茶はしないでほしいから……っ」
 ポロポロと涙を零しながら崩れる京子を支えると、真は緊張が解れたように長い溜息を吐く。
「これからも、この身をかけてあなたを護ります。そのために少し傷つくことはあるかもしれないけど、無茶はしないよ」
(こんな顔、させたくないし……っていうのは、ちょっと執事らしくないよね……って)
「うわぁあっ!? ごめん、その、大丈夫?」
 支えただけのつもりが、無意識に抱きしめてしまっていたらしく、真は慌てて離れた上に距離をとって正座をするので、思わず京子は泣き止むどころか笑ってしまった。
 ピンクの薔薇の花言葉。たくさんある中で心当たりがあったのは「わが心」だった。魔力の影響を受けた京子から心ない言葉を浴びせられながらも、自分に話せない言葉が悪い方に作用したのではないかと真は考えた。
(でも、主人として扱わないでって……俺が頼りないってこと? それとも、最近お兄さんが出来たから弟になれとか?)
 鈍感な真は京子の恋心に気付くこともなく、膝に手を乗せて背筋を伸ばしながらぶつぶつと考え込んでしまっている。それを邪魔しないように静かに近づいて、目線を合わすように京子もしゃがみ込んだ。
「真くん、ごめんね。私、随分酷いこと言ったよね……」
「大丈夫、執事として、京子ちゃんを守るのは当然だからね!」
(執事「だから」じゃないなら……いっか)
 お互いに見つめ合って笑いあう。これからもすれ違いはあるだろうけれど、きっとこの人となら上手くいく。そう思える最高のパートナーに出会えて本当に良かったと思うのだった。



 青色のエリアはともかく、それ以外のエリアも次第に混乱が収まる様子を見て、ジェイダスは微笑を浮かべる。
「口先だけでなく守り抜くか……そのような者もいるのだな」
 自分から見れば若い生徒たちは、愛だのなんだのとその言葉に酔っているだけで、意味など理解していないと思っていた。ところが、どんな状況下に陥っても大切な者を守り通そうとするその心を見て、愛の雫を譲ってもいいと思い防犯スイッチを解除する。
(特殊な条件が揃わねば手に入れることは不可能だろうが……)
 それでも、誰かが見つけてくれることを願いながら、あるエリアをじっと見つめるのだった。