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リアクション
第6章 闇鍋キノコ♪
「お疲れ様でした」
キノコ狩りから戻った翔子達を出迎えた本郷 翔(ほんごう・かける)は、早速キノコを運んだ。
「闇鍋も面白いとは思いますけど、阿鼻叫喚の中に安心して食べられる鍋というものがあれば、より楽しく食べられると思うんですよね」
というコンセプトの元、下準備完了している鍋の前にキノコを並べる。
安全に食べられる事が第一条件、更に味とそれぞれのバランスを考慮して数種類のキノコをチョイスした。
「ついでにお吸い物も用意して、と」
茸を炒め、茸の出汁をとって鍋に入れる。
「ボク、ナメコ汁がカレーと牛乳の次ぐらいに好きなんだ……」
「分かりました、ナメコ汁追加ですね」
キラキラと目を輝かせ訴える翔子。その様子から、かなり大好きな事を察した翔は、快く引き受けてくれた。
「ぬ、変わった鍋でござるな」
「色々な味があった方がみんな楽しめるでしょ?」
風恒が用意した闇鍋用の鍋。それは「四川風火鍋」に使われる、仕切りの付いた鍋だった。
これなら区画別に色々な味付けにすることが出来る。
「キノコロシアンルーレット鍋に最適でござる!」
鹿次郎はこっそりほくそ笑むと、風恒の目を盗むようにキノコを投入した。
「はい、キノコです。お願いします」
更に、アクアが食べられるキノコを手渡している間に、ショウもネタキノコを。
更に更に、ベアとマナも採ってきたキノコを惜しげもなく投入したのだった。
「はじめまして、薔薇の学び舎よりやってまいりました明智珠輝と申します」
「名前、ポポガ。兄者、一緒に、来た。鍋、好き。よろしく、お願いする」
優雅に一礼する明智 珠輝(あけち・たまき)と、ペコリとお辞儀するポポガ・バビ(ぽぽが・ばび)。
「本日は美味しい闇キノコ鍋をいただける、とのこと。材料持参いたしましたので、ポポガさん共々仲間に入れていただきたいです」
よろしくお願いします、とにこやかに笑みつつ手土産のバナナを差し出す珠輝。
「どうぞ。差し入れ」
ポポカの方は、ドーナツ持参だ。
「鍋に果物はいいよね! ドーナツも面白……ケホンケホン、美味しそうだよね」
ウェルカ〜ム、波乃は即決でグツグツ煮える鍋に投入してみたり。
「こっちはこれで仕上がり、と」
「皆さん喜んでくれると良いですね」
シルバと夏希も最後に鍋にブート・ジョロキアや桜島蜜柑を投入し、準備完了。
「細工は流々、仕上げをお楽しみに、ってトコだな」
「これは舞茸、こっちはエリンギか……うん、これで品数増やそか」
鍋以外も、と七枷 陣(ななかせ・じん)とリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)は受け取ったキノコで醤油バターパスタやソース炒め、などを手早く作る。
そして。
「一度、箸をつけたものは食え。それがルールだ」
「皆さま、お疲れさまでした。楽しくいただきましょうね……乾杯ですわ」
イリーナ・セルベリア(いりーな・せるべりあ)とエレーナ・アシュケナージ(えれーな・あしゅけなーじ)、それぞれのらしいセリフで、闇鍋パーティーは始まったのだ。
「わ〜い、いただきまぁす」
「すげぇな。あんなの見てまだ食べる気なんだ」
果敢にチャレンジするミミに、感心したように壮太。
「トライブ、そこに浮いておるのはもしや……」
「おう。そのままじゃ見た目が悪いから、細かく切り刻んでみたぜ」
「食うのかッ!?」
巨大キノコの断片と思しき物体を前に、思わず声を上げてしまうベルナデット。
「大丈夫、大丈夫。お化けキノコとはいえ、これは毒のないヤツだし……多分」
「じゃが、黴が……」
「熱に弱いってさ。しっかり煮たから大丈夫だ……多分な」
という笑顔と共にズイっ、と突き出されたお椀をつい受け取ってしまってから、ベルナデットは目を丸くした。
「へっ? わらわも、食うのか? いや、わらわは遠慮して、他の鍋を……」
「一度手に取ったものは食え。自分で口に運べないなら入れてやろう」
及び腰のベルナデットに詰め寄ったのは、イリーナだった。
「あ〜ん」
無表情で言うと、構わずベルナデットの口に突っ込んだ。
「デビルフィッシュと言われるものでも食べられるのだ。お化けキノコだって食えるだろう」
「あ、コラ、顔を押さえつけるでない! 無理やり口の中にキノコを突っ込むな……もぎゅ、もぎゅ……あ」
「おっ食べた……味はどうだ?」
「……じゃ」
「ん?」
「わらわは誇り高き吸血鬼なのじゃ〜! もっと敬うが良いのじゃ!!!」
にゃはははは〜、ちっちゃい胸をバ〜ンと張り仁王立ち。
「やっぱ毒付きか。まぁ多少気が大きくなるくらいならいっか♪」
イリーナの視線を受けたトライブに逃げる術はなく。
付き合うか、なんて呟きと共に、空腹を満たすべくキノコ鍋を口にし。
「お……」
パタン、そのまま倒れて夢の中へと旅立って行った☆
「……御凪」
「いや、今の見た直後にって中々勇気がいるのですけど」
「その手にした椀、空にしなければ……酷いぞ」
「って、いつの間に!?」
「真人真人、何事もレッツトライだよ♪」
ターゲットロックオンなイリーナと、明らかに面白がっているセルファと。
既に退路は断たれている。
「食べられるものなら食べる。そうでないと、戦場では生き残れんぞ。大丈夫、信じれば大体の食べ物は食べられるはずだ」
「……ええい!」
意を決して口にする。もきゅもきゅと咀嚼。味は良かった……ただ。
「って、身体が勝手に!?」
「うわっ真人のダンスなんて初めて見たかも!?」
「ほほぉ、これぞマイタケでござるな」
「鹿次郎?、舞茸では踊りださないと思うのですけど」
「うむ。舞茸の由来は、昔は見付けると踊る程に伝説だった、というところからでござるよ」
鹿次郎と雪の呑気な会話の間にも、真人の身体は踊り続けている。
毒キノコを投入した犯人は鹿次郎かショウなのだが、そこら辺は内緒だ。
「ちょっ、本当に……」
「まぁまぁ、折角だし一緒に踊ってあげるから♪」
焦る真人の手、セルファはご機嫌でもって取ったのだった。
「鈴虫は……」
「はぁ〜、やっぱナメコ汁だよねぇ……身体の芯からあったまるよ」
翔子は翔に作ってもらった大好物にご満悦の様子で。
「八神さん、どうぞ。こちらは安全ですわ」
「ありがとうございます」
エレーナはイリーナに先んじ、ミコトに自信の鍋をプレゼント。
それから、
「陽河さんも、グーメルさんも、お疲れ様でした」
「いただきます」
「闇鍋は好奇心がくすぐられますね……楽しみです」
森歩きで丁度空腹です、と言うザカコ達にも次々と配っていく。
「これは危険がないものですが、御希望ならロシアンルーレットなんてものもお持ちしますね」
エレーナの顔には愛想ではない笑みが浮かぶ。
(「20代男性とお知り合いになれる機会は少ないから貴重ですわ! 幸せな家庭が欲しいわたくしとしてはがんばらないと!」)
個人的にも力の入ってるエレーナさん・メイドさんな剣の花嫁・20代心の叫びだった。
「ファネスさんもはい、どうぞ」
「ありがとう……うん、中々イケる。ルカもどうだ?」
「いただきます」
ルカは基本的に少食だ。それでも、こんな湧きたつ雰囲気の中、レイと共に鍋をつつく事が出来るのは……そう悪くなかった。
「私のバナナ、食べて下さったんですね……お味はいかがですか? ふふ」
「美味しいです。バナナとチョコレートって合うのですね」
珠輝に微笑む姫乃。パートナーの言葉にギョッとしたのは理沙だった。
「って、チョコレート!?」
「ふふふ、甘さと辛さが混然と融合しそうでしない中、独特の酸っぱさが混沌のハーモニーを奏でる……素敵ですね」
「理沙さん理沙さん、褒められました」
「いやあの、無理しないで……お腹壊しちゃうかも、だし」
いつの間にか……多分キノコを待っていた手持ち無沙汰の間だろう……鍋に勝手に味付けしてしまったらしい姫乃に、理沙は思わず額を抑えた。
姫乃は純然たる好意でした事なので、怒るに怒れない。
「大丈夫、不思議な味、美味」
ポポカの言葉に益々嬉しそうな姫乃。
「本当に後でちゃんと料理の勉強させなくちゃ」
誓いつつ、とりあえず姫乃鍋には手をつけないで置こうと思う理沙であった。
「ちなみに、これはどうかしら?」
ドキドキしながら問うたのは、アリス。とりあえずキノコを入れただけの鍋なので失敗はしていない……はず!
キノコもちゃんと、綺人お墨付きの安全なものを使わせてもらったし。
「美味い、味あれば、もっと良い」
「ちょっと失礼」
気になったクリスがアリスの鍋の味をみ、眉をひそめた。
「ちなみに味付けは?」
「キノコです」
「……うん、素材を生かすのは大切ですよね」
「でも、味を濃くする分には簡単だよ。調味料を足せばいいんだもの」
綺人はフォローしつつ、味噌を手に戻ってきた。
「アリスさんもミーナさんも頑張ってたし、折角だしみんなでいただこうよ」
「刀真、これ……」
月夜が差し出したお椀に、刀真の額にイヤな汗がにじんだ。
「うん、美味し……よ……」
多分、食べられないものや毒キノコは入っていない。
しかしその、何とも表現しがたい食感に、刀真は無言でテーブルに突っ伏したのだった。
「俺だけ食べないってわけには……いかないよな」
ガックリと肩を落とした七尾蒼也は、
「赤いのと青いのはまぜるなよ! 魔法スライムで懲りたからな……」
警告しつつ、意を決して鍋に箸を突っ込んだ。
「胃薬、持ってきて良かったぜ……って、辛っ!?」
次の瞬間、蒼也の口から炎が噴きあがった。
「おおおおっ、スパイシー!」
「シルヴィットは辛くない方がいいですー、あっあの赤いキノコ美味しそうですー」
だけどそれは毒キノコなのだった。
「ふふ、このキノコ……凄く美味しい、です」
うっとりと、珠輝。
「ふっふふふっ……ふふふふふふふふふ」
もれる笑い声は段々とボルテージを上げ。
「兄者、楽しそう、ポポカ、嬉しい」
いそいそと珠輝お気に入り(?)な赤いキノコを椀に盛りながら、ポポカはニコニコ嬉しそうに笑んだ。
「実害はないようですね」
苦笑を浮かべつつ、翔。
「皆に笑顔を運べたかな?」
「うん。パラミタワライダケの効果は数十分笑い続ける、それだけなので……依存性もないしね」
仕組んだベアとマナは、自分達もこみ上げてくる笑いを心地よく感じながら、共犯者の笑みを交わし合った。
「楽しそうだし、これはこれで良い……のか?」
「そうね。危なさそうだったら解毒するけど」
呟くフェリシアに、
「お疲れさん」
ウェイルは陣お手製のキノコの醤油バターパスタを、手渡した。
「大丈夫そうだな……よし、存分に食え」
その陣は、ウェイル達がパスタを口にしたのを確認し、リーズにOKサインを出した。
「えぇから少し待っとき」
とおあずけをくらっていたリーズは顔を輝かせた。
「やたっ♪ いっただきまーす!」
ガツガツと音が聞こえてくるくらい猛然と食べ始めるリーズに、笑み。
「いやぁ、毒がないキノコで安心したわ」
陣は嬉しそうに呟いた。
「はいはいー! こっちでも鍋作りましたよー! 食べたい人寄っといで!」
「どれも安全に食べられるものだよ! 美味しいの食べたい人、冒険したくない人はぜひ!」
頃合いを見計らい、今宵とミルディアが声を上げる。
風天や理沙の作った、安全な鍋を勧める。
「レイちゃん、どうぞ」
その中。未沙は目当ての人物……レイディスへとお椀を差し出した。
「おっサンキュ、美味そうだな……うん、美味い!」
掛け値なしの称賛に、何だか泣きそうになってしまう。
(「あぁやっぱりカッコイイ……好きだなぁ」)
ちょっとだけ切なく。それでも、美味しい笑顔はやはり何よりの喜びだった。
「どうぞ、召し上がって下さい」
やはり几帳面な所作で、鶏がらベースのきのこ鍋をお椀によそる風天。
「ありがとうございますぅ、身体が温まりますぅ」
秋とはいえ、日暮れ近くには随分と気温が下がる。風天の温かな鍋にメイベル達も顔をほころばせ。
「やった、まともな鍋です」
怖々だった翡翠も、朝野姉妹の美味に鍋に歓喜の表情で舌鼓を打ち。
それぞれ思い思いに、パーティーを楽しんでいた。
「おっキノコ良い感じに焼けてるじゃないか」
「でしょ? 風間先生に教わったの」
「で、行くんでしょ?」
その中。政敏は察しの良いパートナー達にやはり苦笑をもらすと、案外素直に頷いた。
「こういうの見てると思うんだよな。誰かと一緒に食事する……何かするって、とても楽しいんだな、って」
今、この学園の片隅で一人ぼっちでいるあの子にも、皆の楽しさ……熱を伝えられたら。
政敏達は焼きたてのキノコや分けてもらった鍋を手に、まだまだ盛り上がる饗宴を後にしたのだった。
「やっぱり皆で鍋を囲むって楽しいよね」
それが一部、ワライタケや毒キノコの効果、と知ってか知らずか、朱華はその一見楽しそうな光景をとてもとても嬉しそうに眺めていた。
その手にちゃっかり、理沙の美味しく安全な鍋を確保しつつ。
深まりゆく秋の夜長。
楽しい宴、その笑い声はいつまでも絶える事無く続いたのだった。
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担当マスターより
▼担当マスター
藤崎ゆう
▼マスターコメント
参加いただきありがとうございました、藤崎です。
皆さまの楽しいアクション、藤崎も楽しませていただきました。
またどこかでお会いできたら、その時はまたよろしくお願い致します♪