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【チュートリアル】モンスターに襲われている村を救え! 前編・2

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【チュートリアル】モンスターに襲われている村を救え! 前編・2

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第二章

 ホタル・アートレイデ(ほたる・あーとれいで)リオート・ラグナイト(りおーと・らぐないと)と共に村を駆け回っていた。
 一件、一件、家の中を確認し、逃げ遅れた村人が居ないかを確認していく。
 ダンッと強く開け放ち、問いかける。
「誰か! 残っている人は!? 助けに来たわよ!」
 ホタルの声に呼応して、家の奥から焦燥した様子の初老の夫婦が姿を表した。
「外はモンスターが……私たちは、助かるのかい……?」
「大丈夫」
 リオートが言う。
「……僕たちが、守るから」
 その声には少しだけ暗い色が滲んでいるようだった。
(リオート……)
 彼はその力で誰かを守りたいと願い、だが、怯えている。
 自身の力を奮うことで、その誰かに怯えられ、避けられることに。
(でも、今は――)
 彼の心配よりも、この夫婦を無事に逃がすことを優先しなければならない。
 リリィは短く息を吸って、「さあ」とわずかに強めた声を上げた。
 夫婦と、そして、リオートへ。
「急ぐわよ」

 一方、ディンス・マーケット(でぃんす・まーけっと)も、一人の“逃げ遅れ”を見つけ出し、抱えていた。
「もー、そんなに泣かないヨ? 私が必ず助けてあげるからネ?」
 彼女が抱えていたのは、4、5歳の小さな女の子だった。
 小さな手を懸命にディンスの首に回して泣きじゃくっている。
 ディンスはそんな少女を抱えながら、スパイクバイクを駆っていた。
 後方から聞こえていたのは、銃を持った数匹のホブゴブリンたちが撃ち鳴らす銃声。
 先ほどロレンツォから受けた連絡で、大方は村の入り口で抑えられてはいるものの、何匹かのモンスターが村に入り込んでしまっているかもしれないと聞いていた。
 運悪く、その内の数匹に見つかってしまったのだ。
 耳元を弾丸が掠めていく。
「未来の大事な大事な『お客サマ』ネ。私が必ず守るヨ」
 グッと少女を抱く手を強めながら、ディンスはスピードを上げ、ホブゴブリンたちを引き離し、角を曲がった。
 そして。
 そこで彼女は舌打ちを打った。
 眼の前には一匹のオークが居た。
 次の瞬間、ディンスは振り下ろされてきた斧から少女を庇うように身を屈めながら、バイクを乗り捨て、地面に転がった。

 村の中央近くで響いた衝突音。
 ホタル・アートレイデ(ほたる・あーとれいで)は、その音を背後に光術を撃ち放っていた。
 光が弾け、通りに居たホブゴブリンたちの視界を眩ませる。
 タタタンッ、とリオート・ラグナイト(りおーと・らぐないと)のアサルトカービンが鳴る。
 通りを挟んだ向こう側の物陰から銃撃を行うリオートの援護を受けながら、まずは同行していた夫婦を安全な方へと逃がし――
 ホタルはリオートの方へと声を飛ばした。
「リオート! あなたも」
「うん……!」
 まだ照準の定まらないらしいホブゴブリンたちのデタラメな銃撃の間を抜けて、リオートがこちらへと駆けてくる。
 伸ばした彼の手を取って、こちらの建物の影へとリーオトを引っ張り込む。
 それから、一息こぼし、二人は、すぐに夫婦を連れて村の南側へ向かって足を早めた。
 その道すがら、ホタルはリオートの様子をチラリと見やった。
 彼は、夫婦の方を一切見ないようにしているようだった。
 ホタルや助けなければならない人たちが居るから、極力、表には見せないようにしているものの……
 やはり、彼は自身を拒絶される可能性に怯えているようだった。

 ライル・エリシュクス(らいる・えりしゅくす)が、家々の向こうに激しい衝突音を聞いたのは、ほんの少し前の事だった。
 そちらへ向かって、村の家々の合間に茂る木々の影の下を駆けている。
 ザゥと強い風が村の内外に生える木々を揺らし、鳴らしていた。
 村の北東からは、多くのモンスターを押さえる仲間たちの戦う音が聞こえてきている。
 先ほど響いた衝突音は、それよりも近い。
 おそらく、目の前に見える村の集会所らしき建物の向こう側だ。
 ライルの手には既にライトブレードが抜かれていた。
「リリィ」
 共に音の方へ向かっていたリリィ・フォルネルシア(りりぃ・ふぉるねるしあ)の方へ視線を向けずに言う。
「超えるよ」
「はい」
 返事が返るのとほぼ同時に、ライルは地を蹴り、バーストダッシュで高く跳躍した。
 一気に視界は巡り、集会所の屋根とその向こうの通りが眼下に見えた。
 通りあったのは、建物に突っ込んで横転しているバイクと、オークに襲われかけているディンスの姿。
 一度、屋根に着地し、ライルは、オークの方へ向かって再び飛んだ。
 上空で、白い翼を広げたリリィの手を取る。
 そして、二人、滑空するようにオークへと迫り――
 ライルはオークの額へとライトブレードを振り下ろした。
 オークが呻き声を撒き散らすのを向こうに置いて、ト、と地面を鳴らし、ディンスに言う。
「今の内に」
「助かったヨ」
 泥だらけのディンスが立ち上がり、少女を抱えながらライルの横を駆け抜けていく。
 すれ違う瞬間、何かしらをライルの腰元に差し入れながら。
 そして、彼女はオークの脇をすり抜けるようにして走っていった。
 額の出血で視界の半分を失ったらしいオークが見当違いの方へ斧を振るう。
 その様子を静かな視線で見やりながら、リリィが翼の剣とコンバットシールドを構えた。
「ライル様」
「分かってるよ」
 ライルもまたライトブレードとコンバットシールドを構え、
「最後まで絶対に気を抜かない。
 それがエリシュクス家の剣士だ」
 リリィと二人、オークを討ち倒すために強く踏み込んだ。


 こうして、村の中に取り残されていた村人たちは、
 モンスターの手を逃れ、村の南側へと避難していくことが出来たのだった。


■□■

 村の南側付近に広がる森の中。
「あー、楽になったヨ。ありがとネ」
 ホタル・アートレイデ(ほたる・あーとれいで)のヒールによって傷を癒してもらったディンス・マーケット(でぃんす・まーけっと)は微笑み、ピッと、あるものをホタルに差し出した。
「これは?」
「名刺だヨ。私はディンス・マーケット。何かご入用の時は是非是非お声掛けよろしくネ?
 はい、あなたにも」
 といった調子でディンスはリオート・ラグナイト(りおーと・らぐないと)や、共に居た夫婦。そして、自身が連れてきていた少女にも名刺を配った。
 実を言うとライルにも既に名刺を渡してある。
 すれ違った時に、さくっと腰元に差して来たのだ。
 と――
 傷ついて撤退した生徒たちの手当てを行なっていた泉 美緒(いずみ・みお)が声を上げた。
「佐保様」
 見れば、木々の間から姿を表した真田 佐保(さなだ・さほ)が真剣な表情を浮かべて立っていた。
「鏖殺寺院の黒騎士たちの様子を少し探ってきたで御座る」
「え?」
「彼らは何かを探している様子で御座ったが……それが何だかまでは……
 とにかく、嫌な予感がするで御座るよ。早くここから――」
 と、佐保が言いかけた時だった。
 村からそう離れていない所で、爆発音が鳴り響き、
 同時に、常緑樹の葉々と葉を失った枝木の向こうの空に“黒い光”が噴き上がった。

 それはやがて村上空の空を覆い、森の一部ごと――
 村とそこに居た全ての者を飲み込んだのだった。


■□■

 ヴァイシャリー、イコンドック。

「次はシャンバラ大荒野に?」
 帰還してすぐにイコンを降ろされ、サンドイッチとドリンクを押し付けられた大島 彬(おおしま・あきら)は、パイロットスーツのままサンドイッチを一齧りしながら問いかけた。
「黒い光に呑み込まれて消失した村は、シャンバラ大荒野に“転移”したんだってよ」
 桂輔アルマの操るモニターを覗き込み、エイヴと武装の損傷具合をチェックしながら言う。
「転移?」
「ええ、そこに居た人々も含め、全て、だそうです」
「良く分からないが、彼らを迎えに行けば良いのか?」
「いや、ちょっと違うみたいだぜ?」
 桂輔が軽く視線を上げて彬の方を見やり、言った。
「次の任務は――怪物の相手だ」


担当マスターより

▼担当マスター

蒼フロ運営チーム

▼マスターコメント

シナリオへのご参加ありがとうございました!

皆様が置かれた詳しい状況については、
後編のシナリオガイドにてお報せさせていただきます。

後編のシナリオは、本日1月11日に公開されます。
後編は前編1と前編2のシナリオが合流したものになります。
今回、前編2では明かされなかった情報が前編1の方にて少し出ています。
興味のある方は探してみると良いかもしれません。
とはいえ、前編1のリアクションを読まなくても、後編を楽しむことに影響は全く御座いません。

また、後編も「無料で遊んでプレゼント!」で付与されるポイントで遊ぶことが出来ます!
プレゼント対象など詳しい条件はコチラをご覧ください。


なお、今回、皆様の置かれた状況は、この前後編シナリオ内のみでの扱いとなります。
他のマスターシナリオへのご参加に、制限などは一切御座いませんのでご安心ください。