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恋なんて知らない!

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恋なんて知らない!

リアクション

「ちぃーす、こんちは。今アンケートを取ってるんですけど、協力してもらっていいっすか?」

「え?は、はい」

 街で幸せそうにプレゼントを渡すカップルに話かけたのは、グロイツ・オーギュスト(ぐろいど・おーぎゅすと)だ。
 アーティフィサーなのだが、その姿は桃色の肩までかかる長髪に来崩した執事服と、一風変わったものだった。


「今、渡してたプレゼント、どんな感じのやつなんだ?」

「ふ、普通のアクセサリーですけど……」

「ふーん……。アクセサリー、ねぇ……。それじゃあ、少しそれ見せてもらってもいいか?」

「え……?」

「あ、大丈夫大丈夫。俺は触んねえから。盗ったりもしねえよ」

「は、はぁ……」
 

 おずおずと女性が懐から取り出したのは、本当にシンプルなシルバーリングだったが、造りはしっかりしていて値段も相応にしそうな物だった。


「へぇ、本当にアクセサリーなんだね……んじゃ、悪いね」

「!?」

 そのシルバーリングは、空気を裂く甲高い音と共に、弾け飛ぶ。

「あ、あ、あぁ……」

 一瞬の出来事だった。
 そして、カップルが振り返った時、既にグロイツの姿はそこに無かった。


「グロイツ、ナイスアシストだねぇ!」

 グロイツを召喚して自身の元へと呼び出したのは、ヘクスリンガーのキルラス・ケイ(きるらす・けい)だった。
 物陰から構えていたライフルで、見事カップルのプレゼントを狙撃することに成功した彼は機嫌良くグロイツとハイタッチをした。
 グロイツがカップルに話しかけ、巧みに足止めをしたところをキルラスが狙撃する。
 それが、キルラスの考えた“名案”だった。

「相変わらず良い腕だな、キルラス」

 グロイツが、にんまりとキルラスを見やる。
 キルラスは人自体には被害が出ないように訓練用の弾が込められたライフルの銃身を肩にかけ。

「はっはっは。カップルは家で細々と暮らしていればいいさぁ。俺の目の前に現れたのが運の尽きってやつよぉ」

 リア充なんて弾け飛んじゃえばいいんさぁ、とキルラスの目が語る。

「しっかし、もう何組目だ?幾らいんだよカップルってやつらは……」

「何組居ても、アイツらが暴れてる間に俺達もやっちゃえばいいのさぁ」

「それもそうだな!」

「その通り!それじゃあ、どんどん獲物を狩って行くさぁ!」

「あぁ、そ――」


 笑顔で踵を返した瞬間の出来事。
 三つの、黒い陰が、二人の目の前を横切った。


「……なんだ、あれ?」


 靡く前髪を抑えながら、グロイツはそう問う。


「……俺にも、わからんさぁ」


 生物的な様にも、機械的な様にも見えたそれは、既に姿が見えなくなっていた。