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【GWSP】静香様のお見合い♪

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【GWSP】静香様のお見合い♪

リアクション

「吊り橋効果なるものを知ってるかい?」
 閃崎 静麻(せんざき・しずま)の問いかけに、ジェイダスは頷いた。
「危険を共にすることによって起こる興奮を恋愛感情と勘違いすること。そうだな?」
 確認の声に、「そうっす」と静麻は肯定する。「でも」とラズィーヤの声が上がる。
「それがどうかしましたの? 今はお見合いをしているのですわよ?」
「適度に波乱が含まれたら? お見合いでも吊り橋効果を期待できると思わないか、ラズィーヤさん?」
「……具体的には?」
真口 悠希(まぐち・ゆき)をお見合いの席に届ける」
「真口さんを? ……何か下心でもおありかしら? お見合いを潰してしまおうとか」
「まさか。静香校長の緊張が解れるだろうと思ったんだ。百合園生がそばに居るってだけでも違うだろ? それに増えるのは女子じゃない、男の娘だ。問題ないだろ? それにサプライズ的にお見合いも盛り上がるんじゃないかね?」
 静麻の流暢な物言いに、ラズィーヤが考え込んだ。しばしの間を置いて、
「面白そうですわね?」
 嫣然と微笑む。ジェイダスも頷いているのを見てから、
「金団長!」
 静麻は鋭峰に声をかける。
「吊り橋効果+サプライズ。これは盛り上がるぜ? それに、お見合いはやる経験が多い奴よりも組む経験が重視される。どうかな、団長。任せてもらえないか?」


*...***...*


 裏口に停まったトラックの助手席から、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が降りてきた。
「一切止められなかったし、交渉成立したのかな? さすが参謀長官こと軍師殿だ」
「でしょうね」
 運転席に座っていた橘 恭司(たちばな・きょうじ)も降り、「さすがです」と静かに褒めた。それから咳払いをひとつして、
「詰めましょうか」
 正悟に声をかける。正悟が頷いて荷台に乗り込み、ダンボールを組み立てて詰める準備をし始めた。
 恭司は詰め込まれる対象である悠希に近付いて、
「梱包後はあまり身動きされないようお願いいたします」
 諸注意を。
「えっと、はいっ」
 緊張した面持ちでいる悠希の傍ら、上杉 謙信(うえすぎ・けんしん)が黙って控えている。
 彼女はどうするのだろうかと疑問に思い、
「君はどうしますか? 一緒に詰めるならお早めにお申し付けください」
 問いかける。
「いいえ、結構です。同行はしますが」
「わかりました。では、真口さん。ダンボールの中へどうぞ」
 悠希がダンボールの中へ入り、正悟が蓋を閉める。ガムテープで目張りをしていき、最後に『ナマモノ』『天地無用』『ワレモノ』のシールを貼った。そして台車に乗せる。
「じゃ、届けに行きましょっか、社長?」
「ええ」
 ガラガラと台車を引く音を響かせながら、二人は裏口から調理場を経由する。たまに不審そうな目で見られるが、止められはしない。静麻の交渉が効いているらしかった。
 間もなく見合い会場に到着し、「失礼しまーす」正悟が声をかけて襖を開く。静香とセシルが、同時に闖入者を見た。
「桜井静香校長先生。お届け物にあがりました」
 恭司が告げてから、正悟がダンボールを静香の横に運び込む。
「お見合いですか。いいですね、リア充で」
「りあじゅう?」
「いや、なんでもないです。忘れてください、あとハンコください」
「ん。はい」
 ハンコを受け取った正悟が下がってきて、さあ仕事は終わった。と一息つくよりも早く。
「ロザリン!! 静香校長を護るんだ!」
 突然の大きな声に、振り返った。
 給仕としての恰好なのか、メイド服に身を包んだ桐生 円(きりゅう・まどか)が、小さな見た目に反比例した大きな声を上げ続けている。
「敵の狙いは校長だよ。さあ早く!」
「なっ――」
 敵? まさか自分たちが? と恭司と正悟はお互い顔を見合わせて、
「とりあえず帰りましょうか」
「勘違い解かなくていいの?」
「解くよりも帰るほうが早い」
 逃げるが勝ちとばかりに部屋から駆け出す。入れ違いにロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が部屋に駆け込んできて、
「桜井校長!」
 ダンボールの傍らに立つ静香を抱きしめた。
「ロ、ザリンド、さん? え、これ何? 敵って?」
「何もかも覚悟しました。ただあなたを見て、あなたへの想いを言葉にします」
 困惑する静香の言葉に答えずに、ロザリンドは静香を見つめる。真剣な表情。静香の表情も、知らず知らず緊張したように強張った。
「校長。いえ、静香様。私はあなたのことが好きです。
 馬鹿で、弱くて、どうしようもない私ですが、それでもあなたと添い遂げたいと思います」
 つかえることなく、するすると紡ぎだされる言葉。
 それでも最後の言葉は言いづらいのか、詰まった。
「ロザリン頑張れ。キミだけが持っているワガママじゃない。誰だって持ってるワガママだよ」
 円が、後方から声を掛けた。ワガママ。出すまい見せまいとしていたワガママ。少しは出してもいいという。
 言う覚悟ができた。ありがとう、と一瞬だけ円の方を見て、微笑む。
 それからもう一度、静香へと向き直り、
「静香様、他の人のところへ行かないで」
 真剣な顔が、泣きそうな顔に歪んだ。
「ボクも、同じ気持ちですっ……!」
 声に呼応するように、悠希が自力でダンボールから出てくる。
「悠希さんまで!? ていうかどうしてダンボールなんかに……」
「ボクは、静香さまのことを世界で一番愛しています! とても大切な人なんです。
 だから、もし……静香さまが望まないところへと連れられたのでしたら、こうして必ず駆けつけますから。助けますから。あなたが望むのなら、どこへでもいつだって」
「私たちは」
「ボクたちは」

「必ず来ますから」

 ロザリンドと悠希が同時に言って、また、同じタイミングで手を差し伸べた。
 面食らった顔の静香が、ロザリンドを、悠希を、交互に見つめる。
「一緒に帰りましょう、静香さま」
「静香様。私たちでは駄目ですか? 私では……」
「悠希さん、ロザリンドさん……」
 ふたりの言葉を受けた静香が、ふたりの手を取ってセシルを見る。セシルは苦笑していた。
「まいったな。僕の負けらしい」
 苦笑したまま漏らした呟きに、静香が頭を下げる。
「大丈夫です、顔をあげてください、静香嬢。
 むしろ、僕が謝らないといけないだろうしね」
「謝る? セシルさんが?」
 悠希の声に、セシルは頷いた。
「僕は女だから」
「……女性?」
「そう。静香嬢が男の娘だってことも教えてもらっていたよ」
 そしてセシルは語りだす。
 自らのことを。