リアクション
◇ ◇ ◇ 夜勤明けで帰宅したレオン・ラーセレナ(れおん・らーせれな)は、パートナーの城 紅月(じょう・こうげつ)がソファで転寝をしているのを見つけた。 自分を待っている内に、居眠りをしてしまったのだろう。 「こんなところで寝ていたら風邪を引きますよ」 起こすと、目覚めた紅月の目から涙が零れて驚いた。 「どうしたんです?」 紅月は黙って首を横に振り、レオンに抱きつく。 「……ねえ、クリスマスは忙しくて、レオンの誕生日やってなかったよね。やろうよ」 「そうですね。二人だけでパーティをしましょうか」 甘える紅月に、レオンも同意して抱きしめた。 夢を見た。前世の夢だった。 自分は誰かの小姓で、身分違いの報われない想いを抱いていて、ただ主がサロンで転寝をしているのを見かけてそっと、想いを込めた子守唄を歌うくらいしかできなかった。 目が覚めて、切ない思いだけが残っていて、けれど、今の自分の側には、レオンがいる。 二人でパーティーの準備をしながら、紅月が歌う歌に、レオンは首を傾げた。 「初めて聴く歌ですね」 紅月は小さく笑う。 先刻見た夢で、ユエヨウが歌っていた子守唄だ。 そんな紅月の表情を見て、レオンはにこりと笑ってみせる。 「紅月の歌が好きですよ。きっと、ずっと、変わらないでしょうね」 「嬉しいよ」 微笑む紅月の肩を抱き寄せてキスしようとすると、今は駄目、と軽く叩かれ、がっかりするレオンの顔を見て、紅月はまた笑った。 前世で、ユエヨウは想いを伝えることはできなかった。 けれど自分は、伝えることができる。 自分の剣となってくれたレオンに永遠を誓い、命も歌も愛も涙も、全て何度でも伝えよう。 何度でも呼ぼう。彼の名前を。 ユエヨウの分まで。 ◇ ◇ ◇ お正月なら、やはり和の雰囲気で。 テラー・ダイノサウラス(てらー・だいのさうらす)とパートナーのグラナダ・デル・コンキスタ(ぐらなだ・でるこんきすた)は、葦原のお気に入りの和食店で、お気に入りメニューの制覇中。 「がるるぅ、がるるぅ、がるるぅ!」 テラーはとにかく沢山食べる。 「はぁ、相変わらず、大食いだねえ、あんたは」 それを見ているグラナダは、若干胃もたれ気味で控えめだ。 「ぐるるぉりぅげれぉぅ!」 「ワリ、何言ってんのかわかんないわ」 解らないわけでもないのだが、グラナダは、何かを訴えているテラーの言葉を適当に聞き流す。 親友と共に、狩りに出かけた時のことを、テラーは語ろうとしたのだった。 何処かの荒野で、野生の獣を狩って、男の料理とばかりに、塩を振っただけの丸焼きを、大胆に食べた。 そんな平和な日常を送っていた頃が、ガエル達にもあった。 「がぇるごぅぅぅげぁう!」 「はいはい、あたいの分も食べる?」 もうご馳走さん、と、グラナダは、ガエルの分まで食べる! と言うテラーに自分のデザートを渡した。 ◇ ◇ ◇ 「静かだねえ、でもこういう初詣もいいね」 辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)は、今回の件では、色々と心配させてしまったパートナーのアルミナ・シンフォーニル(あるみな・しんふぉーにる)を誘って、初詣シーズンの終わった神社を訪れた。 誘われたアルミナは喜んで、着物を着て出かけた。 ▽ ▽ 「うん、似合うね」 メデューが、何故彼女の命をとらなかったのか、自分にもよく解らなかった。 ヴィシニアは、ボロボロのフードを深く被ったメデューを引っ張り込んで、自分の子供の頃の服を着せ、こっちの方が可愛いよ、と笑った。 メデューは礼も言わなかったが、ヴィシニアは気にしなかった。 そしてヴィシニアと別れ、そのすぐ後に、メデューはミフォリーザの復讐を受けたのだった。 △ △ 「何を願ったのじゃ?」 お参りを済ませて、刹那に訊ねられたアルミナは、 「せっちゃんとずっと一緒にいられますように、って!」 と答えた。 「せっちゃんは?」 「秘密じゃ」 「えー、ずるい」 「願ったことは口にしたら叶わないと言うからの」 「えーっ、そうなのっ? せっちゃん、ひどいー」 ボク、しゃべっちゃったよー、と嘆くアルミナに、刹那は意地悪く笑う。 内緒だけれど。 刹那が願ったのは、アルミナの幸せ。 |
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