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突撃! パラミタの晩ごはん

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突撃! パラミタの晩ごはん

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8:30am 蒼空学園「ぱら☆みた」部室

「あーけーてー」
 エーリヒドアを開けると、春日美夜がもこもこ着膨れした姿で立っていた。
 ひどい寒がりなのである。
 だから朝はいつもエーリヒが先に登校し、カーテンを開け、暖房を入れ、コンロに湯をかけて美夜の登校を待つのだ。
 もちろん、湯を電気ポットで湧かすなど言語道断らしい。
「おはようございます、美夜様」
「うー、さむさむ」
 返事もせずに、部室に入るなりコートのポケットに手を突っ込んだままで器用に席に着く。
 それから目の前にあるノートPCをしばらく恨めし気に見つめて、やっと諦めたように右手をポケットから出した。
 PCを開くと、起動音とともにモニターが明るくなる。
「さーて、反響はどうかなー」
 背中を丸めてモニターを覗き込み、まだ左手をポケットに突っ込んだまま、右手だけで操作している。
 エーリヒ・ヘッツェルはその後ろ姿にちらりと目をやり、嘆かわしいといった表情で軽くため息をついたが、何も言わずにティーポットに湯を注いた。
 美夜は身じろぎもせずにPCのモニターを見つめていたが、PCが起動して画面に掲示板が表示されると、怪訝な顔で首をひねった。
「んー……なんだろ、これ」
 メーラーにメールが2件。
 掲示板のコメントは、今朝の書き込みが2件。うち1件は……
「……山葉、涼司?」

<面白そうな企画ですね。特に「伝説のメニュー」には私もたいへん興味があります。ぜひ詳しいことを教えてください>

 肩書きはない。一個人としての書き込みという体裁だが、どう考えても不自然な文面だ。
 不自然というか、露骨に胡散臭い。
「……その件でしたら」
「わっ」
 いきなり耳元で声がして、美夜が飛び上がる。
「要約すると『すぐ連絡をよこせ』ということではないかと」
「は?……あ、ああ、なるほど」
 言われてみれば、ありそうなことだ。しかしそれなら別にこんな妙なメッセージを送らなくても……。
「ときに美夜様、携帯電話は充電されていますか?」
 その問いに、美夜の思考が停止した。ひきつった笑顔を浮かべて固まっている美夜を見て、エーリヒは大袈裟にため息をついた。
「……ごめんなさい反省してますもうしません」
 美夜は虚ろな棒読みで一気に言って、エーリヒの冷たい視線から逃げるようにメーラーのメールを開いた。
 2件のメールは、シャンバラ教導団と空京大学からの協力の申し出のメールだった。
「うーん、2件かぁ……前途多難ぽいなぁ」
 それぞれに目を通してつぶやくと、ちらっとエーリヒを見る。
「で、もう校長には連絡は取ってあるのよね」
「はい」
 ……あー、やっぱり。
「それで何だって?」
 エーリヒは黙って身を起こすと、ポットを取ってティーカップに紅茶を注ぐ。
 湯気とともに仄かにニルギリが香り、カップには鮮やかな紅が音もなく満たされる。
 それを美夜に差し出して、エーリヒはようやく口を開いた。
「すぐに部長に出頭するよう求められました」
「え、それじゃ……」
 腰を浮かしかける美夜に、さらりと続ける。
「お断りしておきました」
「……なんですって?」
「何やら「伝説のメニュー」に関してトラブルが起こっている様子です。協力の要請でしたら、あちらから出向かれるのが筋と存じまして」

「くぉら、美夜ぁーっ!」

 派手な声と派手な音を立てて扉が開いた。
「ああ、いらしたようですよ、メッセンジャーが」
 頭から湯気を上げんばかりの表情で仁王立ちする雅羅を振り返り、エーリヒは満足げに微笑んで囁いた。
「美夜、あんたねー……あたしに泣きついてネタ持って行ったくせに、どんだけ態度でかいのよ!」
 自分を睨みつける雅羅にうんざりした顔で肩をすくめて、美夜はつぶやいた。
「……同感だわ」