リアクション
「お魚さん、泳ぐの」
全員が揃ったことを確認した翠が動き始めた。
園庭のあちことに放置されているバケツで眠っている雪魚に『空飛ぶ魔法↑↑』を使っていく。
魚が次々、バケツから飛び出してゆっくりと空を泳ぎ始める。
ただ、今回は高度はそれほど高くはない。地面より少し高いぐらいで空を飛ぶほどではないが。
「うわぁ、すごーい」
子供達は皆嬉しそうに泳ぐ魚を眺める。
「ほら、忘れ物ですわ」
「魚釣りには竿が必要じゃ」
釣り竿を持ってルファンと紫蘭がやって来た。子供達は自分の名前が書いてある釣り竿を手に取って早速魚釣りを始めた。
子供達は遊具や汽車や動物に乗って魚釣りを始める。お兄ちゃんやお姉ちゃんは子供達の補助をしながら楽しんでいる。
「よーし、いいぞ。次はあの魚だ」
昶は釣り糸に餌の雪を付けながら、泳ぐ魚を指さしながら言った。
「うん、取ったらお兄ちゃんにあげるね」
側にいるのは仲良くなった獣人の男の子。
「おう、頑張れよ」
昶は応援し、魚を追う釣り糸を眺めていた。
シュウヤは自分を励ましてくれたルファンと一緒に魚釣りを楽しんでいた。
「なかなかうまいのう」
次々と釣っては中のお菓子を食べていくシュウヤを褒めるルファン。
「……約束、守ってくれた」
言葉通り友達達が戻って来たことに彼なりに嬉しくて感謝している様子。
「じゃから、言うたじゃろ」
ルファンは優しく言い、泳ぐ魚を眺めていた。
「良かった。本当に」
ナコは遊ぶ子供達の様子をほっとしたように眺めた後、ポケットに戻したブローチを取り出し、自分の手の中にあることを確認していた。
「良かったな、ブローチ戻って来て」
依子はおばあちゃん子のナコと話してみたいと思い、声をかけた。
「あ、はい。本当にありがとうございます」
ブローチから顔上げ、ナコは礼を言った。
「とても大切な物だったんだろう。確か、おばあちゃんに貰ったとか」
子供達を探しに行く時に子供とブローチの特徴などを聞いた時に手に入れた情報を思い出していた。
「はい。私、両親がいつも働いていて面倒を見てくれたのがおばあちゃんだったんです。熱を出した時も幼稚園の送り迎えも。家族で一番おばあちゃんが好きだったんです」
頷き、遠い目をして話し始めた。彼女も両親が共働きだったからシュウヤが気になって仕方が無かったのだ。
「いいばあちゃんだな。俺様もばあちゃん子だから分かるぜ。そのブローチがどれだけ大切なのか。思い出があるんだろう?」
依子は同じおばあちゃん子として彼女の気持ちがとても分かる。
「はい。これは私が家を出て蒼空学園に入学する時に贈ってくれたんです。入学のことも両親は反対していたんです。でも、おばあちゃんが応援してくれて。これは大変なことがあったら見ておばあちゃんを思い出しなさいって。いつも側にいるからって。……これを貰った一週間後におばあちゃんが亡くなってしまって」
ナコはブローチについて話し始めるも少し表情が悲しくなった。今でも思い出すことができる。思い出す度に悲しくなってしまう。
「そりゃ、大切にしないといけないな。そんなに悲しい顔をするなって、ばあちゃんも安心してるさ。立派に先生してるって」
依子はぽんと彼女の背中を叩きながら明るく励まし、子供達の面倒を見るため園庭へ行った。
「はい、ありがとうございます」
励ましてくれた依子に礼を言ってからブローチをポケットに入れて保育士の仕事に戻った。
魚釣りが終わったら教室で暖かな昼食タイム。
ネージュの特製カレーにルイの熊鍋がテーブルに用意されていた。
「おかわりちょうだい!」
ルーを口いっぱいに付けた子供達が次々におかわりをねだる。
「たくさん食べてね」
ネージュは嬉しそうにすぐにおかわりを用意していく。
「……おじちゃん、とってもおいしいよ」
「そうですか。そう言ってくれるとおじちゃんも嬉しいですよ」
シュウヤは空っぽになったお椀を笑顔で見せながらルイに言葉をかけた。ルイは嬉しくなって彼の頭を撫で空っぽになったお椀にお肉をたくさん入れた。
シュウヤは隣のお友達とおいしいねと話しながらこの時間を楽しんでいた。このお楽しみ会をきっかけにシュウヤはお友達と仲良くなっていた。ちょっとしたトラブルはあったが、何とかナコの雪だるまと仲良し大作戦はうまくいった。
外を見れば、幼稚園を守るかのように元暴走雪だるまが園庭の真ん中に立っていた。当分の間、元暴走雪だるまこの幼稚園のアイドルになっていた。
シナリオを担当させて頂きました夜月天音です。参加して下さった皆様、本当にありがとうございます。
今回、ゲームマスターになって初めてのシナリオだっため力量不足な部分もあったと思いますが、ほんの少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。
もっと精進して皆様が楽しめるシナリオ書いていきたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。